「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
2003年12月30日、金融庁総務企画局長室。銀行一斉モラトリアム宣言に、頭取たちは凍り付いた。政府、日銀、与党そして破綻銀行の暴走を描いた経済情報小説。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
木村 剛
- 略歴
- 〈木村剛〉1962年富山県生まれ。東京大学経済学部卒業。現在、KPMGフィナンシャル代表。著書に「「破綻する円」勝者のキーワード」「新しい金融検査の影響と対策」「リスクヘッジ経営」など。
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
この小説はノンフィクションでも、企業ものでもない、紛れもない究極のホラー小説だ
2001/03/25 00:40
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:澤木凛 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本は少し昔の話から書かれている。近未来を描く話はよくあるが、近過去を描いているのは案外珍しい。著者の木村氏は元日銀のエリートで、今はフリーになっており、話は日本の金融情勢をかいたものだ。名前はとりあえず仮名になっているが事情をある程度わかっていて読めばそれは誰のことを書いたのかすぐにわかるというものだ。この本に書かれているのはいかに日本の金融行政がいい加減で堕落したものかが書かれている。護送船団方式で守られてきたために本当の意味での競争をしらない金融機関、そしていつまでも自分たちが日本を支えていると思っている大蔵省。癒着する政治家達、政財官の悪しき部分が最後まで残っているのが金融業界だ。
住専で数千億の公的資金を導入した「だけ」で大騒ぎになったことを踏まえて政治家と官僚は「わざと」山一証券、拓銀をつぶして金融不安を演出し、マスコミを通じて「公的資金導入仕方なし」の世論を作り出す。そして多額の公的資金の導入、そこでつぎ込まれるのは何十兆円という単位の血税だ。もちろん、景気回復という名の下に赤字国債は止めどもなく発行される。デフレスパイラルをとめるには国債発行や日本銀行券のバラマキしかない、という考え方。著者は現在世の中で評価されている経済学者(P・クルーグマン)や経済評論家(リチャード・クー)の責任も物語の中で指摘する。まだ記憶に新しい中での実在の人物達が繰り広げる怪事件はリアリティがある故にうすら寒いものすら感じさせる。
この小説は近過去だけではなく、最後は近未来まで描ききっている。つまり、デフレの後に待っていたのは強烈な揺り戻し、スーパーインフレだったという顛末だ。中東の政情不安からオイルショックがおき、円が一気に売られていく。通貨というものにとって一番大切なのは交換比率ではなくて「信頼」だ。円が売られると言うのは日本という国の「信頼」が売られ価値が低くなっているのだ。円が暴落したことでお金の価値が変わってしまう。円が例えば250円/$になれば今の半分の価値になり、赤字国債も実質半減する。とんでもないシナリオだが、前半部分のリアリティによってある程度確かさをもって読めてしまうから怖い。
我々が信用しているものも実は多くの物はみせかけだけであったり、裏があったりする。そのことをずっと裏方からみてきた著者は小説という仮想空間の中で鋭くえぐってみせた。マスコミも政治も、行政も必ず裏がある。今我々が信用できるものはなんだろうか。直に通貨は堕落し、信用は暴落する。この作品は、その危機感がはっきりとわかる究極のホラー小説でもある。
紙の本
2000/7/2朝刊
2000/10/21 00:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:日本経済新聞 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は元日銀マンで、金融コンサルティング会社に転じて活躍中だ。本書はフィクションだが、九六年秋の阪和銀行への業務停止命令で始まり、九七年秋の北海道拓殖銀行など一連の金融機関破たんで顕在化したこの国の金融破たんを想定するドラマが展開する。最終的には二〇〇三年十二月末に、一カ月のモラトリアム(預金支払い停止)宣言が出るシナリオだ。
著者はあくまでも創作と断る。しかし、日本長期信用銀行や日本債券信用銀行を思わせる「東京国際銀行」の破たん、ペイオフ(預金の払戻限度額を一定額までとする措置)延期などの、現在進行形の出来事との近似値が生々しく登場する。登場人物にも、実在のモデルをにおわせる記述が随所にある。
そうしたナゾ解きのおもしろさもあるが、著者の言いたいことは、おそらくそれだけではないだろう。これまでの金融行政が結果的にソフトランディング(軟着陸)志向で、問題解決の先送りにしかなっていないことへの反省から、モラトリアム宣言によるハードランディング(強行着陸)こそが解決につながるとのメッセージが伝わる。
最後は首相に就任した政治家鹿島が、日本を食い物にしてきたあこぎな外資企業の思惑を一蹴(いっしゅう)し、問題解決を先送りする国民性を逆手にとった、ショック療法に打って出たことを、将来ある若手政治家に告白して終わる。現実がそうなるかどうか。「日本はなまじ金持ちだから、問題の先送りができてしまう」との鹿島の一言は、著者の本音だろう。
(C) 日本経済新聞社 1997-2000