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高校生の時に華々しく作家デビューした榛名忍。だが、その後、大学生となった彼は結果が残せず燻り気味。そんな折、学内のテレビでリオ五輪の競歩を見ていると、背後で男子学生が号泣していた。こいつは何者⁉ その夜、忍は担当編集者から、次作は東京オリンピックに向けてスポーツ小説を勧められ、つい「競歩」と口にするーー。
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小説の内容と、小説内の小説の内容がリンクしていて、途中何度も涙を滲ませながら一気読み。歩くという当たり前の行為を、ルールの中で最速で行う。不自由に自由。どこか息苦しい。それがずっと付きまとって爽やかとは言い難いのに、読後は気持ちが晴れ晴れしていた。競歩も小説家も、誰でも、生きるというのはこういう事なのかもしれない。小説内では勝てなかったけれど、八千代は勝ってドーハへ行った。登場人物がみなとても気持ち良かった。競技者と小説家、二つの職業の苦しみがぎゅっと詰まっていた。ただただ面白かった。百地さんが素敵だった
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世の中にスポーツ小説は数多くあれど、競歩を題材にし作品は聞いたことがない。しかも本作はそれを題材に小説をかこうとする作家の物語でもある「額賀スポーツもの+拝啓、本が売れません」のような合わせ技作品だ。
来年が東京オリンピックで、意外と競歩は日本が強いということもあり、ここで競技と額賀澪の認知度を高めていくというのはいいタイミングじゃないでしょうか(大変失礼)。
内容も若者の苦しみや葛藤がよく書かれておりますが、男女の絡みが全然ないといういつもの額賀調でありそれは残念。
そして残念ついでに書かなければならないのが、発刊されてから、東京オリンピックでは、マラソンと競歩が東京では開催されないという事実。
札幌で開催されることがIOCによって無理やり決められてしまいました。このまま札幌開催ならそれに合わせて修正すればよいが、もうひと波乱あって、万が一マラソン・競歩は「取りやめる」などとなってしまったら、本作はどうなってしまうのか!?「拝啓、本が直せません」が作れそうな事態に陥らないよう祈ってあげたいと思います。
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競歩とはまた地味な題材をと心配になりました。既に駅伝の名作タスキメシを書いているのにと。喜ばしい事に心配は完全に杞憂になりました。
主人公は、デビュー作でヒットを飛ばして、その後緩やかに下降線を辿っている大学生作家の忍。そしてアスリートは箱根駅伝を目指すも挫折し競歩に転向した八千代。
額賀さんの本を何冊か読んでいる人なら分かってくれると思うのですが、爽やかな中に痛みや苦みが相当ブレンドされているのが彼女の作品の特徴です。いわゆる色々上手く行って万々歳スッキリという本を書く人ではないです。
本書も苦いし苦しい。なかなか上手くいかないし、一足飛びにびゅんと何か覚醒する事もないです。薄皮を剥がすように成長していく姿をひたすら読む本であります。それがとても胸に来ます。
特に忍が小説を読むのが好きだったのに、人の書いた小説が怖くて読めなくなる恐怖。自分は全然小説家になりたいとは思わないのですが、ひしひしと伝わってくるものが有りました。ここは額賀さん自身が感じた事なんでしょう。とてもリアリティのある感情です。
後半に行くに従い物語の力に心が引っ張られる感覚がありました。いわゆる手が止まらなくなるという感覚でしょうか。陳腐な表現なので使いたくないのですが、通勤時間に読んでいたので途中で立ち止まって結末まで一気読みしました。こういう感じは久々です。
額賀さんの美点と思っているのは、取材した事を消化するのがとても上手です。取材した成果をドカンと出そうとして説明が多くなる人がいますが、彼女はちょっとづつ話に混ぜ込んでくれるので、知らず知らず分かっているような気になれます。
これ相当よかったんですが、タスキメシの続編も出ているのでこれを超えてくるのかとても楽しみです。
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タイトル見たら あの「陸王」を想起したけど、中身はかなり違っていて これも面白く読めた。メジャースポーツではない競歩に的を当てて、しかも箱根駅伝志望から転向を余儀なくされて競歩でもなかなか芽が出ない後輩の八千代と華々しく高校生作家デビューしたけどその後なかなか著作に苦労続きの先輩 榛名の大学生2人を主役に据えた物語。よくある青春スポーツ小説にならないように配慮して書かれていますね。それでも一味違う 痛いけど爽やかな物語になっていました♪ 面白くて一気に読みました。ちなみにドーハ世界陸上では まるでこの本に触発されたかのように、20㎞競歩も50㎞競歩も日本選手が金メダルでしたね!
