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電子書籍
三十すぎのぼたん雪(新潮文庫) 新着
著者 田辺聖子
もう無邪気ではいられないけれど、大人にもなりきれていない。そんな中途半端な年頃には、恋との距離も微妙になる。はじまりかけた恋への期待に、苦い記憶がそっと忍び込んでくる。心...
三十すぎのぼたん雪(新潮文庫)
三十すぎのぼたん雪 改版 (新潮文庫)
商品説明
もう無邪気ではいられないけれど、大人にもなりきれていない。そんな中途半端な年頃には、恋との距離も微妙になる。はじまりかけた恋への期待に、苦い記憶がそっと忍び込んでくる。心が触れ合ったと感じた瞬間に、哀しい予感が静かに満ちてくる。たのしさやときめきの裏側にある、ものさびしさとやるせなさをしみじみ描く。恋愛小説の達人ならではの、心に優しく沁みる佳品9篇。
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紙の本
思わず笑ってしまいます。それなのに、せつなくてデリケート。
2010/12/16 21:54
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:きゃべつちょうちょ - この投稿者のレビュー一覧を見る
田辺聖子の小説は、上質なユーモアに包まれている、
という印象がとてもつよいけれど、
これはとりわけ笑える話が多い。
主人公はほとんどが30代の独身OL。
いわゆる当時のハイミスたちである。
最初の「いま何時?」は本書14ページの終わり近くから
吹き出してしまった。
独身OLがひとりの旅先で行うささやかなたのしみ。
タイトルに込められた真意。
主人公の飄々とした感じと、ずれ加減の塩梅がいい。
「るみ子の部屋」
散らかし魔のるみ子の部屋を片付けるのは
同居している友人の【私】である。
ある日、部屋でとんでもないものを発見してしまった【私】は
妄想と好奇心を抑えきれなくなり、るみ子に釈明を求める。
表題作「三十すぎのぼたん雪」は、
粋なのに笑えて、ちょっとせつなくて、
読み終わるとしみじみとしてしまう。
暴走する女を冷静な女が描写するが、その底には
ほんわかした愛情のようなものが流れている。
その客観的でやさしい目線からは
多くのものを受け取ることができる。
こんなふうにキャパをひろげられたら、いいなぁ。
婚活女子の奮闘(?)ぶりを描いた「風穴」、
縁というものの不思議さが語られる「偕老同穴」の2編は
この中ではシリアスなものだと思われるが
それでも笑わせるシーンがしっかり用意され、
主人公たちは決して苦悩に押し潰されない。
他の本で読んだ田辺聖子の言葉に、
『バカは深刻なのが好きだ』というのがあった。
すこし耳に痛い気もするけれど、なんて的を得た表現なのだろう。
どれだけ見方を変えられるか、どれだけじぶんを批評できるか、
苦境のときにどれだけ笑うことができるか、
というのは、最高のユーモアなんだろう。
短編集「三十すぎのぼたん雪」は、
皮肉さえも笑いに変えてしまう作者の力量に、
改めて感心してしまう一冊だった。