「ごんぎつね」そのあとに
2024/05/12 17:57
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投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
有名すぎる童話「ごんぎつね」が、文芸ミステリーのテーマである。その結末の凄さ、鋭さが心に残り、小学生の国語の教科書に載せることが適切なのかと、問いかけつつ、本物語は進む。元教師による同窓会人質立てこもり事件、SATにより射殺され、事件そのものは解決する。しかし、殺人の企図はなかった事件の謎を追う中で、「ごんぎつね」とその結末があるのではないかという謎が展開する。読み終えて、「ごんぎつね」が救われるような気がするし、読み手は、少し引っ掛かりを感じて、心残りする。でも、よいミステリーだ。
歴としたミステリ
2024/06/01 06:09
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投稿者:ミステリー好き - この投稿者のレビュー一覧を見る
衝撃的な事件で幕を開ける歴としたミステリです。
童話『ごんぎつね』にまつわる史実と思われる裏話(実は違うラストが用意されていたとか)なども織り交ぜながら話が進みます。
70代のミステリ作家による文庫書き下ろし、切なくもとても読み応えがありました。
ラストには、やられました。
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あの「ごんぎつね」にアナザーバージョンがある、あるはずだという導入部は掴みとして充分。読者に衝撃を与えることに100%振り切ったような、あのラストに救いがないのは確かで、しかもそれは新美南吉のオリジナルではなく、鈴木三重吉によるものだと言われれば、南吉ヴァージョンがあってもおかしくないなと言う気が確かにしてくる。主人公のライターによる探索行はリアル。ただ、その分ミステリ的なケレンには乏しい。情報の方からライターの方へやってくる感じで、もう少し自力で謎を解く的な過程が欲しいかな。
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本岡類『ごんぎつねの夢』新潮文庫。
先に読んだ『聖乳歯の迷宮』が面白かったので、新刊の本作も読んでみることにした。
新美南吉の童話『ごんぎつね』を題材に展開されるミステリー。新美南吉が書いたとされる、もう一つの『ごんぎつね』の結末。当時は見えなかった過去の真実が現代に蘇る。
なかなか手の混んだミステリーである。児童文学史の謎と人質立て篭もり事件の犯人の大いなる謎とが巧く融合し、読者に思いも寄らぬ結末を見せてくれる。
15年振りに開催された中学校のクラス会。その会場にきつねの面を被り、散弾銃を持った男が乱入し、同窓生を人質に立て籠もる。駆け付けたSATに射殺された男は中学校の恩師、長門文彦だった。
長門は教え子を妊娠させるスキャンダルを起こし、中学校を辞めて、塾の講師を務めていた。
人質になったクラス会幹事の有馬直人は長門から「ごんぎつねの夢を広めてくれ」という謎のメッセージを託していた。フリーライターの有馬は長門が事件を起こした背景を調べ始める。
次第に見えて来る長門の過去、新美南吉の『ごんぎつね』にまつわる史実、行方不明となったままのかつての同級生が抱える秘密。その全てが繋がり、最後の真実が明らかになる。
本体価格710円
★★★★
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作者の新見南吉への愛が沢山詰まってる気がした。
ゴン狐って結局どうなったんだっけ?といつも思ってたけど、この小説で結末が覚えられそう。
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衝撃的な事件を起こした恩師が残した謎を追う物語。
主人公が取材として恩師の過去を追っていく中で、話がどんどん繋がっていく感じが面白く、すらすらと読めた。
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同窓会に散弾銃を持って乱入してきたキツネの面の男。警察に射殺された男は、同窓会の幹事だった有馬にとって、特別な恩師だった。かつて女生徒を妊娠させた、というトラブルで職を追われた教師が遺した言葉、『埋もれている「ごんぎつねの夢」を広めてくれ』という言葉の謎をめぐって、有馬は新美南吉の、そして先生の人生を辿っていく――。
ということで、童話『ごんぎつね』をめぐるミステリは二転三転しつつ、最後はしみじみとした余韻とともに幕を閉じていきました。前作の『聖乳歯の迷宮』でも思ったのですが、まったく別々のところにあったふたつの点が綺麗に結ばれて、強い余韻が残るのが魅力的であり、印象的でした。ネタバレの問題もあり、すこしぼかした言い方にはなりますが、〈読者〉だけが見る未来に夢や想いを馳せたくなるような、そんな作品でした。
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ごんぎつね のフレーズが懐かしくて、思わず手に取りました。
本当に、こんな背景があったんじゃないかと思えておもしろかった。
子どもの頃、すごく悲しかった結末。ごんぎつねの夢の結末だったら、少し救われて良いなぁ
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同窓会に狐の面を被り散弾銃を持った男が現れるという、衝撃的な始まり。
ただその後の「ごんぎつね」の童話をめぐる謎解きが遅々として進まず、ちょっと後半がダレ気味に。
最後まで読めばなるほど!となり、モヤモヤは一気に晴れやかに。
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ごんぎつね、懐かしい…
ストーリーも面白かったです。
犯人は原稿の中に隠れていた!という帯が最高です。
読み終えて表紙の奥深さが分かりますね。
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ミステリーでありながら、人の心の様々な面が表されていて、非常に興味深い小説。
本岡類さんの他の本も読んでみたくなる、不思議な読後感を感じてます。
ありがとうございます。
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絵本で、昔、「ごんぎつね」の絵本を子供と読み聞かせたのだが、最後の最後結末に、納得が行かず、優しいキツネさんだったんだね!と、子供に言い聞かせた。
この本は、その最後のシーンから始まる。
そして第一章の幕が開くだが……
、
中学を卒業して、15年ぶりのクラス会。
楽しい集いになるはずが、突然の散弾銃を持った狐マスクの男が、現れる!!!
