紙の本
一杯の珈琲から、素敵な恋が始まる♪
2004/05/07 18:34
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:風(kaze) - この投稿者のレビュー一覧を見る
『飛ぶ教室』を始め、児童文学に名作を残したケストナーの恋のおとぎ話、ラブロマンスの素敵な作品です。話の中に出てくるモーツァルトの音楽が聞こえてくるような朗らかさ、明るさが全編に流れています。メールヒェン的で、温雅なユーモアに満ちている、これはドイツ&オーストリア国境バージョン「恋におちて」。第二次世界大戦が始まる一年前、1938年に発表された作品です。
ひと夏をオーストリアのザルツブルクで過ごすことにしたゲオルク。為替の認可がなかなか下りないため、ザルツブルクでは貧乏暮らしを、国境越しのドイツ・ライヘンハルのホテルでは大名暮らしを送ることになる。鉄道に乗って一時間と離れていないザルツブルクとライヘンハルの都市間を、昼と夜とで往復して過ごそうというわけ。そうして日を送るようになってすぐのこと、所はザルツブルクのカフェ。無一文状態で立ち往生していたその時、彼女がわたしの目に止まった!
という具合にカーテンの幕がするするっと上がって、話が滑り出して行きます。
国境往来をしながらの恋の喜劇の、はじまりはじまり〜♪
モーツァルトの音楽、ディヴェルティメントとか「プラハ」のシンフォニーのメロディーが、さあっと流れていくみたいな朗らかさがあるんですよね。上品なユーモアがいかしてる、香り高いロマンス小説の逸品。だいぶ前に読んで、以来お気に入りの作品になりました。
今回、冒頭の「読者への序文」を読んで、ゲオルクを「ドイツ」、相手の女性を「オーストリア」と置き換えたら、そこに何か寓意的な意味合いがこめられてはいないか? などと考えたりもしました。でも、それも最初のうちだけ。あんまり小難しいこと考えずに、作品のメールヒェン・ロマンス風のタッチ、明るいユーモアなんかを楽しんでいったらそれでいいんじゃないかと、読み終えてそう思いました。
ケストナーのユーモア小説三部作では、ほかに『雪の中の三人男』(1934)、『消え失せた密画』(1935)があります。個人的に、本書に優るとも劣らないくらい気に入っているのが『雪の中の三人男』。本書が気に入ったら、ぜひこちらも読んでみてください。
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一杯の珈琲からの方は一番のほほん。
解説にも書いてあったけど悪い人とか出てこないしね。
ほんと、映像化したら素敵なんじゃないかなって思う。
ドイツとオーストリアのキレイな風景とかお城とか、
演奏会とか見てるだけで面白そう。
しかしほんと、国のことってさっぱりわかんない。
ドイツとオーストリア、行き来はできるけどお金を
あまり持っていっちゃだめ、とかさ。
まあそこからこの話は始まっているけど。
日本は沖縄とか北海道とか、日本だけど日本じゃないみたいなとこも
確かにあったけどそれでも国境がどうのとかいうのとは
ちょっと違う気がする。
うーん難しい。
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ケストナー大好きです。なぜ全集がないのだろう。これは好きな外国小説ベスト1かも。ユーモアがあって洒落ててロマンスがあって幸福があって。
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エーリヒ・ケストナーによるこの一冊は、ドイツとオーストリアを舞台に繰り広げられるユーモラスで洒落たロマンスといったお話です。タイトルは「一杯の珈琲から」話しが始まったというわけですが、本当に香り高い珈琲を味わっているような見事な小品です。
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このごろケストナーにハマりました。
何ともかわいらしいお話です。悪人が出てこない話は安心して読めますね!それにしても最後どんでん返しはありますがこれ、推理文庫に入れるのは無理があるのでは…?
