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エラスムス 闘う人文主義者
著者 高階秀爾
中世の大ベストセラー『痴愚神礼讃』の名を知る人は多いだろう。ヨーロッパ文化への貢献者に与えられる栄えある賞に今もその名を残す、西洋知性の粋、デジデリウス・エラスムス。宗教...
エラスムス 闘う人文主義者
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エラスムス闘う人文主義者 (筑摩選書)
商品説明
中世の大ベストセラー『痴愚神礼讃』の名を知る人は多いだろう。ヨーロッパ文化への貢献者に与えられる栄えある賞に今もその名を残す、西洋知性の粋、デジデリウス・エラスムス。宗教改革をはじめ、世俗権力と教会の対立が顕在化し、争いが絶えなかった狂乱の時代を生きた彼は、つねに学問に打ち込み、「何者にもその道を譲らない」という自らの信条が揺るぐことはなかった。派閥に属さない知性的な態度や人間味あふれる魅力的な人柄、「世界市民」としての生き方を、西欧文化を知悉する著者が憧憬をこめて描き出す傑作評伝。 【目次】まえがき/第1章 我、何者にも譲らず/第2章 不信の時代/第3章 変革への底流/第4章 古代へのめざめ/第5章 ふたつの友情/第6章 イタリアへの旅/第7章 ヴェネツィアの印刷業者/第8章 ゆっくり急げ/第9章 『痴愚神礼讃』/第10章 宗教改革の嵐/第11章 嵐のなかの生涯/第12章 自由意志論争/第13章 栄光ある孤立/はしがき
目次
- 第1章 我、何者にも譲らず/小さなメダル/テルミヌス神を象徴として/晩年を襲った苦難/不信と混乱の時代に/自己の精神の自由のために/フッテンへの抗議文/第2章 不信の時代/パラドックス/誰からも求められたエラスムス/出生にまつわる謎/ロッテルダムのヘラルド/第3章 変革への底流/デーフェンテルの少年時代/両親の死/『今後二十年間の予告』の終末観/ランディーノ版『神曲』の影響/「世界の終末」と「新しい宗教」/聖女ビルギッタの幻想/第4章 古代へのめざめ/異教的古代とキリスト教的中世の遺産/古典への没頭/同時代人ロレンツォ・ヴァラへの傾倒/『反蛮族論』──学問と信仰の調和/修辞学の訓練/『現世を蔑む』──エラスムスの思想構造/エラスムスと「パンドラの箱」/第5章 ふたつの友情/イタリアへの憧れと挫折/ソルボンヌ大学へ/イギリスへ/ヨーロッパのユマニストたちの交わり/ジョン・コレットとの邂逅/トマス・モアとの友情/第6章 イタリアへの旅/実現しなかったイタリア旅行/イギリス滞在の意味/エラスムスが出会ったルネッサンス最盛期/遅過ぎたイタリア旅行/エラスムスの真の目的/第7章 ヴェネツィアの印刷業者/神学者エラスムスへの旅路/トリノからボローニャへ/アルドゥスとの出会いと『格言集』の刊行/パドヴァ──アレキサンダー・スチュアートとの日々/ローマでのエラスムス/エラスムスがイタリアから得たもの/十六世紀ヴェネツィアの印刷出版業/アルドゥスのアカデミア/第8章 ゆっくり急げ/海豚と錨/ユマニストたちのシンボル/「ゆっくり急げ」の寓意表現/サヴォナローラのメダル/『痴愚神礼讃』へ/第9章 『痴愚神礼讃』/ホイジンガが語る『痴愚神礼讃』/「モック・ヒロイック・スタイル」/『愚者の船』『愚神の勝利』との比較/人文主義的文化と民衆文化の統合/道化の存在/人間へのあたたかな視線/第10章 宗教改革の嵐/『痴愚神礼讃』の成功が示したこと/ローマへの幻滅/「痴愚女神」は語る/一五一五年の時勢/『平和の訴え』の戦争批判/なぜ戦争が起こるのか/第11章 嵐のなかの生涯/学芸復興への希望/嵐の前の静けさ/ルターを弁護する/ツヴァイクの見たエラスムス/「世界市民」でありたい/第12章 自由意志論争/『自由意志論についての評論』──ルターへの反対表明/「立ちあがら」ないエラスムスへの不満/「自由意志」をめぐって──ルターとの論争/聖書学者エラスムスの方法/多数の理性との連帯/第13章 栄光ある孤立/二度目のバーゼル滞在/ノエル・ベダの異端非難/受難/「魚食い」の対話/故国なき「世界市民」/エラスムスがめざした共同体/あとがき
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紙の本
キリスト教の希薄なエラスムス像
2024/01/21 18:29
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
エラスムスはルターやティンダルなどが新約聖書の翻訳を訳した時に底本にしたギリシャ語ラテン語対照新約聖書をやっつけ仕事にしても刊行したのだが、この本は人文主義者としての肖像ばかりに光が当たっていてカトリック教会には「異端」視されても宗教改革者の側には微温に感じるような改良主義者としてのエラスムスが見えてこない。エラスムスの伝記を書くにはキリスト教のテキストにも人文主義者として研究した側にも光を当てるべきだ。彼がギリシャ語ラテン語対訳新約聖書を刊行したフローベンはヨセフスのテキストも出しているしアルド・マヌーティオは人文主義者の版元として有名だが七十人訳のテキストを刊行している。