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商品説明
建築家イソザキアラタは、近代建築の巨匠ル・コルビュジエから何を啓示されたのか。30年以上にわたる著作の軌跡を辿りながら、そのコルビュジエ体験の真髄と愛着の原像を余す所なく収録する。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
磯崎 新
- 略歴
- 〈磯崎新〉1931年大分県生まれ。東京大学数物系大学院建築学博士課程修了。建築家。講演・シンポジウム・美術展等、多彩な活動を展開。著書に「空間へ」「建築の解体」ほか。
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紙の本
日本経済新聞2000/4/9朝刊
2000/10/21 00:17
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:飯島 洋一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
これまでに発表したコルビュジエ論を集成した本書において、著者の磯崎新は繰り返してひとつのことを語り続けている。それは一九六五年の夏に起きたル・コルビュジエの死だ。
近代建築の巨匠、ル・コルビュジエは、南仏のカプ・マルタンの海岸で遊泳中に溺死した。それはもちろん唐突に訪れた一人の老人の死であるが、別の角度から見るともっと象徴的な意味合いを持つ出来事だった。というのも、ル・コルビュジエとは近代建築の代名詞のような存在であり、それが唐突に死を迎えたことは、言うなれば近代建築そのものの死が示唆されたともいえるからである。
事実コルビュジエの死からわずか三年後の、一九六八年のパリ五月革命にはじまった「近代の死」という宣告を、私たちは世界的な広がりの中で目撃することになる。いま思えばそれは新しいポストモダンの始まりを指し示す事態だったわけで、近代建築を主導したコルビュジエの六五年の溺死は、その時間的な流れの中での奇妙な符号の一致を見せるのだ。だからこそ、コルビュジエに強い影響を受けながらも、ポストモダンの先導者となった著者にとって、その死の日付はいまだに重要なものとなっている。
しかし急いで加えるならば、いま著者の磯崎がコルビュジエについて問い直す理由は、ただそれだけにあるのではない。コルビュジエの死からさらに三十年以上の歳月が経ち、私たちはポストモダンの終わりすらもすでに経験してしまったからである。そしてそのあとに一体何をはじめればいいのか、それがまったく見えて来ない時代にいる。
著者がなぜいまこの本で「ル・コルビュジエとはだれか」、「近代とは何だったのか」と問うのか、その理由もまさにその先行きの不透明さに関っている。それゆえ本書は単に一人の巨匠をめぐる論というのではなく、先の見えない私たちの現在をめぐっての、さらなる考察を要求する一冊であるにちがいない。
(C) 日本経済新聞社 1997-2000
紙の本
L・Cブームの反復と差異
2003/10/17 18:24
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:脇博道 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ル・コルビュジエ(以下L・Cと略する)のブームは尽きることなく
続く。現時点でも、そのブームは十何回(何十回?)目の時期に当た
るといってもよいと思われる。磯崎氏の本棚にも、現在、L・C自身
の著作の原本及び翻訳が数十冊、研究書の類はその同数以上も並んで
いるという。20世紀を代表する建築家は、ほぼミースとL・Cにし
ぼられつつあると、本書にも記述されているが、まさしくその両極の
1人であるL・Cについて、氏が長年に渡り追跡してこられた成果が
本書に収録されている。
さて、幾多の研究書及び論考が存在するとはいえ、研究書の中で最も
重要かつ後代に大きな影響を与えたものは、おそらくコーリン・ロウ
という偉大なる建築史家が書いた「マニエリスムと近代建築」所収の
理想的ヴィラの数学、なる論考であると思われるが、1人の卓越した
建築家(勿論ここでは磯崎氏をさす)が、ずばり本質を見抜いた決定
的な論考としては、本書所収の、海のエロス、という文章であろう。
この文章は、磯崎氏が、自ら体験し、感知した、L・Cのラ・トゥー
レットの僧院、の空間的インパクトとその意味について書かれたもの
であるが、これほど、L・C建築の論理性と官能性という相対するイ
メージを、ひとつの文章に記述しつつ見事に昇華させた例は、ほかに
は存在しない。ぜひ一読して頂きたい名文である。
私にとってのアクロポリス、という素晴しい文章も収録されている。
L・Cに大いなる感動を与えたという廃墟としてのアクロポリスの
イメージと、氏が原風景として保持し続ける廃墟(これは必ずしも
アクロポリスに限定される訳ではないのだが)のイメージがスーパ
インポーズされて、これも他に類を見ない独創的な論考となってい
る。昨今の廃墟ブームの在り方とは一線を画すイメージが感得でき
る論考である。
L・Cの代表的作品のエッセンスを切取ったかのようなショットと
解説文が見開きに配された、ル・コルビュジエの仕事、と題された
最終章は、これだけでも、L・Cのデザインエッセンスを把握でき
うる、密度が非常に濃い章である。
本書をひもとくことにより、ル・コルビュジェとはだれか?という
難問に関する、ひとつの明解な答えが見えてくるおすすめの一冊で
ある。