紙の本
建築家になるための心構え
2021/06/19 17:52
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投稿者:想井兼人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、新国立競技場を手掛けた隈研吾があらわした、ある種の自伝である。
建築家になりたい14歳に向けた1冊だけど、建築家になるための道のりを教え説くものではない。
隈研吾の半生を示すことで、建築家にとって必要な経験の積み方を示したものと言えよう。
建築家になるためには、建築の勉強をしているだけではだめ。
いろいろと学び、経験を積む必要があるようだ。
それはどの業態においても同じことと感じた。
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隈研吾さんの著作は数多くありますが、これは最高傑作の一つと言えるのではないかと感じます。
『建築家になりたい君へ』というタイトルではあるものの、これは若い人に向けた生きる姿勢を問いた本であるように思います。
幼少期から、何かが欲しい時には、必ずお父様を納得させるようなレポートを書き、プレゼンを行う必要があったこと、家族で常に自宅の改修プランを考え、自ら実行したこと、大学院で「何をしなさい」と一切指示されることがなく、自分から動くことが人生であることを学んだこと・・・
全ての経験が、現在の隈研吾さんを形作っているし、そうした生き様を学ぶことの大切さを感じます。
私は実際に隈さんとお仕事をさせていただいたことがあり、その謙虚なお人柄の背後にこのようなこれまでの人生経験が積み重なっていたのだと、納得と感動をしながら一気に読みました。
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素晴らしかった。多分中高生向けに書かれたかも知れないが世代を超えて共感を覚えたり、反省を促したりするのでは、と思う。考え方の柔軟性、多様性相手への傾聴と、教わる事ばかり。建築だけでなく広範囲にわたり参考になると思う。益々隈氏が好きになった。
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建築家・隈研吾氏が、建築家に興味を持つ10代へのメッセージとして綴った本です。小学時代の生い立ちから、中学、高校、大学での経験を特に詳しく語った、自伝的な内容となっています。
タイトルから子供向けかと思い、読むのをためらっていましたが、大人でもまったく違和感なく、興味を持って読める本でした。
表現がやさしいせいか、隈氏の著作で時々遭遇する難解な箇所はなく、とてもわかりやすくて著者への好感度が上がります。
隈氏の生い立ちとそのエピソードを知るにつれ、氏の建築がなぜそのようなものなのか、ということが腑に落ちてくる場面が多くありました。
小学生の頃、父親と自宅の増改築を行うために、安価で格好のいい材料探しに夢中になっていたことや、高校時代のキリスト教的価値観の教育経験、アメリカ留学で、外国人との対話を通して気付いた日本文化の魅力など、さまざまな出来事が、隈氏の建築家としての活動に大きな影響を与えていることがわかる本です。
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元々、隈研吾さんのデザインが好きでしたが、この本を読んで隈研吾さんの人柄・考え方も好きになりました。
色々な人と関わる中で謙虚であること、柔軟性の大切さを考えさせられました。
建築家になりたい人以外にもオススメ。
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建築家 隈研吾さんの著書。オリンピックのスタジアムを設計されて、同イベントが終わった節目に出されたと思うが、今までの隈さんの作品歴やその時の想いを感じられてよかった。
今まで「負ける建築」という彼の著書を拝読したが、その時から今日まで、建築に対するスタンスが変わらないこと、歴代の建築家のスタイルに対して決して迎合するでもなく持論を述べられていること、さらに自分の建築界での立ち位置を理解されていかに自分の想いと個性を世間にぶつけるかが、
冷静ながらも熱い想いが詰まっていて、大変面白かった。
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隈研吾が、14歳の読者を想定して書いた本なのでとても分かりやすい。
