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紙の本
知的財産法に関する深い理解を得られる良書
2007/05/27 17:32
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちかげ - この投稿者のレビュー一覧を見る
知的財産法の権威である中山信弘先生の執筆によるものです。
まず、この本の構成としては知的財産法の意義や重要性から各国の制度との比較、また特許権の生成過程からその運用や侵害に対する救済方法等までが幅広く記載されています。つまり、この本を最初から最後まで読むことで、特許法に関する知識がひととおり身に付くように構成されています(もっとも、この点は本書が知的財産法の基本書である以上、当然といえば当然なので特筆するほどのことでもないのかもしれません)。
本書の内容上の特徴として特筆すべきことは、まず第一にその論述の厚さにあると思います。本書は知的財産法に関する基本論点について一通り解説してあるのですが、特に重要な問題点については、学術論文に匹敵するくらいのスペースを割いて解説が加えられています。判例の引用や注釈書の引用も豊富なので、「本書を読みながら隣で判例集を調べる」といった負担も少なくて済むのではないでしょうか(もちろん、学習態度として常に判決原文にあたることが望ましいのは言うまでもありませんが)。また第二に本書は前述のように知的財産法の権威である中山先生の執筆によるものだけあって、近年の知的財産制度改革に関する問題意識を強く滲ませる内容となっています。例えば、損害論の箇所ではそれまで日本の損害賠償理論では考えられてこなかった懲罰的賠償的な視点が示されていますし、また紛争の一回的解決の見地から裁判所が特許の有効・無効についても判断してしかるべきではないのかという視点等も示されています。これらは、実際に知的財産制度改革に携わってきた著者だからこそ示すことのできる視点ではないでしょうか。
これに対して本書の欠点としては以下の点を挙げることができると思います。まず何と言っても本書は平成12年の出版によるものだけあって最近の法改正や判例に対応していないという点が挙げられます。第二に、上記でも指摘したように本書は他の基本書と比較して論述の厚さが充実しているのですが、それは裏を返せば「初学者にとってはとっつきにくい」という風に言うこともできます。特に本書では折に触れて民法等の他の法概念と比較することにより知的財産法の輪郭を明らかにするという手法が用いられているのですが、これらの論述は法学に関するある一定程度の学習をした人でなければ理解し辛いかもしれません。
本書には上述のような特徴(もちろん他にもありますが、字数の都合上省略させて頂きます)がありますが、上記二点の欠点さえ認識したうえで本書を読めば、知的財産法に関する深い理解を得ることができる良書だと思います。