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商品説明
【サントリー学芸賞(第22回)】21世紀の日米安全保障協力のあり方を考えるための準備作業として、日米間の「物と人との協力」という基本構造がどのように誕生し、確立したのか、その歴史を戦後初期の日米関係の中で振り返る。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
坂元 一哉
- 略歴
- 〈坂元一哉〉1956年福岡県生まれ。京都大学大学院法学研究科修士課程修了。三重大学人文学部助教授等を経て、現在、大阪大学大学院法学研究科教授。
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紙の本
日本経済新聞2000/6/4朝刊
2000/10/21 00:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:伊奈久喜 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日米安全保障体制の形成過程は、外交史としての研究対象の領域に入ったのだろう。本書は、サンフランシスコ講和条約とともに一九五一年に結ばれた旧安保条約、六〇年の現行安保条約がどうできあがったかを日米双方の文書を丹念に調べた結果をもとに考察した労作である。
占領軍による戦後日本の非武装化、憲法、それに逆行する方向で深まる冷戦状況のなかで日米の当局者は、日本の政治情勢や世論、米国の軍事的要請を背景に意見をぶつけあった。多くは、日本が基地、米国が軍隊を提供するという安保体制の「非対称な相互性」のためだった。
学問的な意味もあるのだろうが、それだけでなく、本書は読み物として面白いのも確かである。安保条約の条文を読んだことのない一般の読者にとっては、いくつかの意外な事実に驚かされる。
例えば、現行の安保条約第一〇条に「この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本政府及びアメリカ合衆国政府が認める時まで効力を有する」とある。旧安保条約第四条の類似の条文を継承したものであり、五〇年代初頭の日米双方の国連観がうかがえる。
冷戦の深まりは、日本の再軍備を必要とさせ、憲法第九条が障害とされた時期があった。米統合参謀本部には改憲が実現するまでは講和交渉はすべきでないとの研究結果もあったという。時期は違うが、鳩山政権のもとで対米自立外交を進めようとした重光葵外相は対米交渉で現行憲法下でも海外派兵が可能との見解を述べたという。
安保問題は国際問題でもあり、内政問題でもあった。程度は違うかもしれないが、それは今も変わっていない。吉田流の対米協調路線と鳩山流の対米自立路線の二つの流れは、様々な形で混じりあいながらも、現在に至っている。総選挙の結果できる政権は、どちらの色合いを濃くするのか、それは憲法論議や日米関係をどう展開させていくのか。そんなことも考えさせられる。
(C) 日本経済新聞社 1997-2000