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読みやすく興味はあるけど、小説はどうもしっくりこない
ってか、最後はいい方向に落ち着くからかワクワクしない
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競歩という競技がある。
陸上の花形とされる100mやマラソンに比べるとマイナー競技である。
身をくねらせる一種独特な姿勢で彼らは歩く。
少しでも速く先へ進まなければならない。けれど走ってはならない。
フォームには厳しい制約がある。反則は大きく2つで、「ロス・オブ・コンタクト」(両方の足が地面から離れる)と「ベント・ニー」(接地の瞬間から地面と垂直になるまでの間に前足の膝が曲がる)である。複数の審判がチェックし、違反の疑いがあればイエローの「注意」、明らかに違反している場合はレッドの「警告」を出す。3回「警告」が出ると失格である。
審判の判定が選手に告げられるまでには、時に時間差があるから、場合によっては1位でゴールしたのに、レッド3枚で実は失格だったということもある。
種目は20kmと50km。同じコースを折り返し何度も歩く。
失格者が出るのは珍しいことではないし、気候条件によっては棄権も多く出る。
世界一過酷な競技とも言われる。
本書はこの「競歩」をテーマにしたフィクションである。
スポ根か、というと単純にそうではない。
競歩選手も主要登場人物ではあるのだが、主人公は、むしろ、競歩がテーマの小説を書こうとしている小説家の方である。彼、榛名忍は、高校生の時に鮮烈なデビューをし、天才高校生作家と呼ばれた。数作品はそこそこ売れたが、大学生になった今はある種、スランプである。書きたいもの、売れるもの、進みたい道、進める道、いろいろ考えて手詰まり気味。編集者に薦められてスポーツ小説を書くことになり、何となく競歩をテーマに据える。
同じ大学に1人で競歩に取り組んでいる八千代篤彦がいた。榛名は彼を取材してみることにした。何となく取っつきにくい八千代に及び腰の榛名。しかし何度もグラウンドに通ううち、競歩という競技のおもしろさ・厳しさ、そして八千代がなぜ1人きりで取り組んでいるのか、事情も徐々にわかってくる。
八千代は大学に入ってから競歩を始めたという。元々は長距離走選手で、箱根駅伝を目指していたのだ。だがその夢が潰えた。その代わりのように選んだのが競歩だったというわけだ。
練習相手もいない。マネージャーもつかない。
八千代は歩く。たった1人で歩く。
成績もさほどいいわけではない。けれども彼には東京オリンピックに出るという目標がある。
榛名はいつしか陸上部の選手たちよりも八千代に近しい存在になり、フォームの違いもわかるようになっていく。
これはスーパースターが夢をかなえる物語ではない。
榛名も八千代も才能はないわけではないが、ずば抜けた・飛び抜けたものではない。
何を、どこを目指したらよいのか、悩みも多い。
地を這うように、血を吐くように、彼らは苦闘する。
そう、制約にがんじがらめになりながらも、それでも前に進む、競歩という競技自体のように。
著者が用意した最後の舞台は、来年行われるはずの東京オリンピックの本番、東京の地である。
執筆時には、まさかマラソンと競歩が札幌で開催されるなどというイレギュラーな事態は予想できなかったのだろう。
それまで���内の大会や世界陸上、アジア大会など、実在の大会を舞台にして描いてきた物語のクライマックスがまったくの虚構のものとなってしまうのは若干残念ではあるが、もとより著者の落ち度ではない。
虚構は虚構として、それぞれの答えを見つけた彼らの道はまぶしく光る。
著者はおそらくかなり丹念にこの競技の取材を重ねたのだろう。
ストーリーにはややもたつきを感じる部分もあるが、全般に、八千代を見つめる榛名、その榛名を見つめる著者の「誠実さ」が感じられる。
読んだ印象でしかないのだが、著者は小説の中の一節に救われた・励まされたことがあり、自らも誰かのためのそんな一節を書くことを目指しているのではないか。
生きづらさを抱える人の灯のような。
そんなことを感じさせる作品である。
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面白かった!
若き悩める作家忍と若き悩めるアスリート八千代。
2人の成長は眩しく、そして不器用なところがとてもリアリティがある。
作家もアスリートも
輝かしいように見える一瞬の姿も
実際には不細工で這いつくばってボロボロになりながら
進む道を決めていくのだなぁ。
2020年オリンピック、なんだかんだ言いながら(何も言ってないけど)
だいぶ楽しみかも。
今作もキラキラの恋愛がなくてホント良かった!
