紙の本
やっと文庫になったのね
2024/03/24 23:23
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投稿者:Kitaab2005 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ハードカバー版を立ち読みして、面白そうだと思ったけど内容と財布を相談して買うのを止めた。一度しか読まないだろうハードカバーにしては高いと思ったので。最近文庫が出てこれは買った。
内容は満員電車の中で毎日読むのはちょっと厳しいかと思ったが、取材と実体験が織り交ざりするすると読めた。大学生の死の謎解きがストーリーであるが、その当時の大学生の行動が素直で面白かった。
こういうノンフィクション、たくさん読みたいなあ。
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1959年の冬にウラル山脈での遭難事故
直前まで、はつらつとしていた経験豊富な大学生トレッカーたちはなぜ全員死亡したのかという謎をアメリカ人が丹念に追う
超低周波音とカルマン渦列という自然の不可抗力によるものと推測された
事件とその推理よりも、ウラル山脈に住むマンシ族の人びとに心打たれた
現在マンシ族を名乗るひとは多くなっているそうだがマンシ語を話すひとは少ないらしい アメリカのネイティブアメリカンのように住むところが狭められてるようだ
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1959年1月、ロシア西部ウラル山脈の一帯で起きた遭難事故の真相を地道な調査で解き明かしたドキュメンタリー。ディアトロフ峠事件と呼ばれている。真冬のウラル山脈に学生登山部9名が入山後消息を断つ。1ヶ月後全員の死亡が確認された。その死に様が異様で凄惨なであったため、未解決遭難怪死事件として知られるようになる。氷点下の雪山のテントから1キロ以上離れた場所で発見された死体は、衣服や靴はなく、頭蓋骨折したものや、舌を喪失したもの、遺体から異常な濃度の放射能が検出されていた。最終事故報告書には「未知の不可抗力によって死亡」との記載で終わっている。ソビエト連邦時代に起こった未解決事件をアメリカ人である著者が真相を描いた傑作ノンフィクション。
当時の学生がたどった状況を資料から読み解くパート、捜索隊がたどった状況を読み解くパート、現代著者が現場を訪れ調査をしていくパートが、交互に配置され真相を解明していくスタイル。
以下真相にも触れます。
初めて目にする「カルマン渦」「超低周波音」という言葉。特殊な地形で、ある条件が重なると発生する自然現象なのだそうだ。記憶の片隅に置いておき、気象現象について興味を持った時に深掘りしたい。
カルマン渦列:ハンガリーの物理学者セオドア・フォン・カルマンにちなんで名付けられた現象。液体にも気体にも適用される流体力学分野の現象。
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「ディアトロフ峠事件」。1959年、冷戦下のソビエトで起こった未解決遭難怪死事件。氷点下の雪山、テントから離れた地点で登山チーム9名の遺体が発見された。皆衣服や靴を脱ぎ、頭蓋骨や肋骨を骨折する重傷。遺体からは高濃度の放射能が検出。最終報告書には、「未知の不可抗力によって死亡」と記された。
ディアトロフ峠事件の全貌と真相を描くノンフィクション。
若く、友情と幸福に満ちていた経験豊富なトレッカーたちは、なぜ遭難し異常な状況で死亡することとなったのか?
おそらく世界でも1,2を争うほど有名な遭難事故、「ディアトロフ峠事件」の真相に迫るノンフィクション小説です。
正確には、遭難したトレッカーたちの様子、その後出された捜索隊たちの様子、事件の取材をする作者の記録が代わる代わる語られる形式ですので、厳密にノンフィクションとは言い難いのかもしれませんが、事件当時のトレッカーたちの様子なども日誌や病気で途中で引き返したグループ唯一の生存者の話などをもとにして推定・補完したものとなっています。
旅の途中でトレッカーたちが撮った写真が何枚も載っており、それがまた普通の仲良し大学生グループのように笑いあったりはしゃいだりしている写真ばかりなのが悲しい。あったこともないのに、彼らの間に確かにある友情が見えるようです。
実際に事件が起こった現地に行ったり、関係者から話を聞いたりとかなり詳細に調べている印象ですし、作者さんがその結果出した一応の結論(真相)も語られていますが、それでも実際の所真実がどうだったのかは分かりません。事実、本作(の単行本)出版後の2021年に、小規模な表層雪崩が事件の原因だとする論文もでています。
それでも、明らかになった情報や出された結論が、少しでも遺族の方の心のよすがになればと願わずにいられませんでした。
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写真が時折掲載されてることもあり、リアリティがあった。現代の大学生と変わらない、ありのままの様子も伝わってきて、現実に起こったことなんだと改めて感じた。
事故の原因として著書が結論付けていることは、すっと腑に落ちたわけではなかったが、不可抗力で本当どうにもならないことが起こることも現実にあるのだと感じた。
多くのご遺族が事故の真実を知ることなく、この世を去られてしまったということが辛い。