東京オリンピックの競技場などで有名な建築家だし、東京大学出身なので、エリートコースのど真ん中を歩いているのかと思ったが、実際は紆余曲折があったことが書いている。
個人的には、アフリカに興味を持った背景や、大学院時代に自分で企業と交渉してプレゼンをして資金援助してもらいアフリカに調査した話、アメリカ留学時代に、自分でインタビュー企画を出し世界的に有名な建築家にインタビューした話などは、感銘を受けた。
14歳を想定読者としているのでわかりやすい言葉で書かれていたので読みやすいが、大人の仕事の進め方としてとても勉強になる
気に入った言葉
・自分で何かをやらなければ人は何もしてくれない
・建築の場合は子供の力だけでは建築が建たない
・実際の世の中に出るとこの説明のうまさが建築家にとってとても重要
・日本文化は日本人が思っている以上に大きな影響を欧米に与えている
・今のお洒落に惑わされない意地悪な目ひねくれた目を養ってほしい
・仕事がないことこそ大切
・恥をかくことを避けようとしている限り、今までのディテール、デザインをただ繰り返すことになる
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14歳前後の若者だけでなく、すべての人にオススメ。情報量が多く、読み応えアリ。
最近は何でも隈研吾だよなぁと辟易ぎみだったのですが、この本を読んでみて、隈研吾建築をきちんと見に行きたい、と思いました。
普通の人であればしたくないような苦労でも、隈さんは「あの経験があってよかった」と自分の糧に出来る方なんだなと。
子ども時代、欲しいものがあるときは父親にプレゼンしなくてはならず、それが後々役立ったそうです。しかし、妹はすぐに買ってもらえていて、世の中の不公平を実感した…というフレーズには笑いました。
プロテスタントが、資本主義経済の社会システムのベースになっていて、それがどのように建築にも影響を与えているのか…という説明も本当にわかりやすくて。
他にもたくさん挙げたいくらい学びの多い一冊でした。
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少年少女たちに向けて隈研吾さんが書いた本ですが、40代半ばのおじさんが読んでも胸に刺さる言葉がたくさんある本です。私自身は建築家になりたいと思ったことはないですし、アラフォーになって美術館に行くのを趣味としてから、やっと名建築なるものに目を向けるようになったくらいです。当然のことながら建築をベースに文章は綴られますが、本質的な部分ではどの仕事にも当てはまることばかりです。仕事だけではありません。家族や友人との関係性においても身につまされる話もありました。建築家の仕事は、特に隈さんにとっては、それを長距離走者に例えていました。あの国立競技場の建設にしても、それまでの実績と信頼関係などの積み重ねのうえにあるということです。
また、この本はコロナ禍において書かれた本です。最終章ではコロナの前と後での隈研吾さんが考える未来の建築の方向性について語られています。どんな風に話されていたかは是非読んでいただき、私の感想としては、アフターコロナと言われてもこれまでの生活との間にばっさりと境界線を引くようなものではなく、積み重ねてきたことを踏まえて、今後も積み重ねていきたいことは積み重ね続けていこうとも思いました。
あと、アート好きとして建築との違いに触れられていたのが印象的です。建築家を隠喩的に「子供」と「大人」の両方の素養が必要ではないかと説いています。本文を引用させて頂くと、『建築というのは、「大人」がお金を出してくれて、初めて実現するものだからです。そこが建築とアートの違いです』。ものの見方が増える本です。
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路地で畳針を操っていた職人さん
鍋を治していた鋳掛屋さん
庭先に井戸を掘ってくれた職人さん
その人たちはその「技」と「姿」で
一人前の仕事とは
を無言で語ってくれていた
今の日本で
それらの貴重な「日本の技」を
見受けることはほぼ無い
明治以来
欧米だけを手本にして
道路、交通、建物を模倣して来て
なんとも無機質な「都市」を作り上げてきた
この日本という国の中で
隈研吾さんの「建築」に
焦点があてられる理由が
本書を読む中に見受けられる
日本という国で
培われてきた「匠の技」、
日本が「これから」を
考える時に どう感じればいいのか
その辺りのヒントの数々が
隈研吾さんが14歳の若い人に向けて
語り下ろしている本書に
詰まっている気がする
