紙の本
男性にも読んでほしい
2002/05/16 18:42
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投稿者:ひろぐう - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み終わって最初に思ったのは、「これ、表紙で損してるなー」ということ。もちろん、萩尾望都さんのイラストもそれはそれなりにひとつのイメージでいいと思うけど、確実に男性読者を獲得しそこなっていると思う。プロパーな(特に女流の)ファンタジーはダメな方で、ここ数年、男性的な冒険小説を読む割合が多かった僕でも充分、いやそれ以上に楽しむことができた。特に素晴らしかったのが、鮮烈で特異なイマジネーション。過去の神話や宗教やファンタジー作品の焼き直しでない独自のイメージ、たとえば神や悪魔(ここでは妖魔)や世界のイメージを見せてくれる。
そしてストーリーがこれまた素晴らしい! 数十ページごとに完結するお話が、登場人物やエピソードで次のお話につながっていき、全体でひとつの壮大な物語(神話といってもいいくらい)を作り上げている。それでいて決して重くないのだ。それぞれのエピソードも、手が届きそうで届かないような暗示や裏のメッセージのようなものに満ちていて、作品を奥行きのある味わい深いものにしている。
訳文は一見おどろおどろしい擬古文調だけど、これが不思議にサクサク読み進むことができた。漢字の字面を見てパッ、パッと次から次にイメージが浮かんでくるという感じなのだ。もちろん、翻訳による限界もある。分かりやすい例でいえば、シリーズ名の「平たい地球」。これ自体で矛盾していて、本文の中に出てくる「地球」という言葉を見ると、どうしても球体をイメージしてしまう。その辺、英語が堪能な人は原書で読んでみることをお薦めします。
紙の本
耽美だけでは終わらない
2001/09/04 19:51
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投稿者:ゆーか - この投稿者のレビュー一覧を見る
妖魔の王アズュラーンが織り成す、豪華絢爛な大人のための夜話。
序盤が耽美な物語で始まっているため、いささかのめり込みにくいという人もいるかもしれないが、幾重にも折り重なった上質な物語である。心温まるというよりは、高価な宝石の輝きに魅せられるような心地になってくる。
耽美な表現に酔いしれて欲しい一作であある。
紙の本
一風変わった大人向けのファンタジー
2001/06/09 00:20
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投稿者:あき - この投稿者のレビュー一覧を見る
まだ地球が球体になる前…地球が平らだった古の時代、地底深くに魔法に満ちた妖魔の都がありました。その妖魔の中の妖魔「アズュラーン」は妖しい美貌と、恐ろしく残忍な性格の持ち主。アズュラーンをとりまく不可思議な物語。大人向けのファンタジー短編集です。
人物やアイテムが新たな章へと引き継がれるロンド形式はお見事! 最初から最後まで通して流れる淫靡な雰囲気。語り口調は古のそろを思わせる物で、そこがまた深い味わいを色濃くしています。ただ甘美な世界というだけではなくて、教訓的な要素もあり、寓話のような感覚で読んでも良いのではないでしょうか。
ただし…! アズュラーンはあくまで妖魔…。不条理に思えるラストが何と多いことか! それだけにハッピーエンドの話はスカッとします。一風変わったファンタジーを読みたい方はどうぞ!
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ファンタジーっていうのは、こういう綺麗な物語をそう呼ぶのではないかと、思うのですが。 「平たい地球シリーズ」
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タニス・リーの平たい地球シリーズ『闇の公子』を読む。本屋で昔出た二冊を一まとめにして復刻した『バイティング・サン』という本を見かけて、代表作を読んでみたいなぁと思ってとりあえずこれから読んでみた。主人公の名がイズァローン。『イズァローン物語』はここからとったのか?ファンタジーはよく神話や聖書の題材をモチーフにするが、よくある名前なのか。ファンタジーに詳しくないので分からない。数十年前の小説だが、ダークで美しい話であった。
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私の中で魔族がこれほど愛しい存在と感じられるのかと思う壮大なファンタジー、平たい地球シリーズの第一作。
このシリーズに描かれる闇の公子達はみな魅力あふれ、そしてどこか淋しい存在。
それを補うそれぞれの存在感と魅力がさらに物語へ引きこんで行く・・・。
この本と出会えてファンタジーの新たな一面を知った作品。
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さらにもう★★くらい点けたい。色彩豊かな夢物語の世界に遊ばせて貰うような心地よさ。人間界の時間では大きく隔たりのある出来事は、ひとつひとつのお話としても読めるし、Night's Masterを主人公とした大きなひとつの物語としても読める。Night's Masterアズュラーンの魅力にすっかりやられました。
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妖しくて残酷で非道で気まぐれで、しかし美しく魅力的な闇の世界のいきものたち。
幻想的という表現がふさわしい。これぞファンタジー!