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歴史小説(?)161頁という薄い本。
ドイツとオーストリアでは通貨が違い、お金の持ち出しが厳しく制限されていた頃の話。
ドイツでは裕福なゲオルグはザルツブルグ(オーストリア)の祭りに行く。その地で友人と待ち合わせをするのだが、来ないため一杯の珈琲の代金を支払えない窮地に陥ってしまう。そこで居合わせた見知らぬ女性に珈琲代を借りる。そして始まるのはめくるめく恋。
っていう話ですね。
テンポが良いです。日記風。あっさり読めます。
主人公を女性の父親にすると、なかなか笑えるかも。彼は伯爵で宮殿を持っているのですが、喜劇の脚本を練るために、宮殿をアメリカ人の富豪に貸します。自分たち家族は小間使いに扮装して彼らを迎え入れて、楽しむんですが、そこへ主人公がやってきます。そして小間使い役をしている長女と駆け落ち。慌てる伯爵。
おまけに、アメリカ人一家は伯爵の正体を初日から見破っていて「楽しそうだったからルールに乗っ取っていたのですよ」と、指摘しなかった理由を言う。このゲームに乗ってくれたわけです。伯爵はたくらみを失敗するわ、娘は取られてしまうは散々ですが、主人公がやってきて娘と正式に婚約して結婚するということになり「次はおじいちゃんという職業につきませんか」とゲオルグに振られると大喜びする、という。
悪人の出ない話。事件のない話。ゆったりしたワルツを踊っているように、たいした波乱もなく嫌なこともなく、終焉する。それでも、飽きずに終わりまで読めるのだから、作者は話の構成がとても上手なんです。
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「和むミステリってあったんだ!!!!」
と叫びだしたくなるような、可愛らしい作品だった。
調べてみたら、これはユーモア・ミステリというジャンルが存在するようで。
創元推理文庫ですし、でもケストナー?どういうこと?と思ったが、成る程。そういうこと。
児童文学の名手、エーリッヒ・ケストナー。
名前だけでピンと来る人もいるかと思う。私は母が大のケストナーファンで、小学生のころに『飛ぶ教室』を読むことを強く勧められた。そして読んだりした。当時は読みにくくて苦戦した覚えがある。映画版もきっちり見た。今ならば昔よりももっとたくさん得ることがある気がする。
エーミールシリーズや、『双子のロッテ』、『点子ちゃんとアントン』という名作をあげれば、もうお分かりだろう。かのエーリッヒ・ケストナーだ。
----------------あらすじ----------------------------------
国境を越えるために、お金の持ち込みを制限されてほぼ文無しのゲオルク。
ドイツではきちんとお金も収入もある、一風変わったドイツ紳士。
昼の間だけは国境を越えて生活するため、お金はその国に居る友を頼りに、気ままな生活を過ごす。
ある日彼が友達との待ち合わせの喫茶店に行くが、待てとも待てども友は来ない。
お金が無い。
一杯の珈琲の代金でさえ、払えない。
と、その時、青い瞳と出会う。
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ゲオルクの手記という形で物語は進行する。
冒頭のケストナーの序文では、どうやらこれは本当にゲオルクという友達の手記なのだろうか?これはフィクション?調べてみたが、不十分であるようで、再調査が必要だ。
とにかくゲオルクが好ましい人物であった。
本書が今手元にないのだが、「あの青い瞳と栗色の髪、まあ逆であっても彼女を愛しただろう」というような描写など、可愛い。青い髪でも良いのか。(笑)
一杯の珈琲でここまでロマンチックな楽しい物語に仕上げる様はとても清々しい。
永遠のロマンといっても過言ではない。
しかし私、珈琲は嫌いだ。というか苦い飲み物は嫌いだ。西洋の飲み物はだいたい好きになれない……。ワインもビールもウィスキーもコーヒーも。
とりあえず、私も無銭状態で喫茶店に行く勇気だけはあると言える。
あとは珈琲さえ飲めれば、私もこんなミステリが待ち受けて……???