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時系列が遭難時、捜索時、作者による調査時(現代)が交互に書かれていくが、描写がうまく引き込まれる内容。最近山岳遭難に興味があり、この事件のことも気にはなっていたが、そういう理由だったのかと結論もなるほど!と思え一読してよかったという感じ。
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「死に山」という強烈なインパクトのあるタイトルと、ノンフィクション、未解決事件、という3点で購入を即決。
「ディアトロフ峠事件」
本書を読むまで恥ずかしながら存じ上げなかった事件だったが、Wikipediaやあらすじだけをかいつまんだだけでも実に興味深い事件。
いろんな場所でささやかれてる数多の説を、一つずつ検証しながら、筆者は実際にその死に山の現場まで行ってしまう。
事件が起きたのはロシア(旧ソ連)であるが、なにかに取り憑かれたように真相に迫っていく筆者はアメリカ人という面白さがまずある。
なぜアメリカ人の君がこの事件を?と何度も聞かれるし言葉の壁ももちろんあるが、彼自身も、わからないが駆り立てられる、という衝動だけで挑んでいく。その過程を見せてもらえるだけで、かなりのドキドキハラハラ感がある。
ただ実際は、内容自体に浮き沈みが激しいものではなく、淡々と筆者が見た事実や見解が述べられている現代の章と、ディアトロフ一行の日記や写真や周囲への聞き込みを頼りに、当時を現実に近いかたちで足取りを追う章と、が交互になっていている構成。
半世紀ほど前の未解決事件がすっと解決するわけももちろんないが、一瞬で今世と半世紀前へ行ったり来たりし、歴史の旅をしているようでさくさくと読み進められた。
なにかわからいある種呪いのようなもので調べ尽くした筆者がたどり着いた真相は、一見、拍子抜けするようなものなのだが、納得感も、かなりあるように思う。
最終報告書がそもそも「未知の不可抗力によって死亡」とされてしまったこの怪奇な事件を、不気味な遭難事故、で片付けず、噂話やオカルトだけでもりあがらず、これだけ手を尽くして、調べ尽くした人がどれだけいるのだろうか。
ラストの章の、
筆者の真相をもとに書かれた、ディアトロフ一行の最後の一日の描写が、そうであってほしいと思うような、そしてこの事件に真摯に向き合った筆者から彼らへの敬意も垣間見える描かれ方になっていて、とてもよかった。
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嗚呼、雪山…
雪山に、憧れている。とてつもなく。なんというか、本当に恋焦がれている。雪の降らない場所に住み、山登り…高尾山、登山って言っても、いいのかな…という、このわたくし、わたくしは…雪山に…とてつもなく…恋慕の情を抱いている…。それは、そう…これもすべて…………闇の左手…嗚呼、惑星"冬"…
という不純な動機で読み始めた本書。先に読んだ家族がニヨニヨしながら、読んだ?読んだ?と待っていた。やっと、読み終わりました。(一ヶ月くらいダラダラ,寝しなに読んでいた)なんとまあ…。
アンタははやく、孤高の人を読みなさい。と言われたので、雪山読書を計画中。
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読みにくいし、前半どうにも冗長で、よくわからない。が、自然現象として、超低周波音というものがあり、その影響が事件の原因という話は非常に面白い。現場に行くこと、一次資料を見ること、様々な論拠を現実に照らして可能性を吟味することで、真実に辿り着くのは素晴らしいと思う。
情報にどう向き合うのかということを、考えさせてくれるもの。
一つの視点である、学生達の旅程や人間関係を捉えるところなどは、だるかったが、それも、様々な通説(内輪揉めや痴情のもつれ)などを排除するのに重要なものなのだろう。
ただ、欲を言えば、もっと、最後の超低周波音の話に辿り着いた契機や、そこでの対応、そしてその説の実証など(現地での計器での実測とか、ミニチュアやシミュレーションでの証明とか)に力を入れてほしかった。
後は、もう少しミステリーの表現手法を使っていたら面白く読めたかもしれない。
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これで解決されたような口ぶりのレビューも多いが、あくまで帰結しているのは「可能性の一つ」でしかない。
「カルマン渦」「超低周波音」は発生した可能性があるだろうけれど、本当にそれが起きたのかはまた別だ。最後の一枚に写りこんでいた「光球」が何だったのかもはっきりしていない。
私はたっぷり…というほどではないが、冬山登山の経験はある。
厳冬期の八ヶ岳、初冬の鹿島槍ヶ岳など。かなりの暴風と音に一晩中悩まされたこともある。そこで疑問に思う。
・カルマン渦や超低周波音が起きたとしても、トレッキングの経験豊富なパーティが、数時間のたった一晩の出来事で発狂したようにテントを飛び出すだろうか? アメリカや欧州で超低周波音の公害が問題視されているが、それは中長期的な影響による健康被害でたった一晩で…ということはない。
私も他に誰もいない場所でテントを張ったときに夜中に風速15メートルになり、あるわけのないブーンという機械音に聞こえて外を確認したことがある。彼らもそういう経験は死亡した日以外にも聞いたことはあるのではないだろうか?