額賀さんはこの感じが好き。
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酷く矛盾した競技だった。
誰よりも速く、速く前へ進みたい。一番にゴールテープを切りたい。でも、走ってはいけない――
競歩。オリンピックで微かに見た記憶がある。トイレに駆け込みたいのを我慢しながら早歩きしているような、どこか不自然なフォームの印象が強い。マラソンや駅伝のように華々しく取り上げられることもなく、どちらかというと地味で、その歩形からどこか滑稽にも見える競技。何故、彼らは「歩く」のだろう。何故、競歩という種目を選んだのだろう・・・。
「走り」を題材にした小説は数多いけれど、珍しく競歩を描いたこの作品がその答えをくれるかなと読んでみた。
箱根駅伝を目指し入学した大学の陸上部で自分の限界を知り、競歩に転向することを余儀なくされた八千代篤彦。天才高校生作家として華々しくデビューするも、その後の創作活動に行き詰まり、大学生活の多忙を言い訳にして燻っていた榛名忍。
ひょんなことから競歩を次作のテーマにすると言ってしまった榛名が、同じ大学の八千代を取材対象にしたことから始まる二人のその後の4年間の物語。
競技者として、作家として、それぞれの挫折と鬱屈を抱えながら歩む日々。
箱根駅伝への夢に破れた八千代は、次に進むための新たな目標を胸に、結果が全ての厳しい世界で折れそうになりながらも一人黙々と歩き続ける。
ライバル作家への嫉妬に駆られ、その作品が書店で平積みされているのを見ることにも苦痛を覚える榛名は、作家としての先が見えないなか、八千代を取材対象として支えながらいつしかその存在に自らが励まされている。
2人が迷いながら、悩みながら、互いを拠り所としながら、だけど決して寄りかかることなく自らの道を求めていく姿が爽やかでいい。涙あり、笑いありの爽やか青春競歩小説でした。面白かった~。
次のオリンピックでは絶対に競歩を見ようっと!
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競歩がテーマということで、気になって予約しました。
でも「スポーツ小説」ではなく、陸上競技と小説それぞれの道で悩み苦しみもがく二人の若者の話でした。
その苦しみもなぜか爽やかに感じるのは、自分が登場人物たちの親目線で読んでいるからだろうか。
こんな風に何かに全力で頑張る若者が、これからも自分の道を走り続けられるといいなと思った。
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タイトルを見て、世界陸上で競歩の映像を見て少し気になっていたし、マイナーなスポーツ取り上げたな、と不思議に思いながら手に取った。
読んだ直後の感想としては、この本読んでよかった!だった。
売れない作家と箱根駅伝の夢がつぶれて競歩に転向した大学生の話。挫折の中でもがきながら、少しずつ変わっていく様子が読んでいて、感情移入しやすかった。
サクセスストーリーだけど、主人公2人の挫折感というかネガティブ感で、バッドエンディングも想像してしまうほどだったので、読んでいて力が入った。面白かった。
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「タスキメシ」は2冊とも積んだまま、ですが。
「箱根」とほぼ同時にこれを出してきたのは、ある種の決意表明、なんですかね?
で、ラストが武田綾乃と被るのは、ご当人も意識してるってことなのかな?
さて、nexの3巻目は出るのか、それとも、「3巻で打ち切り」は盛った話なのか…
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「風に恋う」や「完パケ」ほど面白くなかったのは、書けなくなった作家の話に新味がなく、実力をあげていく選手がなぜ成績を上げていけたのかということに説得力あるエピソードが用意できなかったからなんだろう。また人間関係がほとんどこの二人で閉じていて、からんでくるはずの女子が少しも魅力的でないというのも物語を単調にしている。
そういう意味で、上の二作品が「優勝」をエンディングに持ってこなくても作品として成立していたのに、この作品がそうでなかったことも、この作品の弱さを示しているのだと思う。
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「慶安大学」で学ぶ主人公・榛名忍はかつて天才高校生作家と呼ばれたが、現在は自身で伸び悩みを感じている中で、競歩をテーマにした小説を書こうと考え始めている。そして、かつては箱根駅伝出走を夢見ていながら競歩に転向せざるを得なかった八千代篤彦。この二人の心の交流を中心に話は展開!単なるスポーツ青春小説ではない、この本の複雑な構造が面白味でもある。ここに大学新聞部の女性記者・福本愛理、主人公の高校時代からの女友達・亜希子、競歩の第一人者・蔵前などが絡み、競歩というスポーツの面白さと、このスポーツをすることになった競技人たちの複雑な心境が描かれる。確かに「走」に比べ「歩」ことの地味さ、不自由さ、孤独さを感じさせられる。八千代が東京五輪への出場を夢見て…最後は東京五輪のスタート直前の場面まで。競歩が今や日本の得意種目であり、この競技の詳細を知る上でも貴重な本。
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昨年の世界陸上で注目された競歩。それまでは、あまり関心がなく、ルールもやり方もわからなかったのですが、この本を通して、意外に白熱することに驚きました。
主人公は、高校生で小説デビューしたが、大学生になって執
筆活動しているが、スランプ気味の榛名忍。
ひょんなことから、競歩を題材にした小説を書くことに。選手を取材しているうちに自分とリンクし、お互いに励まし合いながら、上を目指そうともがいています。
額賀さんの作品は、「タスキメシ」で読んだことがありますが、爽やかにかつ熱心に描かれていて、青春って良いなあと思わせてくれます。本作品では、個人競技なので、より一人ならではの苦しみやもがきなどが描かれています。選手だけでなく、小説家ならではの苦労もリンクしながら、切磋琢磨していて、グイグイとひきこまれ、めくるページが止まりませんでした。
青春といっても恋愛は程々に、競歩を中心としていて、シンプルに応援したい気持ちになれたので、よかったです。
純粋に良い作品で、熱いけれども爽快な気持ちになったと思える作品でした。