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商品説明
好転するかに見えて逆戻り、の振り子現象の北方領土問題。主にゴルバチョフ、エリツィン時代の日ソ・日露関係を綿密に分析、問題の所在を明らかにし、解決策を探る。21世紀日露新時代への提言。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
長谷川 毅
- 略歴
- 〈長谷川毅〉1941年東京都生まれ。ワシントン大学で歴史学博士号取得。カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授。著書に「ロシア革命下ペトログラードの市民生活」がある。
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紙の本
日本経済新聞2000/5/14朝刊
2000/10/21 00:17
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:江頭寛 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ロシアのプーチン新大統領の八月来日が決まったが、日ロ関係は懸案の領土問題の解決、平和条約の締結に見通しがつかない状況に陥っている。このような時期に出版された本書は日ロ関係の歴史を「不毛な北方領土の固定観念」にしがみついて両国和解の機会を逃がし続けたものととらえ、日本側に発想の転換を呼び掛けている点で、新鮮な印象を与える。
構成は北方領土問題の起源を第一部に、第二、第三部でゴルバチョフ時代、エリツィン時代の日ソ、日ロ交渉の経緯を詳細に分析している。改めて北方領土問題とは第三国の思惑も投影された国家間の権謀術数のドラマであったことがよくわかる。
たとえば本書の特徴として、ソ連が北方領土を占領するに至る米国とのやりとりが、米国の内部資料を引用してかなり細かく紹介されている。そして冷戦時代の米国の思惑が、日本とソ連の領土問題解決をはばんだ要因の一つだったことが指摘されている。
しかし分析に力が入れられているのはゴルバチョフ、エリツィン時代の日ソ、日ロ交渉である。冷戦の終結で国際政治の座標軸が変化したのに、北方領土問題は過去からの惰性に支配され、解決の機会を失した、という著者の視点がここで明確になる。
ゴルバチョフ書記長誕生直後に会談した中曽根首相(当時)はじめ、二国間関係打開に自己の政治的野心と責任をかけて挑んだ政治家たち、そして外交の主導権を維持するために、それをけん制し、利用する日本外務省の思惑と行動が活写されている。外務省に対する著者の批判は時として厳しいが、建設的な視点を忘れてはいない。
橋本・エリツィンのクラスノヤルスク合意以降の日ロ関係分析にややもの足りなさは残るが、総じて著者の独自の視点は日本の対ロ関係者に多くの示唆を与えているようにみえる。北方領土問題の解決に必要な日本国内の論議もまだ尽くされているとはいえない。
(C) 日本経済新聞社 1997-2000