・カルマン渦でテントが潰れた説もあるが、テントを中から切り裂いたためその後の降雪でテンションがかからなくなったからではないだろうか。雪山をやる人なら、幕営地を掘り下げて雪の壁を作り、多少の風よけとすることは普通。そのためテントが半ば埋もれていたのはうなずける。また、この状況で低周波音はテントに響くだろうか?雪にぶつかり吸収されないだろうか?
・当時のブーツの形状は? 当時のブーツは履きにくく、また時間がかかる形状だったのだろうか。
慌てて飛び出すにしても、雪山で靴を履かないで飛び出すことなど登山経験のあるものなら信じられないことだ。靴をひっつかんでいく、またはつかもうとする努力すらしてないのが気になる。
幕営するときは雪崩が起きないかどうかをまず最初に考える。彼らが安全だと思った場所にも関わらず、カルマン渦や超低周波音のせいで「雪崩が起きた」と思った可能性はあるかもしれない。しかし、メンバーの多くが死亡したのは午後8時前後を湿している。雪崩は日中、太陽によって暖められて融雪する事により起きることがほとんどなので、雪崩が起きそうだとパニックになることはない。しかも、夕食は6-7時の間で、ルステムの遺体から見つかった時計は8時45分を指していたことから、テントを飛び出したときに、皆就寝していなかった可能性が高い。
この本では言及されていないが、不思議なのはディアトロフの腕時計は午前5時31分で止まっており、彼はテントの方に向かって倒れていたという。当時の時計の精度はわからないが、彼は一番長く生きていたのだろうと思う。
となると、もしかしてテントに近い順に倒れていた彼とジーナは先に飛び出したメンバーを追うかどうか迷っていて、遅れて探しに出たのだろうか?しかし、それであればブーツを履く余裕はあったはずなのだ。
また、気になるのは遺体発見のときの損傷の状態がはっきり書かれていないことだ。
リュダだけ舌が無くなっていたのは、彼女���口だけ開いていたからなのか?
空中に飛んだ「光球」の光線で「攻撃された?」と驚き、確認しに飛び出したというシチュエーションも考えられるかもしれない。
面白いのは、唯一途中離脱したユーディンが「当局による脅しで殺された」と考えていることだ。当時の社会や政治を肌で知っている人がそのように感じているのなら、その線は消さないほうがいいのかもしれない。
この本を読んで、私の中ではますます疑問が膨らんでしまった。
とはいえ当時のソ連の様子や、ソ連の大学生の意外ともいえる情熱さ、マンシ族など知らないことが知れて、筆者の体験を追体験でき、内容は面白かった。
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単行本が出たときから気になっていて、やっと読めた。
気になりだしたらとことん調べずにはいられない人の手による誠実な記録でありました。
旧ソ連というだけで、何やら陰謀めいたものを勝手に想像していたことを反省。
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やはり映画作家だからなのか、構成がとてもうまくてパーティーの行程を追体験するような感覚になる。資料写真も多く、彼らの人となりの描写も詳細で、アルバムを見ながら話を聞いているよう。
パーティの行程と当時の捜索の様子と現代の調査が入れ替わり立ち替わり語られていく。著者の生活や、アメリカンジョークというか、ふきんし…陽気さが滲むので、凄惨さの割には暗く沈み込まない。
結末は冒頭に記されているのだが、旅は始まりから不穏。大学生の中に大人が闖入。何と言っても放射性物質の検出が否が応でも国家的な背景を感じさせる。おまけに多数の光球の目撃情報、現地の少数民族、不可解な軍の態度。怪しみだしたらどうとでも言えてしまう。確かなのは9人の若者が無惨な亡くなり方をしていたという事実だけ。
陰謀論からムー的推理からあらゆる推測が産まれていたにも関わらず、彼らの行程を季節を合わせて実際になぞった人はアメリカ人であるドニーだけだった。これが一番偉いと思う。産まれたばかりの息子を置いていってはいるが。
結果と憶測ばかりの情報から真実を取り出す篩は、現場。『サガレン』でも感じた感動をまた得られて嬉しい。現代でなければ分からなかった犯人。自然の脅威を改めて感じた。
極限状態での正体不明の轟音と苦痛。どんなにか恐ろしかっただろう。図らずもイヴァノフの「未知の不可抗力」という表現がこの事故を最もよく表していた。分からないなりに見抜いていたのはさすが捜査官の眼だと思う。