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建築家になるには建築以外のことも含めて様々な体験をし他人の視点や自由な考えを持とう。
友人から隈研吾という有名建築家の存在を知りその人物や作品が気になって本書を読むことにした。
本人の行動力や建築家という仕事が自分のイメージしていたものとの違いにも驚いた。
例えば学生時代にアフリカへ行く話。渡航実現のために企業や専門家に働きかけたり現地で無作為に集落に突撃していったり。個人的な建築家のイメージでは部屋の中で図面や設計の練習をひたすらしているものだったのでこれは驚き。
建築の仕事の話としてはチームで動いたり現地の調査や職人との話し合いなど、以外と室内に篭りきりではない。
建築家は芸術家ではない。
大学院時代にアフリカ行った話
日本とアメリカの建築授業の違い
伊豆風呂小屋
石の美術館
竹の家
カサアンブレラ
浅草観光センター
新国立競技場
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〇めっちゃパワフルな本でした。反骨のやんちゃな建築家、隈研吾さん建築を語る。
〇70年代から現代までの建築やその流れ、建築家について、また建築だけでない全ての知識や興味や教養や経験、そして人との繋がりが隈研吾さんのお仕事につながっているのだなと
〇この本はタマゴたちへの挑戦状ですよね。私のシカバネをこえていけ!こえられるもんならな~と高笑いする幻聴が聞こえた。
〇建築に限らず、全ての仕事に変換出来そうだ
〇昨日読んだ博物館ブックにも繰り返し出てきた「神は細部に宿る」という言葉。毎朝、唱えなくちゃ。
〇核家族では「大人教育」は重要視されない
親と子でしかない
はじめに
・建築家に神様はいない。建築家になるには、「広く興味をもって、広く勉強する」
1:動物好きから建築好きへ
・はじめて“出会った”建築家:丹下健三先生
・60年代からの代表的な建築
・父との対話と社会訓練
2:人間を知らないと、建築は作れない
・キリスト教
憧れも偏見も実像に接して吹き飛ばす
・建築の罪 人と話をする 環境を考える
・「勝つ建築」と「負ける建築」
・70大阪万博と建築家 夢が裏切られる
・アフリカへの憧れ
文化人類学者 梅棹忠夫先生
詩人 アルチュール・ランボー
ジャズ
・社会学者 マックス・ウェーバー
・建築の奥にひそむ社会問題
白い建築が好まれた背景を考える
→現在は、人工素材から自然素材に
・nLDK 日本を成長させ、同時に歪ませた
3:夢のアフリカ旅行が教えてくれたこと
・プレハブ住宅と大工さんの木造…内田祥哉先生
・建築の保存…鈴木博之先生
イギリス発 アーツ・アンド・クラフツ運動
・小さくて不思議な住宅…原広司先生
中東の砂漠化、インドの草原、中南米のジャングルの集落の調査
・自分で何かしなければ、人は何もしてくれない
・アフリカに行こう
専門家に会って直接話を聞く
←本やネットから手に入れることの出来ない重要な情報を手に入れる
←人のネットワーク
・ネガティブチェックはあとから。
・建築は長い仕事
・「大人のしゃべり方」
アートは子どもも出来るが、建築は大人の仕事
建築は大人と子どもの間を行き来する
・人を信じる
・建築家になるには、建築家の近くに
4:アメリカ留学で気付いた日本の魅力
・会社に就職し「大人」の勉強をする
・80年代、ヨーロッパからアメリカへと建築文化の中心の変わり目のニューヨークで学ぶ
・ミース
・「話す力」…コンペ、住民説明会などで必要
アメリカでの正解はないという教育
・2枚の畳
・日本の伝統建築を再発見する 価値観の反転
『茶の心』岡倉天心
日本の建築や文化の世界への影響
5:はじめての建築…脱衣所みたいな「伊豆の家」
・1986年、同世代より遅れてのスタート
・はじめての依頼
「脱衣所みたいな家に住みたいんです。」
・建築は芸術か
6:予算ゼロの建築…「石の美術館」
・1990年代、バブルはじける
「仕事が無いことが建築家にとって重要です」
・四国:檮原町との出会い
30年の付き合い、6つの建築
・建築家は長距離走者
“短距離走”の仕事は…
・予算ゼロの建築依頼
石と石工は手元にあるが、お金は無い
アイディアを現実の形にするために…構造設計
・恥をかくことは挑戦の第一歩
職人さんたちと一緒に
・国際石の建築賞
7:日本の田舎から世界の田舎へ…中国の「竹の家」
・神は細部に宿る…ミース・ファン・デル・ローエ
・万里の長城プロジェクト
最初・スケッチだけの仕事
←断る。引き受けるなら、全部細かく見る。
面白そうな仕事なので、結局赤字だが全て込み100万円で引き受ける
「建築は凍れる音楽」ゲーテ?フェロノサ?
