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商品説明
汽車をこよなく愛した鉄道ジャーナリスト竹島紀元が、鉄道と社会の接点を掘り下げ、緻密な分析の上に立って、将来の鉄道のあり方を問う、紀行文、随筆、ルポなど18作品を収録。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
竹島 紀元
- 略歴
- 〈竹島紀元〉1926年福岡県生まれ。(株)鉄道ジャーナル社代表取締役。『鉄道ジャーナル』『旅と鉄道』編集長。記録映画プロデューサー・監督。著書に「もっともくわしい特急列車図鑑」など。
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紙の本
鉄道ファンではあるがマニアではない人の自分史
2000/07/10 20:49
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投稿者:小池滋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
表題を見ればすぐわかるように、この本は少年の時から熱烈な鉄道ファンであった著者の、これまでの体験をまとめた本である。
著者の竹島紀元(としもと)は福岡県の生まれ、少年のある時期を朝鮮で過ごし、戦後に引揚げてから、いろいろ苦労したが、鉄道への愛は変らなかった。貨車や窓ガラスのない客車に詰め込まれて、煙だらけになりながらも、鉄道の旅は楽しくてたまらなかった。成長すると(鉄道員にはならなかったが)鉄道ジャーナリストになり、映画製作社や鉄道趣味雑誌出版社の社主となった。
と、このように書くと、読者の中には早くもアレルギーを起す人がいるかもしれない。「いわゆる鉄道マニアの書く文章というのは、本人だけが自分に陶酔してしまって、読み手のことを全然かまおうとしない。この手のものを鉄道趣味雑誌で読んだことがあるが、鉄道オタクならよかろうが、普通の常識ある読者は目をそむけたくなる」と。
確かにこの種の文章は昔からくさるほどあった。しかし、この本は違うと保証することができる。著者はいわゆる「鉄道マニア」とは、はっきり一線を画す人なのだ。
著者が編集長を長く勤めている月刊雑誌『鉄道ジャーナル』(鉄道ジャーナル社刊)は、いくつかある鉄道趣味月間雑誌の中では「社会派」というレッテルを貼られている。マニアを満足させ、マニアに発表の場を提供するだけの刊行物であってはいけない、というのが、竹島編集長の確固たるポリシーなのである。
現代の日本の社会で鉄道という科学技術システムが、どのような位置を占め、どのような問題に直面しているか。それをどう解決すべきか。例えば、過密都市での通勤電車地獄と、逆に地方の過疎地帯での赤字線の危機、というような深刻なアンバランスは、単に鉄道マニア(その知識は非凡なものであろうとも)が解決できる問題ではない。マニアの知識を一般の人びとの常識の面に投影することこそが、鉄道ジャーナリズムの使命である。
これが竹島氏の姿勢である。それを広く世に訴えるために、彼は自分の刊行物や他の場所に、多くの文章を寄せて来たが、それをこれまで一冊の本にまとめて刊行することを、頑(かたくな)に固辞した。今回やっと周囲の説得を容れてまとめたが、自社ではなく他の出版社から出したあたりに、彼のスジを通す潔癖な性格がよく出ている。
鉄路に魅せられた一生だったが、それで正気や良識を失うことはなく、自己陶酔に溺れることもなく、鉄道の楽しさ、社会におけるその効用を、冷静に、読者に納得のいくやり方で述べている。
だから、鉄道マニア以外の、これまで鉄道に特別の関心など持ったことのない人にこそ、この本をおすすめしたい。鉄道に対して、また鉄道ファンというものに対して、これまで持っていた見解が変るはずである。
(bk1ブックナビゲーター:小池滋/英文学者 2000.7.11)