素晴らしい世界観です。
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平たい地球シリーズが好き。
この人の話が好きというよりは浅羽さんの訳が好きなのかもしれないなあ…と時々思う。
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まだこのシリーズ「平たい地球シリーズ」は読み始めたばかりですが、
タニス・リーさんの作品の中で一番好きです。
残酷で美しい物語。ダークファンタジー好きならぜひ読んで見て下さい!
気まぐれで残酷な闇の公子アズュラーンが素敵すぎます。
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色とかのイメージを実に耽美に書く作家さんです。一時期端から読んでた時に、一番お気に入りだったのがこの一冊。
「魔王さま」的キャラとしては最高峰レベルです、当社比で(笑)。
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私が持ってるのは萩尾表紙Ver.です。
説明不要の耽美ファンタジーの巨匠、タニス・リーの代表作。
そして「平たい地球」シリーズの始まりでもある。
この人の色彩感覚はすごいです。
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た、たたた耽美!!!!!
逝去されたとのことでもう一度きちんと読んでみようと手にとってみました。
すごい面白かった。文章美しすぎ。みんな美形。訳者さん頑張った。すごい。
ただ美!美!と連発されるのは苦しいものもあるなぁと思いつつ。
人間を手慰みにいたぶりながら、でも人間なしでは生きられぬ闇の公子がいとおしい。もえ。
久美沙織さんのドラクエノベライズがこんな感じだったな。ものすごい影響受けてるな、と笑った。
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この作品を訳者は「千夜一夜物語」と後書きで称しているが、まさにその通りである。エシュヴァの女達が霞の如く語るようにこの物語も織り成されていく。とにかく美しい物語である。文章にしても内容にしても。
まず、文章が素晴らしい。擬古文体とでもいうのだろうか。難解で格式ある文調だが、官能的で音楽的な響きのある美しさを持っている。そして、色彩の描写がとりわけ素晴らしい。一つの色を創るために複数の絵の具を混ぜるような、絵画に通じる美しさがある。読み手の想像を掻き立てながらも、非現実なまでの描写により、影絵のような輪郭の淡さと儚さを孕んでいるように感じた。
アズュラーンに関わる人々は、最後は悲惨な最期を迎えることになる。それが分かっているのに読むのをやめられない。読んでいて辛いのではなく、惹きつけられて仕方がないのだ。それよりもアズュラーンの狡智や叡智、美貌を眺めていたいと思わせる魅力があるのだ。
本作は複数の物語が連鎖的に続いていくのだが、一番好きな物語は「シザエルとドリザエム」の章である。アズュラーンによって分たれた一つの魂が、喪った片割れに出会う歓びは、ずっと眺めていたいくらいに美しい。表現するのが難しいのだが、シザエルとドリザエムは淋しいとか辛いとか人間的な感情で表現することができない。そういったものを超越した、魂が引き寄せられる程の何かーー本能とでも言うのだろうかーーに突き動かされる。淡々と物語は進むのだが、美しい色彩と描写のため、異国の絵巻を見るようである。完成された二人の魂は、アズュラーンをも見惚れさせるものだった。アズュラーンは人界に遊ぶが、時折思いもよらぬものにも出会う為、やはり人間を手放すことはできないのであろう。
そして、憎悪に覆われた地球を、紫水晶の神々でさえも見捨てた地球を、アズュラーンは見捨てることができなかった。人間なくして妖魔は生きていけない。妖魔として、人間を玩具の如きに思ってはいるが、離れられぬ強い愛がアズュラーンにはあったのだ。今まで気まぐれのような愛し方しかアズュラーンにはないと思っていたのだが、人間も神々も救おうとしない地球を唯一救えるような強い愛を持っているのだ。アズュラーンの永生を捨て去るまでの愛に胸を打たれた。胸に迫る、とはこう言うことかと思った。