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ナノテクノロジー 極微科学とは何か
著者 川合知二
10億分の1メートルの世界で原子・分子を操作する技術。そこから物質の新たな性質が生み出され、「ものづくり」は大きく変革される。さらに、医療や環境、コミュニケーションなど、...
ナノテクノロジー 極微科学とは何か
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ナノテクノロジー 極微科学とは何か (PHP新書)
商品説明
10億分の1メートルの世界で原子・分子を操作する技術。そこから物質の新たな性質が生み出され、「ものづくり」は大きく変革される。さらに、医療や環境、コミュニケーションなど、人々の暮らしの可能性は劇的に広がる。「寿命がきたら自分でリサイクル可能な状態に“壊れる”パソコン」「人間より早く正確に危険を察知する車」「がん細胞ができるとすぐに医師に知らせるバイオチップ」「患部だけに効果を発揮する副作用のない薬」「カニやセミの抜け殻のように人間の形状にあわせて原子・分子のレベルからデザインされる衣服」「鋼鉄よりも10倍固く10分の1の軽さの新素材」「静電気で動くモーター」「国会図書館もの情報量が収められる角砂糖のサイズの原子メモリ」……。「ものづくり」に活かし、さらに、便利でかつ無害な社会を創るために、ナノテクノロジーにいかに取り組むべきか。その第一人者が極微科学の本質と新時代のパラダイムを説き明かす。
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すぐそこにある未来
2004/03/30 23:24
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投稿者:無風 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ナノテクノロジーは、私たちが知っているような科学技術の発展とは、少し様相が違うように思う。私はこれまで、ナノテクノロジーを単なる「小型化」の技術だと考えていたが、この認識は間違っているかもしれないと考えるに至った。
小型化は、ここ数十年の、科学技術のテーマの一つである。けれど、トランジスタに例をとると、現在の微細加工では、数十ナノメートルの大きさで「限界」が訪れるという(百二十五頁)。そこでナノテクノロジーは、DNAを登場させる。生物の体は原子で構成されているが、この構成がプログラムされているのがDNAである。DNAに、トランジスタの回路をプログラムしておけば、恰も生物の成長するが如く、「自分で」回路を形成するというのだ(百二十六頁)。DNAは二ナノメートルの大きさしかない。故に、この技術で形成されるトランジスタは、数ナノメートル程の大きさということになる。
ナノテクノロジーは、医学の分野でも活躍が期待される。「ナノメートルサイズの分子機械」を、人間の体内に入れる。そうすれば、初期の病気でも早期に発見でき(百四十四頁)、ピンポイントに患部を治療できる(二十六頁)。それだけではない。薬の効き方には個人差がある。だから、こうしたバイオチップを使って、個人の「遺伝子情報を詳しく分析」できれば、その体質に合った薬を処方できるのである(百四十五頁)。
ナノテクノロジーは画期的である。けれど、画期的であるが故に、反動も小さくないかもしれない。
『進歩することはもちろん重要だが、どこへ向かって進むのかというビジョンがなければ、ナノテクノロジーの取り組む意味を明確につかむことはできないであろう。ましてや、やみくもな進歩は危険ですらある。』(百六十二頁)
ナノテクノロジーに限ったことではないが、技術によって造りだされるものは、あくまで「人工物」である。DNAを応用して、生物のように振舞わせても、人工物に変わりはない。人工物には「感情がない」。造った通りに動く。だからミスがあっても、そのまま動く。「私たちの意志と無関係」に、である。
ナノテクノロジーは単なる小型化を超えている。実現すれば、私たちの生活を根本から覆すものとなる。革命的ですらある。そして、その革命は既に始まっている。故に、私たちはナノテクノロジーについての更なる理解が必要と思われる。専門家だけが理解していても、豊かな社会は訪れないのだ。