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日本史から見た日本人 昭和編 「立憲君主国」の崩壊と繁栄の謎 (祥伝社黄金文庫)
日本史から見た日本人・昭和編
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紙の本
第五次国体変化への道程
2004/05/08 08:06
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:吉田松陰 - この投稿者のレビュー一覧を見る
渡部氏の定義に従えば我々は現在、第五次国体変化後の世に生きていることになる。第五次国体変化とは「敗戦とマッカーサー憲法」のことであり、この本は敗戦に至る過程を解き明かすことに主眼を置いている。
大局的に見ると第二次世界大戦は人種差別、宗教差別、植民地主義、(共産主義を含む)全体主義がもたらしたカタストロフィーであったが、戦後処理にも多くの問題が見受けられる。これら戦前の諸問題、そして戦後処理がもたらした諸問題は現在、平成の世に生きる我々にも「直接」引き継がれているのであるから、著者が昭和天皇のご病気に際して自分なりに昭和史を総括したように我々もまた昭和という一大転換期に対して真摯に向き合う必要がある。
日支事変及び日米開戦に於る日本側の問題は一言で言うと、行政が軍部を(上層部から中級将校に至るまで)統率することが出来なくなったことにあり、それは明治憲法の欠陥に由来する。その点はマッカーサー憲法では是正されているのだが、元来、日本弱体化を主眼に起草されている上、急ごしらえである。「不磨の大典」とされた明治憲法の、起草時に誰も気づかなかった欠陥が日本を戦禍に導いたように、将来マッカーサー憲法が日本に破滅をもたらす恐れもある。
現在の第六期ともいうべき国体の得失について多くは語られていないが、統帥権干犯問題は是正された。世界に目を向けると、人種差別は随分軽減された。自由貿易が主流となった。共産党は信頼を失った。宗教問題は残っているが、戦前日本が苦慮した問題は中国共産党を除いてことごとく改善されている。「戦前の世界が戦後の世界のようであったならば、日本が戦争に突入する必要はなかったであろう」が、これは、日本の敗戦によって日本が支那大陸で果たしていた役割をアメリカが引き継がざるを得なくなったことと、日本軍の奮闘によってアジア諸国の独立が促進されたことが大きく影響している。日本の敗戦は決して無駄ではなかった。
しかしこの「昭和編」、「古代編」「鎌倉編」とは対照的に、頁をめくるごとに歯がみさせられる。
紙の本
「統帥権干犯問題」を軸とする一つの読解法
2003/10/11 23:46
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:北祭 - この投稿者のレビュー一覧を見る
昭和史には謎がある。なぜ大東亜戦争などしたのか。当時の日本のリーダー達だって、日本と英米の国力差くらい分かっていたはずである。どうも昭和になるとわけのわからないことが多すぎる。—著者は、こんな疑問を40年間も頭でこね回していた。そして“日本がおかしな行動を取り出すのは昭和5年を堺にしていること”に気付いたのだという。では昭和5年に何があったのか。
—統帥権干犯問題があったのである。p.9—
「統帥権」とは軍隊の最高指揮権のことである。明治憲法・第十一条の天皇大権は「統帥大権」、第十二条の天皇大権は「編成大権」と言われていた。つまり、行政・立法・司法の三権分立に加えて軍部は別だとする四権分立ということが可能となる。「編成」は予算が絡むので内閣や議会から完全に独立はできないが、「統帥」となれば軍の作戦そのものであって政府や議会とは関係なくやれることになる。
ロンドン条約(昭和5年)で日本の軍艦が削減されることになると、軍人の中でこれに反撥する者が出た。軍縮の条約を政府が結ぶとはなにごとか—これは統帥権の干犯だ—というわけである。とんだ屁理屈だと著者はいう。しかし、軍部が勝手にやり出す昭和の悲劇がここに始まる。
明治憲法に“致命的欠陥”があったのである。なぜそのような憲法になったか。著者は当時の憲法を作った人たちの事情、その後の成り行きを緻密にかつ明快に解いていく。
さらに「統帥権干犯問題」は3つの外圧によって噴出したという。
その外圧とは、第一に「アメリカの日系移民排斥問題」である。日本は、これによって人種的に徹底的な差別を受けていることを知らされる。これには従えぬという国民感情が出た。
第二に「アメリカの保護貿易のため、世界中が底なし不況に陥ったこと」である。イギリスなどのような広大な植民地を持つ国はブロック経済圏を作ることとなる。この様な状況で日本はどうなるか。その一方、大不況はマルクスの予言を証明するごとくであった。日本では、天皇を戴く社会主義・共産主義が軍官僚や新官僚に浸透しだした。
第三に「シナ大陸における度重なる排日・侮日運動」である。これによって非帝国主義的な幣原外交が不可能となった。
本書は数多ある大東亜戦争突入の謎についての「統帥権干犯問題」を軸とする一つの読解法といえる。“明治憲法の欠陥”が時代の推移と共に“制定趣旨”を越えて国家迷走の要因となった。この歴史解釈の波紋は、今の日本にとって憲法というものが如何にあるべきなのか改めて問う高波となって押し寄せる。