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靖国戦後秘史―A級戦犯を合祀した男 みんなのレビュー

  • 毎日新聞「靖国」取材班
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紙の本

靖国問題の本質とは

16人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:良泉 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 小泉・安倍と続いた靖国史観は完全に否定された。あまりにも急激な右より路線に対し、有権者は明確に否定の意思表示をした。
改憲を支持する人の中にも、安倍前首相の元での急激な改憲の動きには危機感を持っていた人が多くいた。このことは、政権の持つ本質的な“危なさ”をよく物語っている。
小泉・安倍がどうしてもこだわった靖国とはいったい何なのだろう。単なる宗教施設の域をはるかに超えた存在となた靖国には何が潜んでいるのだろう。
靖国は今や象徴となっている。右側陣営にとっては、「守るべき象徴」である。とにかく、靖国を守り抜き尊重することが、自分達の主張を正当化する一助となる。逆に左側陣営にとっては「責めるべき象徴」となっている。靖国を否定する。靖国の論理を破綻させることが、自分達の運動を活性化させる。
昭和天皇が靖国に参拝しなくなったのは、靖国にA級戦犯が合祀されたことに対する暗黙の批判であった、といった報道が飛び交った。今は亡き昭和天皇の心の中は、もちろん誰にもわからない。しかし、昭和天皇がA級戦犯が合祀された靖国への参拝を嫌ったと言う事象のみをとらえて、昭和天皇をことさら平和主義者として色付けようとする、見え透いた脚色には、嫌悪をもよおす。
本書で追求されるA旧戦犯の合祀とは何だったのか。しかし、そもそも靖国の問題は、A級戦犯合祀なのだろうか。靖国問題の本質には、もっと大きなものがあるような気がする。
「靖国で合おう」と言い合って死んでいった多くの若者達を死ぬまで騙しつづけた虚偽虚飾。最愛の夫や子供の戦死を「靖国への合祀」で無理やり納得させられ、沈黙させられた妻や母親達の、持っていきようのない無念。
戦場で死んでいった一兵卒まで有無を言わさず合祀することで自身が成り立ってきた靖国。
小泉・安倍政権の否定と同時に、そろそろ靖国も一度、解体される必要がある。その上で、一つの宗教団体として存続するのであればそれでもよい。もちろん、その場合は、合祀を強制するようなものではなく、政教分離原則にのっとった組織として。

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