←NO!建築もまた音楽のように流れる
←現地で実現不可能なスケジュールを知る
5ヶ月に全力を尽くすとこたえ、4年かけた
←トラブルも組み込む
←地元の材料と地元の流儀
8:ハコの先乗り建築を探して
・いい建築は、まわりに愛されてこそ
・建築家とは待てる人
・新たな「国立競技場」
・世界へ飛び出すおもしろさ
日本の閉鎖的なシステム
同室の人間だけではクリエイティブな仕事は向かない
日本人だけで仕事をしない方針…友人として受け入れられる
・小さな仕事をやり続ける
・「カサ・アンブレラ」
おわりに
・コロナ禍をチャンスに変える
・大きなハコは人間をしあわせにしたか
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紙の書籍にて。
隈研吾、講演会を聴きに行って以来大ファンなのでとても面白かった。
コンペ慣れしているだけあって本当にお話が面白い。
本書でそのルーツや考え方がわかってとても興味深かった。
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【読んだ理由】
・建築巡りが好きなので
・難解な文章が多い隈研吾さんが、
学生向けにどんな文章を伝えるのか
興味があったので
【感想】
課題図書コーナーを見ていたら発見しました!
オリンピック国立競技場の隈研吾さんの自伝的一冊。
元々建築巡りが好きですが、
読んだら、
建築熱がますます上がりました。
隈研吾さんの生い立ちや、
建築に対する考え方の推移を、
隈さん本人の文章で読めるのは貴重でした。
改めて、隈さん作品を、
時代を意識しながら見て回りたいです。
課題図書(高校生部門)とのことですが、
未来ある14歳はもちろん、
前途多難な40代(←私)
にも未来を動かす力がありそうな一冊。
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目指すのは神ではなく。
建築家になりたい人は、どのようなきっかけで建築家を目指すのだろう。やはり何か惹きつけられる建築を見たからだろうか。とてもキャラクターの濃い建築家に出会って、あのような人になりたいと思ったからだろうか。隈研吾が語る「建築家になりたい君へ」のメッセージは、夢でも憧れでもなく、リアルな建築家になりたい人へのアドバイスである。
隈研吾の半生を辿るかたちで話は進んでいく。人生の時々で出会った建築や建築家に対するコメントは、辛辣なようで尊敬と論理性にあふれている。
自分のやりたいことを何が何でもやるような突っ走った建築家は求められていない。それぞれの時代に求められた建築があり、これからはもうコンクリートや高層建築といった大きなハコはいらない。その場所との調和、材料の選び方。ネットの時代だからこそ、評判に気を配ること。そして対話の大切さ。隈研吾は彼の考え方を建築に込め、世界にひとつひとつ作品を残していく。
オリンピックの国立競技場を思い出す。あの建築物は2020年代の空気や経済、世界の風潮を後世に伝えるひとつの遺産になるだろう。そして、あの国立競技場に何かを感じた誰かが、建築家となり、また新たな時代のための象徴的なものを建てる。建物は動かずにそこにある。しかし、それはいつまでも雄弁に語り続ける。
本も建築と似たところがある。音楽や映像と異なり、完成すると動かないように見えること。でも建築が「流れる」ように、本も「流れる」のだ。書いた人の想いを、その時代の空気を、そこに留めながら伝え続ける。だからこの本も隈研吾の建てた建築のひとつとして、彼の思想と今の時代を語り続ける。この本に出会った人が、メッセージを受け取り、建築家としての自分を考えるだろう。1964年、代々木競技場に出会った隈研吾のように。