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紙の本
白い薔薇を詩人に
2002/01/09 19:16
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投稿者:天国太平 - この投稿者のレビュー一覧を見る
情実は既往の中すぎゆくものか。
「私は、私が死んだら赤い薔薇を百本、それぞれの住んでいる土地の川に投げて流してくれる男が十人以上いる」(163P)。
紡がれた一葉を眺めるだけでも佳良な価値はある。カナンの月陰るこれほどいい女の移り香の瞬きに、マレビト集う配所へ、いあわせただけでも幸運である。もっと優雅な一栞もあるが(223P1-3G)印照には勿体ない。
詩歌句のマダムとして描かれた不必要善・必要悪は、たぶん精神衛生にとっては不可欠なのだ。宵薬も優春も毒杯もそれぞれが決めることである。
喝采はあってもいいなくてもいい。そういう不敵で素敵な歩み方もある。心がいくども壊れる人と生。美と藝術に耽溺した語り人との出会いからなにを学べようか。女神の化身は今世に唯ひとつ、一品物である。誰一体同じ物はなく、全管財うちすててもかけがえない。
わたし壊れちゃう。あなたは敵の多い人だから。一葉をわたしは忘れられない。
私は敬は払うが、至尊の座を戴冠できなかった藝術家は、生きていていいのか。まだもがけというのか、苦しめというのか。かつて女史はこう歌ったことがある(廃星へ/夢の丘 五)。
「法の踏絵の科の刺青の文様を背に嵌(うがた)れて低く生きると」
金輪際、痛める後日談は描きえぬだろうし、ポートレェトは永遠である。銀表紙に映えるためらいのないひかえた笑顔がいまもまぶしい。
女史は歌人で蒐歌選が二冊確認されている。