紙の本
衝撃の書
2012/01/25 19:47
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ありばば - この投稿者のレビュー一覧を見る
これは深い。衝撃の書でもある。日興証券と三菱グループ、ソニーがバックアップした創業期を超えて、なぜかくもこのファンドが栄光を輝かせてきたか。野村証券がライバルのワッサースタインペレラに役員を派遣した(今思うとこの派遣された人物こそが野村時代のSBI社長のあの人だったりするのだが(笑))ことと対照的に、ブラックストーンの成長を大河ドラマ風にひたすら描いた歴史書と言っていい。
回転扉のごとく政権の人物がウォール街に顔を出したりするのはさすがアメリカ、と思うが、そういう財務副長官とかが娑婆に帰ってきてさっそく強欲そのものをむき出しにすることとかが平然と書かれていることに読みながら多少の戦慄を覚え(元経産省キャリアだったどこかのファンド代表を思い出しますが、あんな比ではない規模)たりするわけだが、ファンド創設者が引退する儀式、いかにして優秀な人材をつなぎとめるか、出資者の介入をいかに防御するかは彼ら百戦錬磨の達人たちを持ってしても苦闘の嵐であったことがyくわかる。2011年に出版された多くの金融関係の本の中でも必読の書と思う。
ごく少数を除いて主要人物たちがその強欲の果てに淡々と到達する終章に何を思うかは読者次第なのであろう。
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PEは企業価値を高めたかという後半の章も興味深いが、前半の主なるPEファンドの歴史(人的なルーツを絡めて)はとても面白いし、考えさせるのは、BLACK STONEの最初のfund raiseそしてIPOのところ、結局、勝つってことはタイミングか?と思わせる。でもこのタイミングを引き寄せる人間が成功するんだよね。
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冒頭数行読んで映画の「ウォール街」みたいなお話を想像したが違ってた。あんまり人物の魅力を紹介することに焦点をあててなくて、ちらっちらっと出てくるくらい。ひたすらディールの歴史が地味めな表現で書かれてて、そういうの興味ある人向けの本だった。その割に読み始めてから風呂で読み、トイレで読み、電車で読み、不思議と読み切れたのは、なんでだろー。ちらっと出てくる人々がやはり魅力的だったからぽい。
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PEファームの雄「ブラックストーン」の設立から現在までを、
プライベート・エクイティ業界およびLBOの歴史とともに、
ブラックストーンと創業者のシュワルツマンを軸に描いている。
バブル~リーマンショックまでの約30年間を、
金融を絶対悪のように描くルポや小説も多い(ほぼ100%)中で、
PEファームを軸とした本書は、非常に新鮮な感じを受けました。
本書にも度々登場する「野蛮な来訪者-RJRナビスコの陥落」の
プロローグでもあり、その後日談として読むこともできるかな…。
金融の知識がある方であれば、非常に興味深く読めると思います。
1つのディールに群がった様々な人々の泥臭い駆け引きが描かれた
「野蛮な来訪者」とは異なり、歴史をトレースしているだけなので、
小説としては、「野蛮な来訪者」の方が面白かったかも…。
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恥ずかしながら、プライベートエクイティって何?というレベルで読んだけど、むしろ非常に興味深く読めました。
どうもイメージで「乗っ取り屋」とか、「短期的利ざや稼ぎ」のように勝手に決めつけがちだけど、実際に投資先のうち2年以内に売却されるケースは全体の12%しかないことや、58%のケースでは保有は5年以上に及ぶというから驚きました。
確かにIPOや売却によって利益を得ることが目的ですが、企業の抜本的改革に取り組んだり困難な戦略を実行し体質改善する等、PEが買収することによって企業価値を高めたケースが色々と紹介されていた点も非常に勉強になりました。
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世界最大のプライベート・エクイティ投資会社であるブラックストーンとCo-Founderであるスティーブ・シュワルツマンがウォール街で成り上がっていく過程を描いた一冊。ウォール街と言うとGSなど投資銀行くらいしかわかっていなかった自分にとって、少し世界観が広がった気分。
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世界最大の投資ファンド運用会社の設立から現在いたるまでの記録。
投資ファンドというあまりいいイメージがないが、経済にダイナミズムを与えているさまが描かれていた。訳者のあとがきにもあったが、日本でこのようなプレーヤーが活躍できている土壌があったなら、失われた20年はちがっていたものとなっていたかもしれない。
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プライベート・エクイティという存在をご存知でしょうか。
プライベート・エクイティとは、大雑把に言うとLBOと言う、自身の資本に他から調達した資金を追加して企業を買収する手法を用いて企業買収を行い、買収した企業を転売して利益を得る金融グループの事です。
