水の時計 みんなのレビュー
- 初野 晴
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紙の本水の時計
2010/05/14 22:11
湖面に湛えられた月のように
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:伊織 - この投稿者のレビュー一覧を見る
読後、ストーリー的には違うんですが、内包している雰囲気が断片的にですが、浅倉卓哉さんの「四日間の奇蹟」に近いものがあるなぁと感じました。
「脳死」、「臓器移植」という重たく、そして繊細なテーマを扱いながらも冒頭に出てきたオスカー・ワイルドの「幸福の王子」の持つ物語のイメージを壊すことなく、むしろそれを使うことによって「幸福の王子」と「水の時計」という両書を見事に際立たせています。
どちらも死ぬことなく、活かされていてあっちを思い出せばこっちも一緒に思い出してしまう、そんなイメージでしょうか。
見事に重ね合わせながら進んでいく展開は秀逸です。
そして主人公・すばると葉月との関係といった謎が散らばっていて、ミステリーとしても読めはするんですが、これも前出の「四日間の~」と同様に薄めの味付けになっています。
オムニバス形式の構成で、作中の人物たちがそれぞれに背景となるものを抱えていて読ませられます。
欲を言えば、すばるが運び屋をする運搬シーンを盛り込んで欲しかったですね。
せっかく冒頭部分で特殊な機械を使うというような説明があったので、尚更です。
何箇所か引っかかったりする部分もありましたが、惹きつけられる作品であることに変わりはありません。
全体的に幻想的でそれこそ湖面に月を湛えたような、静かだけれども印象に残る作品でした。
すばると葉月が痛々しい。ツバメの巣の描写の意味を考えると…。
この本に興味を持たれて読んだ方は是非、その意味を考えてみてください。
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