そして、その男は、かってのクラス担任であった。
そして、立てこもり犯人は、射殺という結末に。
ここから、話が、ごんぎつねへと、続いて行くのだ。
幹事であるフリーライターの有馬に託された遺言内容。
不可解なメッセージから、一つずつ謎を解いて行く。
ごんぎつねの作者 新美南吉の生涯も 紐解いて行く。
そして、担任だった長門の生涯や、女子生徒を妊ませた事の事実無根だったことなども、踏まえて、進んでいく。
宮沢賢治との比較もあり、母親に対する愛情についても、機微な感情を書き表している。
伏線として、高齢者専用の便利屋を有馬が、行って、死期の迫る老人の描写も、孤独感に目を向けている。
ごんぎつね最後に、違うバージョンがあれば…という結末に
そして、
『ありがとう、みんな』に続く文字に、よく構想を練った作品だった!
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誰もが読んだことのある「ごんぎつね」をモチーフに
新美南吉を調べに調べ
愛を持って描かれた作品だと思う
私は宮沢賢治ファンなので
同時代の新美南吉に
がぜん興味が湧いたし
「赤い鳥」についても
そういう経緯があったこと
とても興味深かった
最近
原作と脚本と実写化の問題があったので
改稿することの是非について
とても考えさせられた
鈴木三重吉の改稿がなければ
「ごんぎつね」はもっと違っていたし
ここまで心に残る作品になっていなかったかもしれないし
でもそれは新美南吉にとっては
不本意だったかもしれないし
ファンからしたら
なおさらかもそれない
ifを膨らませた作品という感じ
物語というより
新美南吉に再会させてくれたことに
感謝
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クラス会に散弾銃を持った狐面の男が乱入してきた! SATによって射殺されたその男の正体は、なんとクラス会を欠席すると返信してきたはずの元担任、長門だった。
長門から「ごんぎつねの夢を広めてくれ」というメッセージを受け取った教え子の有馬は、その真意に迫ろうとする……というお話。
刺激の強い出だしとは打って変わって、全体を通して渋めなお話。文体がやや古いこともあり、想像していたよりは淡々としていたが、最後まで面白く読めた。
現在有名になっている「ごんぎつね」のお話は、鈴木三重吉がかなり手直しをしたもので、新美南吉自身が書いていた結末とは異なるのだそうだ。
私自身は、「ごんぎつね」がむやみに残酷だとは思ったことも、あの結末に不満を持ったこともないので、長門や主人公の有馬にはあんまり共感できなかったんだけど、作中登場する「ごんぎつねの夢」もそんなに悪くはないと思った。ただし作品の完成度は下がって、平凡な童話になるだろうという気もした。
ちょっと面白いなと思ったのは、宮沢賢治と新美南吉の情景描写の比較で、宮沢賢治は描写はすごく凝っているがゆえに読者にも想像力を要求するが新美南吉はシンプルな描写で誰でもスッと心に入ってくる、というくだりだった。
宮沢賢治についての言及はまさに先日まで読んでいた飛浩隆の『零號琴』に感じたことで、SF的なもの、空想世界にしかないものを描こうとするとどうしてもそうなっちゃうんだよな、などと思ったり。
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新美南吉に心酔する元教師が、テロを企て倒れるが、その教え子が残されたメッセージから謎を探っていく物語。少し伏線の張り方がぎこちないかなと思った。