理系バカと文系バカ みんなのレビュー
- 竹内薫, 嵯峨野功一
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紙の本理系バカと文系バカ
2015/12/19 00:32
「理系側の視点」を脱し切れていない。他書からの引用が多めで、情報の独自性に欠ける。
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投稿者:Spanish moon - この投稿者のレビュー一覧を見る
全5章からなるこの本は、第1章で文系人間と理系人間に関する様々なステレオタイプを面白おかしく紹介し、第2章で一応の文系論・理系論を展開するも第3章・第4章においては「日本は理系人間が育ちにくいのか」などと銘打って結局「理系側」の立場から社会評論を展開するという構造になっている。オマケ的に付された第5章は、「文系の人間は科学書やSFに親しもう。理系の人間はもっと“文系的センス”を磨こう」などという、ありふれた自己啓発書のような本当に下らない内容になっているが、本全体の内容を鑑みるにこの章は本題ではないらしいから無視してよい。
おそらく本書のメインであろう第2章から第4章は、後ろへ読み進めるにしたがってどんどん話題が理系中心になっていく。文系に属する読者からみれば取り残されたような気分がするであろう。特に第4章は、観点がやや文系蔑視に陥っているように見受けられる記述が散見される。「文系の人間は理系に対してコンプレックスを抱いている」という前提が、おそらく竹内氏にはあるのだろう。第1章で「文系人を見下す理系人(理系バカ)がいる」と指摘し、「触らぬ理系バカに祟りなし」とまで言い切った竹内氏こそが、まさしく「理系バカ」なのではないかと疑われる。
文系の人間からみれば、べつに理系特有の事情になどさして興味はないし、べつに理系に対してコンプレックスもないから余計なお世話だと思われているかもしれない。逆に理系の人間のほうが、文系にコンプレックスを抱いているのかもわからない。いずれにせよ、どうも竹内氏の視点は、公正さを欠いているように思われてならない。もう少し中庸的態度で、ちゃんと文系側の事情も綿密に取材したうえで本を書こうとは思わなかったのだろうか。
取材不足でオリジナルな情報が少ないという点で、星一つ。次からは、ご自慢の文系的スキルとやらを遺憾なく発揮して、他書からの引用に終始するのではなく自分の足で歩きまわって集めた情報で本を書いてほしいものだ。
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