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紙の本
貧しいイタリア庶民の豊かな毎日。鋭い風刺と夢とユーモア。
2001/02/16 14:19
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:長崎夏海 - この投稿者のレビュー一覧を見る
マルコヴァルドさんは、やんちゃな子ども三人とおくさんとイタリアの都会で暮らしています。日あたりの悪い、がたがたの家にすんでいて、家賃はたまっているし、毎日の夕食はとても貧しいものです。
でも、マルコヴァルドさんの毎日といったら、なんて豊かなのでしょう。
道にはえたキノコを食べたり、鳥の声で目覚めることを夢みて公園のベンチで眠ったり、雪だるまになってしまったり、ハチの毒でリューマチをなおそうとしたり、お金持ちの子とお弁当を交換したり、植木には雨が栄養になることを発見して雨をさがしに行ったり。まきのかわりに高速道路の看板を持って帰ったり、猫についていって調理場のさかなをつったりなんてこともあります。
描かれている毎日は、現実と空想がまざりあった世界です。どこまでが本当で、どこから空想なのかもはっきりしません。
植木は、モーターバイクのうしろにのったまま育ち、やがて葉を金色にしてしまったり、
バスの停留所をさがして霧の中をさまよっているうちに飛行機に乗ってしまったり、スーパーをぐるぐるまわって工事の足場の板の上に行ってしまったり。
でも「嘘」という感じがしないところがなんとも思議です。
それは、四季おりおりの町の風景が、目にみえるように描かれていて、においを運んできてくれるせいかもしれません。八月のお休みで人がいなくなった町や、雪がふった町も、いつもと違う町のように見えますし、いつもの風景の中にも新鮮な発見があるのです。それは、『工具をつんだ作業車と、その作業車の上の架線までとどく高い作業台のまわりの、月のかさのようなうすあかり。』というふうなのです。なんでもない、どちらかといえばあまり美しいとはいえないものも、なんだかすてきに思えてくるのです。
なにもいいことなんてないように思える時に、ぜひ読んで欲しい一冊です。