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商品説明
主に1995年以降に制作されたポスターから、選んだ135点を「近作」と名付け編集した、横尾芸術のエッセンスが凝縮されたポスター画集。画家自身が作品ごとに発想の原点を書き下ろす。英文併記。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
横尾 忠則
- 略歴
- 〈横尾忠則〉1936年兵庫県生まれ。絵画、版画、陶板、ビデオ、デジタルアートなど幅広い分野で活躍。著書に「Photo photo everyday」ほか多数。
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紙の本
どのページを開いても哄笑の沸きあがる横尾忠則の近作ポスター135点の集大成
2000/07/10 20:49
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:平岡敦 - この投稿者のレビュー一覧を見る
横尾忠則の絵には、ともかく有無を言わせぬ迫力がある。例えば地下鉄の通路を歩いていたとしよう。まだはっきりと知覚しないうちから、彼方に何やらただならぬ異形のものの気配がする。ふらふらと吸い寄せられるように近づいていくと、そこには案の定横尾忠則のポスターが張られているのである。
そんな横尾が主に1995年以降に制作したポスター135点を、展覧会、個展、イベント、観光、神社仏閣、映画、演劇等々17のカテゴリーに分類、集大成した本書も、当然のことならものすごいエネルギーを発している。見ているほうにまでそのエネルギーを伝わってきて、何だか元気になってくるから不思議だ。個人的には精神世界とかいった話に興味ないのだけれど、その方面に対する作者の傾倒ぶりが決してポーズやスタイルでないことは、作品が発散するこのエネルギーからも明らかだろう。
けれども横尾作品の凄いところは、そうした精神性が真面目くさった悟りの表情をまとうのでなく、哄笑に満ちたユーモアを伴って表現されている点だ。実際、この本のどこからも、高らかな笑いが沸きあがってくる。いや、いや、これは単なる比喩ではない。嘘だと思うなら64、65ページを開いてみるといい。墨絵風に描かれた幽玄なる深山の景色には、何とまあ「ウワッハッハッハッハッハ...」とひときわ高くこだまする笑い声が、そのままに書き込まれているのだ。
あるいは『万歳七唱 岡本太郎の鬼子たち』という展覧会ポスターでは、赤鬼、青鬼にふんした横尾忠則はじめ7人の現代美術作家を、岡本太郎の鋭い眼光が見据えているのだが、ここでも眼光と言ったのは比喩ではなく、岡本太郎の目からは文字通り光が発している。漫画じゃあるまいに、などと言うなかれ。近代のデザインがめざしたわかりやすさ、大衆性の、究極のかたちがここにはある。そういえばこの本には、作者による短い自作解説がところどころ付されているのだが、『櫻の宮』と題された櫻木神社のポスターについて、こんなエピソードが書かれていた。「このポスターは別に神社を宣伝するためのものではない。神社にお参りに来た人たちがそっと買って帰って、わが家に飾ってくれているという。それも『作品』などという概念を持たない一般の人が多いと聞く。このポスターの制作者などに特別興味はない。ただ家に飾っておくためらしい。」いい話ではないか。おそらくは横尾忠則の名前すら知らないだろう人たちが、彼のポスターに魅せられ買い求めていくのだ。
かつてヴァルター・ベンヤミンは、複製技術の発達した近代において、芸術作品の持つ唯一性のアウラが消失すると看破したが、複製技術を駆使した横尾の「ポスタア藝術」には、いくら複製しても失せないアウラが満ちている。 (bk1ブックナビゲーター:平岡敦/大学講師・翻訳家 2000.7.11)