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柊の館 (講談社文庫)
柊の館
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紙の本
日本にありながら日本でないような、神戸の異人館を舞台にした浪漫あふれるミステリ
2005/05/10 00:22
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ピエロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
神戸にある洋館、通称「とんがり屋敷」はイギリス系船会社の宿舎。そこに大正14年、17才のときから勤め続けた日本人女性のメイドが語る思い出話。淡い恋愛のこと。戦争に向かって突き進んでいた不穏な時代のこと。そして奇妙な殺人事件や傷害事件のこと・・・。日本にありながらどこか日本でないような独特な雰囲気を持つ神戸の異人館を舞台にした短編ミステリ7編が収録されています。
構成は短編1作ずつ完結しているのですが、最初に起こった事件は一番最後の第7話で解決するという連作短編の形をとっています。ひとつずつ見ていくと、変わったトリックがあるでもなく、緻密な推理があるわけでもないのですが、異国情緒や古き良き時代への憧憬と感傷が全作を通して漂っていて、暗い時代や暗い事件を語っていても、どこか甘く華やかな香りがします。
作者が若い頃に住んでいたというだけあって、当時の神戸という街の息づかいが伝わってくるような、浪漫にあふれたミステリに仕上がっています。