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電子書籍
スピノザ 人間の自由の哲学
著者 吉田 量彦
「本当に存在するのは神のみであり、人間を含め、その他のものはすべて神の<様態>に過ぎない」――一見、もっとも「自由」からはほど遠いように見えるスピノザ哲学が、自由こそは人...
スピノザ 人間の自由の哲学
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スピノザ 人間の自由の哲学 (講談社現代新書)
商品説明
「本当に存在するのは神のみであり、人間を含め、その他のものはすべて神の<様態>に過ぎない」――一見、もっとも「自由」からはほど遠いように見えるスピノザ哲学が、自由こそは人間の「本性」と考えるのはなぜなのか? 政治的閉塞に被われた現代社会に風穴を開ける、もっともラディカルな思想の魅力を平易な文体で綴る。まったく新しいスピノザ哲学の入門書。
・「自然の権利や決まりとは、わたしの理解では、個物それぞれに備わった自然の規則に他ならない。あらゆる個物は、こうした規則にしたがって特定の仕方で存在し活動するよう、自然と決められているのである」(スピノザ『神学・政治論』第16章2節)。
・「スピノザが『神学・政治論』後半部で提示した政治哲学は、恐らくそれまでの西洋哲学史上類を見ないほどの徹底性をもって、わたしたち一人一人の「哲学する自由」つまり思想・言論・表現の自由のかけがえのなさを強調しています。しかもただ闇雲に大事だと叫びたてるのではなく、大事なものである理由を人間の自然権という、存在論的な基盤にまでさかのぼって徹底的に根拠づけようとしているのです」(本書第8回 自由は国を滅ぼすか――スピノザの思想<四>より)
目次
- はじめに
- 第1回 なぜオランダで生まれたか――スピノザの生涯(一)
- 第2回 破門にまつわるエトセトラ――スピノザの生涯(二)
- 第3回 町から町へ――スピノザの生涯(三)
- 第4回 どんな著作を遺したか――スピノザの思想(一)
- 第5回 なぜ『神学・政治論』を書いたのか――スピノザの生涯(四)
- 第6回 なぜ「哲学する自由」が大切なのか――スピノザの思想(二)
- 第7回 聖書はどんな本なのか――スピノザの思想(三)
- 第8回 自由は国を滅ぼすか――スピノザの思想(四)
- 第9回 激動のオランダと『エチカ』の行方――スピノザの生涯(五)
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紙の本
「神学・政治論」の邦訳者が書いた伝記兼入門書
2022/02/17 21:14
3人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
光文社古典新訳文庫の「神学・政治論」の邦訳者が書いたスピノザの伝記兼入門書。大日本帝国と第三帝国を当時の世界に即して書いたような喩えはむしろスターリン主義体制の方がピッタリとする(「指導者」を「ほめたたえた」ところで用済みになったり「都合が悪く」なったり諸々の理由で粛清された人について、スターリン主義国家の方がふさわしいだろう?)が、そこを除くとスピノザという17世紀当時の器には収まりきれない人物の伝記並びに彼の著書の紹介を読んでいると面白い。異端審問所の記録で分かった事柄や異端審問絡みで「エチカ」の写本が現存しているというから、これからも意外なところから分かる事柄が見つかるかもしれない。
この本と同じ講談社現代新書で出ている「聖書vs.普遍史」で「神学・政治論」が聖書を「無謬の神の言葉」ではない、と批判する文脈で紹介していたので読んだけれど、スピノザと同時代人のリシャール・シモンがフランスから亡命したオランダから出ているのに、それでも匿名で刊行している。
「エチカ」をドイツ語に訳した人がトーラーを脱宗教化した翻訳をして注釈をつけて刊行した、とあるが、どんなものだろうか?
この本を読んでいて、スピノザとイディッシュ語で回想録を書いたグリュッケル・フォン・ハーメルンは同時代人だな、と思った。グリュッケルは噂話でスピノザの評判くらいは知っているだろうが、その程度の関係だろう。
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バランスとしてどうか
2022/03/10 16:38
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ランスロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
スピノザの入門書、という位置付けで、スピノザ本人の個人史、思想についてバランスよく記述することに努められたようです。
スピノザの思想については、著者自身も認めているように、主著「エチカ」の説明は些か軽め、著者自身が訳書を出されている「神学・政治論」についてはやや多目、という感じでしょうか。全体としてライトな口調で、簡潔で分かりやすい記述になっています。
一方で「自由に考えることの重要性」を「神学・政治論」の重要テーマとして強調するのはいいとして、もう少し思想や哲学として、独自な視点や深さが欲しい、という感じもします。思想というよりも、何か近代国家の基盤や権利論のような議論を改めて強調されてもな、という感じです。折角「神学・政治論」の訳者なのだから、その議論をもっと厚くして、スピノザのより深い視座を示しても良かったのでは(或いは同新書の他の著作との棲み分けを意識されたのかもしれませんが)
一方で、スピノザの個人史の記述は少し多すぎ+冗長に過ぎる気がします。スピノザ本人が余りドラマチックな人生では無かったこともあるかもしれませんが、彼の思想と関連がある内容ならともかく、「スピノザの兄弟のうち、スピノザは何番目か、誰が姉で誰が弟か、嫁に行った時系列は」みたいな議論が半分位まで続いたときは、流石に「どこまでこの話は続くのか」という気分になりました。
著者の癖なのか、よく分からない脱線も少し気になります。本人も自覚されているようですが。
結論としては、「分かりやすいが反面冗長。余計なお喋りめいた記述は無くして、もっと著者の視座を示した重厚な内容が読みたかった」というのが率直な感想です。