期待。
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01/06/2011
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児童文学のイメージが強いケストナーが、何と創元推理文庫です。
初めの数ページはちょっと読みづらかったけれど、途中からはもうはまってしまって大変楽しく読めました。ケストナーのインテリジェンス…素敵です。それから翻訳がまた品があってエレガント。ケストナーとほぼ同じ年に生まれ、ほぼ同じ年に没していらっしゃる小松太郎さんと言う方ですが、ベルリン大学留学経験ありとのことで、ケストナーの生きた時代と同じ空気を吸っていた感覚がものすごくいいです。悪い人が出てくることもなく、教訓みたいなものも目立っておらず、ドイツまたはドイツ語圏の文化・言語・人種がお好きだったり、特にドイツオペラ、モーツアルトなどに興味のある方にはお薦めです♪
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為替管理法により、ドイツでは大金持ち、オーストリアでは一文無しの休暇を送るゲオルクは、1杯の珈琲代金が払えないことから知り合った小間使いと恋に落ちる。
ケストナーがこういう話を書いていたとは寡聞にして知らなかった。
悪い人は1人も出てこないユーモア小説なので、最後までゆったりと読むことができた。
登場人物がみな金持ちで、浮世離れした悪ふざけって感じ。
ラストのオチも笑えた。
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舞台は夏のオーストリア・ザルツブルグ。ザルツブルグ音楽祭開催中の華やかな都で恋に落ちる有閑階級の話。
時代背景は厳しいはずだが、登場人物たちは誰ひとり苦境に陥ることなく、優雅なまま始まり優雅なまま終わる(ただし序文にはそれとなく仄めかされてはいる)
1975年発行の本ということで(原作は1938年初版)ちょっと古めかしい文章で、それが味のひとつ。
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ケストナーのユーモア小説三部作の3作目。邦題の通り”一杯の珈琲から”始まる小粋なラブストーリー。悪人の登場しない、ひたすらのどかな物語が微笑ましい。たまにはこういう暢気なのも良いね。
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ラブコメやわ、ラブコメ。
いい人しか出てこないラブコメ。
悪人が一人も出てこないのよ、心穏やかに読めるわぁ
戦争前夜のお話でね
ドイツの金持ち青年が、オーストリアのザルツブルグに遊びにいくんだけど、外貨持ち出しの許可なんか全然でなくて、ドイツ側のホテルで泊まっては、文無しでオーストリア側に遊びにいくということを繰り返すわけですな。
で、ある日、手違いでオーストリアの友人にあえずに、かわりに貴族の召使いの女性とボーイ・ミーツ・ガールですわ。
まぁ今読むと、他愛もないドタバタなんだけど、当時のザルツブルグの景色や雰囲気が味わえて、なかなか楽しい体験でありました。
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珈琲代を借りたきっかけで出会った女性と恋に落ちる男の日記小説。
悪意を疑わずに読めるラブコメって良いですね。登場人物紹介が内容のネタバレをしていた事もありハラハラせずに読めた。
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「ドイツ文学」で検索して表示された小説のなかから、そのオシャレな表題に引かれて購入。実はドイツの情熱あふれた小説を期待していたが(ケストナー作品は読むのは初めて)、あっさりとした軽いタッチの小説で、ある意味、思惑とは違っていた。
でもそれが悪い評価につながるわけではない。登場人物も少なく絞り込まれ、場面もザルツブルク(オーストリア)とライヘンハル(ドイツ)がほとんど。まるで舞台劇を見るように物語は進んでいく。ーそうか、舞台か恋愛映画を見るような感覚でこの小説を読めばいいのか。
しかも発表が1938年なので、現代のゴテゴテした恋愛ではなく、例えば「ローマの休日」みたいに、本当に二人でいるだけで楽しいというような、キッスだけでドキドキ。ウインクだけでお互いがわかりあえる、といった感じ。
(書いてて恥ずかしくなりました(*^_^*))
この本を読むなら、どこで読むか、も重要。モーツァルトなどのクラシックのかかる、内装や食器にも気配りされた、古い感じの喫茶店がいいですね。注文は、もちろん、ウインナーコーヒー!
(2007/3/11)
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一種のドタバタ喜劇なんですけどね、実に品が良い。今出来の「こう書きゃ読者を笑わせられるだろう」といったギタギタした安っぽさが無くて、ホンワカとしていて余裕があります。”ラブコメ”に分類した人も多く、それはそれで判るけど、あえて省略などせずきっちりと”ロマンチック・コメディ”と呼びたい作品です。
そりゃあ確かに古いです。もう80年も前、1938年に書かれた本ですから。今になってみれば使い古された技法だったり、予定調和に見えたりもします。でも、出版当時は目新しく、むしろこれを先駆として広まって行った物もあるのではないかと思います。