もしかしたら、PHSキャリアのWillcomを買収した事があるカーライルが、その一つである事を知っている方も結構居られるかもしれません。
本書は、この比較的新しい形態の金融グループであるプライベート・エクイティを、その最大手の一角を占めるブラックストーンの創業以来の歴史を通して解説しているノンフィクションです。
尚、訳者の後書きによれば、原著の2人の著者は本書の執筆開始時、プライベート・エクイティや企業M&Aを専門に扱う「ディール」誌のジャーナリストであり、その為、本書の内容には多少業界よりな点はあるだろうとの事。
確かに読んでいて少し業界よりな印象を受けた箇所もあり、その点が少し残念に感じました。
しかし、例えばブラックストーン社幹部が自社の企業再生能力を誇示した事に対して企業の業績向上には景気回復の影響も大きいと指摘したりと客観的な記述も多く、
またブラックストーンの歴史を通して見るプライベート・エクイティ業界の歴史の解説やプライベート・エクイティそのものに対する詳細な解説等も載ってあり、
私の様な「プライベート・エクイティって名前は聞いたことはあるけど、一体どの様なもの?」と言った門外漢にとっては十二分に読み応えのある内容でした。
では、前置きはこの位にして本書を読んで気になった箇所を以下にピックアップ。
・ブラックストーンの創業者の一人、スティーブ・シュワルツマンは損を出すのが死ぬほど嫌いな性格の持ち主で、ブラックストーンの企業文化にも損失を嫌う性質が(同業他社よりも)徹底的に持ち込まれている。
過去に立派な業績を上げていようが社内で重要なポジションを占めていようが一度大損したらシュワルツマンから徹底的に罵倒され解雇される
・ブラックストーンの創業時、ファンドへの資金提供を申し出る所が全くなく、1年以上たってようやく出資者が現れた。
その後、株式市場の危うい空気を感じとり、あわててファンドの募集を締め切って金曜日に事務手続きを終えた所、翌週の月曜日、1日でアメリカの株価が約23%下落した通称ブラックマンデーが起きた。
・ブラックストーンが初めて行ったLBOでは(同業他社とは違って)経営陣に対して友好的に振る舞い、「企業とのパートナーシップ」との宣伝文句を得る。
・損失が出るリスクを事前に厳重にチェックする体制を構築。
・失敗のパターン:業績が景気に大きく左右される市況産業でしかも競争力が弱い企業を買収した時には損失が出た。
・プライベート・エクイティとブラックストーンの歴史
80年代、プライベート・エクイティ各社は豊富な資金を背景に乗っ取り屋的な動きを見せ、世間から反感を買う。
しかし、信用市場の収縮により、簡単に資金を借りれなくなった。
その為、企業を買収してそれを切り売りするだけでは利益を出せなくなり、90年代には買収した企業の事業を本質的に改善し競争力を強化する必要が出てきた。
9.11以降、資金不足に悩む企業を買収し、それにより大規模な資本投入を行い、当時、金融市場の主流派が放棄していた役割を代行。
また、その時に買収した企業が景気回復と共に成長し、プライベート・エクイティ各社に莫大な利益をもたらした。
ブラックストーンではシュワルツマン自ら自身の後継者を外部から招聘。
2代目のトニー・ジェームズの改革により、ブラックストーンは個人商店の寄り合いからシステマチックな統制が取れた企業へ変貌。
ドットコムバブル発生時、プライベートエクイティ各社は蚊帳の外に置かれる。
バブル崩壊後、各社復権。
プライベートエクイティのファンドの"成績"に魅了された年金基金などから大量の資本が流入。
その結果、5億ドル、10億ドルの買収ではファンドの資金を利用し切れない状態に。もっと大規模な買収劇が繰り広げられる。
2007年6月、ブラックストーンはIPOを実施。7月には信用市場が収縮を始める。ぎりぎりのタイミングでIPO成功。
リーマンショック等、信用市場の収縮に伴い、プライベートエクイティ各社はこれまで自社へ膨大な利益をもたらしてきた"レバレッジ"によって今度は苦しめられることに。
この他にも、ブラックストーンの創業者のシュワルツマンは「口にフィルターがかかっていない」と称される程、思っていることをすぐに口に出す性格の持ち主であることや極度の目立ちたがり屋である事。
また、自身の60歳を祝うど派手な誕生パーティーを開催したりと派手な金遣いが世間の反感を買ったこと等も書かれていますが、
その一方で部下が個人的なことで悩んでいる時には気遣う電話をかけるなど細かな気配りができる性格の持ち主であるとも書かれていました。
その上、自ら後継者を指名し権限を譲渡すると言った、アクの強い創業者には極めて困難なことも成し遂げており、本書に載っているあるバンカーの「彼は自分という人間を、非常によくわかっている。そして、それをうまく隠しているのさ」と言う言葉には、「多くの欠点があるにせよ、ただそれだけの人物にはこれだけの業績を上げることはできないのだなあ・・・」と実感。
これ以外には(これには多少、業界の代弁者的な印象を受けたのですが)、25章ではブラックストーンが買収し成長させた医薬品容器メーカー・ゲレスハイマー、レゴランドなどを運営するマーリン・エンターテイメンツ・グループ、旅行代理店・トラベルポートの例を上げながら、世間のプライベートエクイティへの批判に反論する内容が載っていました。
26章にてリーマンショック以降、信用市場が収縮し簡単に資金調達ができなくなった事や中国の台頭等、新たな状況に置かれたプライベート・エクイティの今後について触れながら締めている本書。
