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海の文明ギリシア 「知」の交差点としてのエーゲ海 (講談社選書メチエ)
著者 手嶋 兼輔 (著)
ギリシアは常に海とともにあり、エーゲ海という世界のどこにもない海との出会いが、自由で若々しい文明を生み出した。クレタの躍動、マケドニアの栄光など、比類なき海に育まれた文明...
海の文明ギリシア 「知」の交差点としてのエーゲ海 (講談社選書メチエ)
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商品説明
ギリシアは常に海とともにあり、エーゲ海という世界のどこにもない海との出会いが、自由で若々しい文明を生み出した。クレタの躍動、マケドニアの栄光など、比類なき海に育まれた文明のドラマを描く。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
手嶋 兼輔
- 略歴
- 〈手嶋兼輔〉1946年神奈川県生まれ。北海道大学文学部大学院言語学研究科博士課程修了。北海道工業大学助教授を経て、現在、東北芸術工科大学教授。
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紙の本
ギリシア人とその文明を生んだエーゲ海を舞台とする古代世界の大スペクタクル
2000/07/10 20:49
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投稿者:大笹吉雄 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ギリシア文明に関する著作は、古今東西、それこそ枚挙にいとまはない。改めてそれについて語る時、屋上に屋を重ねるのではなく、どういう新しい視点を導入出来るか。
ギリシア文明について書こうとした時、まず著者の頭をよぎったのは、このことだったに違いない。そしてここから割り出されたのが、「『知』の交差点としてのエーゲ海」というサブタイトルに要約される「窓」だったと思われる。もしギリシア人がエーゲ海と出会わなければ、ギリシア文明は発生しなかったのではないか。仮にそういうことがなかったら、ギリシア人という民族自体が誕生しなかったのではないか。
本書はこういう視点で貫かれていて、ある意味ではエーゲ海が主役である。このことが選書というスタイルを超えるスケールを本書にもたらし、同時に文明の、歴史のダイナミズムを生き生きと伝えることに成功した大きな要因になっている。
それにしてもと驚くのは、エーゲ海を舞台にした紀元前の一大ドラマの、激しい主役の入れ替わりである。本書はそれを四幕もののドラマに見立て、簡潔にポイントを叙述していく。すなわち、序章「河の民エジプト」のエジプト人とエジプト文明、第一章「クレタの春」のクレタ人とクレタ文明、第二章「イオニアの夏」のギリシア民族の誕生とギリシアの精神、第三章「アッティカの晩夏」のアテナイとペルシアとの確執、第四章「マケドニアの秋」の異端のギリシア=マケドニアのあり方、終章「陸の民ペルシア」のマケドニアとペルシアとのかかわり。
エーゲ海をめぐる舞台の主役がくるくると変わるのは、人間が、民族が移動するからである。人間のこのエネルギーをクローズアップしているのも本書の特色で、ギリシア人とギリシア文明の誕生もこのことによる。
「インド・ヨーロッパ語族に属する集団」がある時期、移動を開始する。「東はインド、イラン方面、西へはアナトリアからヨーロッパの各方面に向け、その集団はそれぞれの新天地を求め、分散していく。後に、ペルシア、ギリシア、ラテン、ケルト、スラブ、ゲルマンと呼ばれるようになる民族は、その時の大まかな集団の各部分が最終的に定着した地域に名づけられたものだ。……ギリシア人は、ユーラシアからの長い移住を通して『ギリシア人』になっていったわけではない。その最終段階としてのエーゲ海との出会いが、その集団を『ギリシア人』に創りかえていった。ギリシア人はエーゲ海によって創造された民族なのだ」
この把握の上に、エーゲ海周辺に住むギリシア人と、他の諸民族との差異や類縁性をさぐる。興味深い一点は、ポリスを「都市国家」といい慣わしていることへの異議申し立てと、それが決してギリシアの特産品ではなかったという指摘だが、とまれ、「ギリシア世界」への恰好のガイドブックとして、本書は十分推薦するに値する。 (bk1ブックナビゲーター:大笹吉雄/演劇評論家・大阪芸術大学教授 2000.7.11)