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1840年、江戸後期と180年後の今。小笠原諸島にある無人島(ボニンアイランド)で一つにつながる人と人の血脈。
ムジン(無人)がボジンになりボニンへと変わる。その長い年月とともに、そこへたどり着く様々な国の人。
どこから来た、どんな人でも受け入れるその懐の深さ。「島」のイメージが変わった。小さな島というところは、なんとなく排他的で閉鎖的に土着と外来の線引きがなされているように思っていた。けれど、本州から1000キロ離れたこの南方に近い島は、さまざまな国からやってきた人々をまるっと受け入れ混じり合い、それでいて距離も取り合ってひとつの「国」として成り立ってきたのだろう。その懐の深さは島の豊さゆえか。
船が難破し漂流して流れ着いた日本人とそこに住む人との、きっと幾度となく繰り返されたであろう交流と別れ。そしてそこへつながっていく、二つの物語。
自分のルーツを探してたどり着いた男と、音楽家の子どもとしての「道」から外れてしまいそうな少年と。
交わることのない二つの時間がつながるとき、180年という時間と、ヒトの業の意味を知る。
しかし、まぁ、180年前の話はなくてもよかったんじゃないか、なんて思いながら読んでいた自分が恥ずかしい。そこのつながっていたのか、とぞくぞくしながらの後半戦。
宇佐美さんの描く「土地」と「血」がすみずみにまでしみ込んでいる。まさに土着小説。
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素晴らしい作品。小笠原の歴史と風土を時間軸を使い、しかもミステリーの要素も盛り込み、更に親子・家族の結びつきをも鮮やかに描く。賢人と時ちゃんの会話は涙無しには読めなかった。ひとつだけ残念なのはボニンアイランドに一人だけ残留した吉之助のその後が全く語られていないこと。ただ全体の構成も流麗な文章もほぼ完璧で言うことなし。
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これは面白かったー。
時間の軸が2つに分かれ、江戸時代と現代の小笠原諸島の歴史が語られる。
小笠原諸島が国籍入り混じった島だという事を初めて知る。
知らないことばかりだ。
文字から伝わる島、海の綺麗さ。
海に入るのは苦手だけれど、いつか小笠原へ行ってみたい。
ラストはぐるっと回って過去と現在が全て繋がる。
宇佐美まことは面白いなぁ。
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小笠原諸島(ボニン諸島)を舞台にした宇佐美まことさんによる歴史ミステリー。1840年に気仙沼から出航した五百石船・観音丸が嵐に巻き込まれて小笠原群島に漂流した過去パートと、祖父の大切にしていた置物を手に入れたことで過去の記憶が蘇り小笠原へ向かう中年男性の現代パートが交互に進み、最後は交錯する。現代パートと過去パートの登場人物の繋がり気になってあっというまに読んでしまった。あと、小笠原の壮大な自然描写が良かった(海亀って食べれるんですね)、ぜひとも映像化してほしい作品。
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180年前の海難事故からすべては始まっていた。小笠原諸島に流れ着いた一行がいかに本土に戻るかという、これまでも何冊か読んだ事実を基にした漂流譚かと思いきや、話はいきなり現代に飛ぶ。こちらでは一見なんの関係もなさそうな中年男と、中学生の男の子が主人公だ。やがてすべては繋がり、歴史に埋もれた真実が暴かれる。中学生の男の子が失ったものを取り戻すシーンでは涙で目が曇った。が、すべてを詳らかにする手法にはちょっと疑問も……。エピローグは必要だっただろうか? まあ、好みの問題だとは思うが。多少の減点はあっても、読み応えのある作品だった。
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小笠原諸島を思わずグーグルマップで
探してみたら
想像以上に南西側で遠く
本当にここが日本なのかと驚くとともに
昔、いろんな人種の人たちが
住み着いていたのも頷ける。
時代を超えた血のつながりは
興味深く面白かった。
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1840年に漂流した日本人たちが流れ着いた「ボニン・アイランド」。さまざまな国の人たちが分け隔てなく暮らす楽園のような島に暮らし、またそこを訪れる人たちの、時代を経た壮大な物語。
複雑で苦難に満ちた歴史を持ちながらも、ひたすらに美しい島として描かれている小笠原島。その歴史について知ることはあまり多くなかったため、勉強になりました。ただのリゾート地だなんて思ってはいけません。そしてそこに暮らす人たちの幸福そうに思える生活も、多大な努力の上に成り立ってきたものだと思えば感慨もひとしお。
長い歴史を経て、思いもかけないところで繋がってくる人間ドラマにも驚嘆させられます。そして南洋人の女たちによる恐るべき「呪術」の正体にはミステリ的な部分もあって印象的でした。でも被害者のしたことを思えば、人為的な犯罪というよりは、報いだと思えるような気がします。これはずっと暴かれなくていいのかも。
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小笠原ってところ、沖縄ほど知られてないような気がするが、自然も人も魅力的だ。本作は上手いなあと拍手。
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前々から小笠原諸島には行ってみたいと憧れているが、船が苦手な私には相当ハードルが高い。かつてボニンアイランドと呼ばれた小笠原諸島を舞台にした今と昔の物語。吉之助・恒一郎・賢人の3人のパートで構成されている。むかしむかしの、天保の吉之助のパートが一番面白かった。そして何より美しく、濃厚な自然に溢れる小笠原の描写が素敵。ボニンブルーの海、落ちてくるような星空。島固有の生物。想像力を掻き立てられる。しかし後半に語られる昔と現代との繋がりがちょっとクドイというか、説明過多なのが気になったかな...。
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江戸末期の気仙沼の五百石船の遭難で幕を開け,漂流物かと思えば一転現代へ.離婚した中年男と音楽一家のチェロを弾く少年が登場.そして全ての人も物も小笠原諸島へ導かれていく.純愛あり,友情あり,ルーツ探しと謎解きありそして傷ついた心の癒しと家族の再生ありの壮大な物語だった.