上記しましたが、多少業界よりな箇所はあるもののよくまとめられた内容で、しかも人間ドラマが生き生きと描き出されている文章なのでとても読みやすい内容でした。
また、各章が十数ページと短めと言う事もあり、おやすみ前の読書にも丁度いい感じになっています。
プライベート・エクイティについてある程度は知っているという方はもちろん、全く知らないという方にとってもお勧めな一冊です。
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これは自分にとっては非常に勉強になる1冊でした。
プライベートエクイティのビジネス手法を全て学べましたので。
企業の買収、上場企業の非上場化。そこにおいての収益のあげ方。
資金調達手法。 今まで気が付かなかった新しい方法を幾つも知ることができましたので非常にためになる1冊となりました。
文字も小さく450ページ以上(注も含めて500ページ)と なりますので、かなりボリュームがあり読み応えがあります。
余裕のあるときに購入してください。価格も高いですので。
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PE業界の最大手の一角であるブラックストーンを通して、PE業界の歴史とその手法の変遷について知ることができる大著。シュワルツマンという強烈な人物を通してブラックストーンを知ると同時に、他のプレイヤーについても詳しく書かれている。
アメリカの産業の歴史、景気の変動に対応して変革してきた自社の力が克明に描かれている。また失敗案件も包み隠さず書かれていてとても参考になる。
最後の2章は若干業界寄りの書き方っぽくもあるが、PE業界が果たしてきた役割の大きさについては疑いようがないのとを改めて認識した。
以前カーライルは読んだが、それよりも詳細で迫力があった。今年読んでよかった一冊。
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原題『King of Capital』。まさに現代の王者。その王者も設立当初は順風満帆ではなかった。俊逸なディールを積み上げ、今の地位を獲得している。グーグルやアマゾンとなんら変わりがない。
並行して『リーマンショック・コンフィデンシャル』を読んでいたが、シュワルツ氏はリーマン・ブラザーズ元CEOのファルド氏に権力闘争で敗れた温和なイメージを持っていた。しかし、なかなかどうして、ウォール街特有の自惚れと血気盛んさは十分だ。
外資ファンドを「ハゲタカ」と揶揄する風潮があるが、市場のミスマッチやトレンドを鋭く捉え、資金を投入し、企業価値を是正もしくは向上する彼らの行動は社会的に意義の高いものである。自行のリスクヘッジばかり優先する日本のメインバンクにも見習って欲しいものである。
PEファンドが、価値毀損の理由をどう分析し、どう施策を打つかというロジックはとても勉強になる。一般のビジネス書としてもおすすめだ。
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アメリカ経済強いては世界経済をけん引してきたPE業界の雄、ブラックストーンの栄枯盛衰のノンフィクション。元リーマンブラザーズのピーターソンとスティーブシュワルツマンが1985年10月1日に設立した。ドイツ語で「黒」を意味するシュワルツとギリシャ語で「石」を意味するピーターをとって社名が作られた。プルデンシャルが創業から2年くらいで100億円を拠出、そこから資金集めの快進撃が始まる。今でこそファンド業界では当たり前になってきたが、この時初めてハードルレートという概念が考え出されたらしい。成るほど!
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プライベートエクイティの雄、ブラックストーンの設立から2010年までのノンフィクション。
その当時の金融情勢も含めて丁寧に書いてありディールの詳細も分かりやすく、またこの会社やLBOのマーケットに大きく貢献した銀行員や投資家の存在が手に取るように分かるような書き方がしてあり、物凄く面白かった。
この本を読めばPEのメインプレーヤーについては大抵のことが分かるので本当に良書。
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緻密な取材によってプライベートエクイティ業界の変遷がよく分かる一冊。企業のオーナーの流動性がアメリカに比べ低いと想定される日本において今後どういった役割を担うのか。
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LBO(プライベートエクイティ)業界の変遷がとてもよくわかりました。
面白いのは、時代の流れ(と業界が世の中にどんな風に見られているか)と共に、ビジネスモデルが変わってきている事で、ジャンク債による資金調達に始まり、シンジケートローンによる複数金融機関による資金調達、シンジケーションと証券化のハイブリッド(これが今だと一番主流)による資金調達と、夫々の時代に於けるエリート金融マンたちによって新たな金融商品が開発され、その調達規模感と共にプライベートエクイティの買収案件規模も大きくなってきていることがわかります。本自体が2010年頃に書かれているのでその後の業界の変遷については言及されてないですが(経営改革による新たな価値の創造、がこれからのトレンドと紹介されてます)、ブロックチェーン技術等を使った一般からの資金調達なんかもそのうち始まるのかな、なんて考えたりしました。
ページ数も厚く、重めでしたが非常に面白くスラスラ読めました。