モテたい理由 男の受難・女の業 みんなのレビュー
- 赤坂真理
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2008/04/29 14:27
戦争とアメリカと私
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:けんいち - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『蝶の皮膚の下』や『ヴォイセズ/ヴァニーユ』などの小説の書き手として想像されるものとも、あるいは「モテたい理由」というタイトルから連想されるものとも、ずいぶんと異なり、作家+タイトルという書物の外貌がもたらす期待を(よい意味で)裏切ってみせる、その存在自体からしてすぐれて「批評的」な新書といってよい。というのも、女性のセクシュアリティを前景化した現代小説の書き手である赤坂真理が、「モテたい理由」を書く以上、ある程度、現代文化を素材に、自身の小説のメカニズムやその風俗性に言及した、いわば創作ノート的なエッセイが、さしあたりは想像しやすいからに他ならない。しかし、本書は、冒頭、男女の現代的な様相に軽くふれただけで「戦争」の話が展開されていく。本論とでも呼ぶべき本書の大半では、主に女性誌の見出しや記事を手がかりに、現代の消費社会を分析していくが、それは、俗にいう「モテる/モテない」の話には到底収まりきらない。単に、そこに男女をめぐる今日のイデオロギーが指摘されるばかりでなく、その鋭い筆致は、その構造的な要因が縦横に探られていく。この時タテ軸とは日本の過去の歴史であり、ヨコ軸とはアメリカという存在、アメリカとの関係である。こうした射程に鑑みれば、終章が「戦争とアメリカと私」と題され、本書をひもとく前に想像しがちな軽いイメージなどどこにも見出せないことに不思議はない。だから本書は、軽薄なタイトルを関し、女性誌を主要な分析対象としながら、赤坂真理が自身の半生を振り返りながら、実存的にこの国/この国の国民に警告を発した、重厚な思想書なのだ。こうした書物が、新書というパッケージで、軽薄なタイトルを付されて流通していくこと、そうしたアイロニカルな現実とともに、本書はその「批評性」をていねいに掬い上げながらよむべき、実に政治的な書物なのだと行ってよく、この地点から赤坂真理の小説を読み返す手がかりさえ見えてきそうでもある。
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