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商品説明
2000年3月の営団地下鉄日比谷線の事故に見られるように、在来線においては、海外のどこの鉄道でも事故を皆無にするのは至難である。128年間の主な重大事故185件を収録する。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
久保田 博
- 略歴
- 〈久保田博〉1924年長野県生まれ。大阪大学工学部機械工学科卒業。国鉄勤務等を経て、現在、交通研究家。著書に「鉄道車両ハンドブック」ほか。
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紙の本
事故を起さぬ最良の方法は過去の事故を忘れぬこと
2000/07/30 06:15
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:小池滋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
去る2000年3月の東京の営団地下鉄中目黒駅付近の事故もそうであったが、鉄道事故が起ると新聞、週刊誌、テレビ、ラジオなどが大々的に書き立てるが、しばらくすると一般の人はケロリと忘れてしまう。
例えば、「桜木町事故」「三河島事故」「鶴見事故」「余部(あまるべ)鉄橋事故」と言われて、すぐにいつ、どのような出来事であったかを思い出せる人は、事故関係者以外の一般人の中では極めて少ないだろう。
では、プロの鉄道マンはどうか。
この本の著者、久保田氏は長年国鉄に勤めたベテランの技術屋さんで、退職後は大学の教壇にも立ったことのある人だが、本書の序文の中で次のように書いている。
「運転事故はなるべく忘れたいものであるためか、事故などを記した鉄道書は今まで非常に少なかった。しかし保安は鉄道運営にとって第一の条件であるから、今までの運転事故の記録をたどり、事故防止対策について苦心してきた経過を整理することは有意義と考え(中略)てきた。」
この短い文章の中に、本書の重要性がはっきり打ち出されている。長い経験から、神ならぬ人間が動かす鉄道で事故をゼロにすることは不可能に近いことを教えられた。しかし、減らすことは可能で、その最善の方法は過去の事故を(これも思い出したくないのは人情の当然だろうが)忘れずに調べ尽くすことだ、と確信している。しかし、残念ながら、そのような観点から過去の鉄道事故の歴史をふり返った本は、皆無とは言わないが、極めて少なかったことも事実なのである。
本書のよいところは、何よりもまず、徹底的に事実だけを、客観的に冷静に示した点にある。悲憤の叫びを上げたり、批評家めいたしたり顔で説教を垂れるのは避けて、その分の紙面をデータのために譲っている。また、著者がかつて鉄道マンだからといって、鉄道側に甘いわけではない。あくまで公平な姿勢を貫いている。
例えば、1986年(昭和61年)12月28日、山陰本線の日本海岸の余部鉄橋から空車回送中(乗客がいなかったのは不幸中の幸い)の客車が41メートル下に転落、下にいた6人が死亡、6人が負傷する事故があった。裁判では、強風中に列車を止めず橋上を走らせた国鉄の運転指令員の過失と判定され、3人が実刑を課せられた。世間一般は、このように理解して、忘れてしまった。
だが、一部の研究家からは異説が出された。1年以上前に鉄橋の鋼材の取りかえ工事を行った際、一部の材料を元来のものと違ったものに変えたのが事故の遠因である。従って、責任はその当時の工事設計者にある。 結局、これは少数意見として、認められずに終ったのだが、本書ではこのこともはっきり記している。著者がいかに細心の注意を払っていたか、いかに公平無私の態度を貫いたか、の一つの例である。 (bk1ブックナビゲーター:小池滋/英文学者 2000.07.29)