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紙の本ナイフ
2001/06/28 21:41
いじめられている側の視点に立つといじめている側が惨めに思えてくる
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:菅野 - この投稿者のレビュー一覧を見る
いじめをあつかった短編が5編。中でも『ワニとハブとひょうたん池で』が好編であった。
いじめ行為、具体的にはハブ(村八分にすること)に対して、いじめられていると認めないことが少女のプライドだった。いじめられていることを教師や親に知られることは、自分がかわいそうで惨めであると認めることになってしまう。いじめと真っ向から戦うことでいじめを行っている者たちを喜ばせるのでもなく、ハブを群集の孤独のような当たり前のこととして、クラスメイトに対して親しくすることを求めないことによって、いじめ側の子供たちが幼く、卑屈で惨めで情けない生き物にしてしまう。実は、いじめている側の方が精神的に弱く、群れからはぐれることを恐れるあまりに卑屈になる。むしろ、少女により追い詰められていたのはいじめ側だったのだろう。やがて、いじめ側の子供たちの少女に対する態度に少し恐怖が見えてくるあたりが胸がすく。
いじめによる自殺は後を絶たないが、死んでいく子供たちは精神的に脆く、登校拒否する度胸すらもなく、孤独を恐れ、くだらない連中の群れに卑しく残るためにいじめに甘んじてしまう。だから、いじめの対象が変わって自分がいじめられなくなると率先していじめに荷担する。つまり、いじめに荷担する側になり損ねただけなのだろう。いじめられることよりも孤立することを恐れただけの卑しく惨めな精神の持ち主だっただけなのだ。だから、いじめによる自殺に対してはあまり同情しない。
他には、父親と息子がいじめと対決する決意をするまでに至る経過を描いた『ナイフ』、育児のために仕事を辞めて家庭に入った元高校教師の妻と娘の担任教師の確執を軸に夫婦の間のいじめを描いた『ビタースィート・ホーム』など、いじめられている側の視点に立つといじめている側が惨めに思えてくる。
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