小笠原諸島の歴史がよく分かると共に(戦争の時の混乱期は日本政府の横暴さに翻弄されたわけだが)島の人たちのおおらかで純粋な気風やたぐいまれな能力が(そして名前も)受け継がれているのが嬉しかった.
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9月-26。3.5点。
小笠原諸島。江戸時代に漂着した漁船と漁師たちの場面と、しがないサラリーマンがルーツをたどる場面、チェロを弾く少年の3つの物語が交互に展開。
面白かった。伏線の回収がスムースで漏れがなかった。
行ってみたくなった。
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”骨を弔う”が素晴らしかった作者の最新作。書評に曰く、新境地ってことだったので、どんな飛躍があるんだろうとワクワクしながら読み進めることに。最初のうちは、『ボニンって無人のことなんだ、へ~』みたいな驚きはあるものの、比較的淡々とした展開。だんだんと、まったく別視点から現代の物語が語られるようになり、何らかの関連がありそうだと思いながら、興味深く読み進める。比較的早い段階で、関係性についてはある程度予想もついてしまうんだけど、徐々に探り当てられる過去の事実は、やっぱり実際に分かってみると衝撃的。語られることの少ない、小笠原諸島の戦争にも焦点が当てられていて、歴史の気づきにもなる。過去を探るという点では、件の作品と通底するものもあったけど、本作は本作でやはり味わい深い作品でした。
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小笠原を舞台に3人のドラマ。
1840年、観音丸は嵐に遭い、ボニンアイランドという島にたどり着いた。そこは、日本人だけでなく西洋人も住んでおり、交易の場所でもあった。観音丸の人々は、帰国を諦めず暮らしていたが、一人の男が、イタリア人の女性と恋に落ちた。仲間が帰る中、彼はこの島に残ることを決断した。
現在。男が、祖父が大切にしていた置き物を偶然手に入れる。その置き物は小笠原諸島のみで採れるクワで出来ていた。男は幼い頃母を亡くし、戸籍には父親の名前がなかった。自分のルーツを探りに小笠原へと旅立つ。
そして現代にもう一人。事故を起こしてチェロを引けなくなった少年。フリーカメラマンである父と一緒に小笠原へ撮影旅行へ。少年は無垢な少女と出会う。
現在と過去のつながり、再生、出発の物語。
過去から現在までの流れ、男の先祖の謎、引き込まれたわあ。小笠原に行ったことはない、それがさらに想像を掻き立てたかも。誰が過去の人の子孫でとか想像したり、物語の中の事件を追ったり、濃かったなあ。最後の方のチェロのシーンとか印象に残ってます、最後のおばあさんもね。受け継ぐもの、歴史、そして再生、読んで良かったです。
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思わず素晴らしい作品に出会いました。全てが時を超えて繋がる。著者の作品は初めてでしたが、お気に入りのストーリーテラーが増えました。小笠原を舞台にしたギリシャ悲劇、喪失と再生の物語。小笠原の歴史も感じることができました。ボニンブルー、いつか私も訪れたいです。
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はじめは話が突然江戸から現代に飛んだりしてついて行けなかったが、のちに回収されていく。つながりが分かり、殺人事件の謎が明らかになる。世代が変わっても、血筋がつながっている。
小笠原、国家に翻弄された小笠原。どこの国でもなく、ボニン人。
無人島→ぶじん→ボジン とか。
マリアに子供いたっけ。