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電子書籍
エリザベスの友達(新潮文庫)
著者 村田喜代子
戦後、命からがら娘と日本に引き揚げた初音さんは今年九七歳になる。もう今では長女の顔もわからない。病が魂を次々と剥いでゆくとき、現れたのは天津租界でのまばゆい記憶だ。ドレス...
エリザベスの友達(新潮文庫)
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エリザベスの友達 (新潮文庫)
商品説明
戦後、命からがら娘と日本に引き揚げた初音さんは今年九七歳になる。もう今では長女の顔もわからない。病が魂を次々と剥いでゆくとき、現れたのは天津租界でのまばゆい記憶だ。ドレスに宝石、ミンクを纏い、ある日はイギリス租界の競馬場へ、またある日はフランス租界のパーマネントに出かけ、女性たちは自由だった――時空を行き来しながら人生の終焉を迎える人々を、あたたかく照らす物語。(解説・岸本佐知子)
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紙の本
少し苦いけど、静かでユーモアのある小説
2022/04/24 21:14
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うさぎこぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
老人ホームに入居中の初音さんは認知症が進み、娘たちのこともはっきりわからないし、日常動作も緩慢だ。人の手を借りないと食事もできない。でも初音さんは意識の中で若かった頃に生きている。優雅で楽しかった日々。辛かった思い出もあるはずだけれど、甘く輝く思い出ばかりが現在のことのように目の前に広がる。このことは娘たちもホームのスタッフも知らないこと。
ホームの他の入居者たちも、人知れず現在と過去を境目なく自由に行き来する。
彼ら彼女らは側から見ると理解できない言動も多いし、スムーズに動くこともできない。惚けたようにただそこに座っている。かと思うと時々激しく動く。その様子を常温の感じで写し取っている。
入居者の家族たちはそれぞれ心配したり、現状を受け入れたりしながら彼ら彼女らを見守る。
老人たちを美化せず、でも悲惨に描くこともしない。
あたたかくてユーモアのある作品。
現実の老人たちのホームでの暮らしぶりは飾り気のない描写の一方、主に初美さんの見ている「幻の現実」は霞みがかったような砂糖菓子のような筆致。それが違和感なく混ざり合っている。