紙の本
X、Y、Zのあとに読むべし
2008/01/10 12:49
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コーチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
Xにはじまり、Y、Zと続いたドルリー・レーンを主人公とするエラリー・クイーンの『~の悲劇』シリーズは、この巻で完結する。
これらの古典的作品群に対するミステリーマニア諸氏の批評はさまざまであろうが、『Xの悲劇』、『Yの悲劇』では、私の単純な脳細胞は、どちらの結末にも意表をつかれ、唖然とさせられた。特にYは、この作品をこよなく愛するという民族のご多聞にもれず、今まで読んだミステリの中で最もおもしろいとさえ感じた。Zにはさほどの感動は覚えなかったものの、プロットの緻密さはすばらしいと思った。そして、Zが終わり、ピリオドとなった本巻では、またまた意外な展開と結末に興奮を覚えたのだった。
興味深いのは、第1巻からのさまざまな状況設定が、歯車のようにかみ合いながら本巻のプロットを構成している点である。ドルリー・レーンが、シェークスピアに精通した往年の舞台俳優であること。彼が聾唖者であること。(そのために、読唇術によって会話をするという、機転が求められる探偵にとってやや無理のあるコミュニケーション手段をとらされていることも。)そして、Zから登場することになった美人探偵ペーシェンスの存在・・・
以前の巻から続くこれらの状況すべてが、仰天の結末へと読者を導くため作者によって仕組まれた糸であったのではという想像は、早計にすぎるかもしれない。しかし実際にそれらは、最終巻におけるプロットやトリックを構成する大きな要素となっている。このことから、本シリーズのどれも読んだことのない読者に対する私のアドバイスは次の通り。この本は単独で読むべからず。必ずX、Y、Zを読んだあとに、いわばエピローグとして読むべし。
余談ながら、クイーンと並ぶ大ミステリ作家ヴァン・ダインは、「二十則」と呼ばれるミステリ小説において作者がやってはいけない20の禁じ手を唱えている。本作品は、その中の一つないしは二つに抵触していると私は思うのだが...(彼はクリスティの特定の作品をこの基準に照らして誹謗しているものの、クイーンのこの作品を批判しているという話は聞かない。)これ以上は、ネタばれになるのでやめておこう。
紙の本
伏線の鬼神
2012/03/09 15:40
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:koo± - この投稿者のレビュー一覧を見る
ぶったまげた。他に言葉が出ません。
☆☆☆☆☆
<補足>
ちょっと冷静になってきたので補足です。
※直接的なネタバレではないですが、未読の方はここから先は読まないでください。
●四部作のフィナーレ
私立探偵を営むサム元警部のもとに現れた奇妙なひげの色をした男。彼がサムに預けた手紙から始まり、博物館警備員の失踪、古文書盗難、果てはシェークスピアの歴史的な謎へと事件は発展します。そんな中、サム警部の娘ペーシェンスが辿りついた真相とは? ドルリー・レーン四部作のフィナーレを飾る、驚愕の結末が貴方を待ち受けます。
想像していたより遥かに地味です。単独の本格推理として読めば、かなり雑な部類。「クリスティのあの作品」と類似したメイントリックは、単体で見れば別にぶったまげるというほどのものではありません。
●最後の一撃に賭けるクイーンの執念
僕がぶったまげたのはそんなことにではないのです。ヒトコトで言えば「最後の一撃に賭けるクイーンの執念」。これに魂を打ち抜かれました。一体、どの段階でこの壮大なプロットを構想したのでしょうか?
バーナビーロスのペンネームが、探偵がエラリーでないことが、「X」の鮮やかさも、「Y」の悲壮感も、「Z」でのペーシェンスのウザささえもが・・・。
そう、すべては伏線だったのです。この世界のすべてが。だからこそ本著は「クリスティのあの作品」とは本質的な意味で異なるのです。スケールが違いすぎます。
●時間の重みを感じる大河ドラマ
小説を読んで体が震えたのはどれくらいぶりでしょう。思い起こせば、次男の出産立会いのお供に読んだ「Xの悲劇」(←オマエなにやってんだ!?)。それがクイーンとの出会いでした。それから7年半。シリーズ読破するまで随分と時間が掛かりました。しかし今回は、その時間の重みが功を奏したみたいです。言葉では表せない壮大な読後感を与えてくれました。
まさに伏線の鬼神。脱帽です。
※「です・ます調」レビュー100本ノック。23本目。
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バーナビー・ロスこと、エラリー・クイーンによる「レーン四部作」の最終章。全四部の全てに仕掛けられた巧妙な伏線が、最後の最後に見事な完成形を見せる傑作。文体までもが他シリーズと異なり、どことなく英国風なのが見事。
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シリーズ最後の作品。作者が始めから計画していた事なのか分からないけど、この作品はいらない感じがする。読まれた方なら、なぜこう言うのか分かると思います。
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ああ、こうきたかと。
三部作それぞれの伏線が落ちた感覚とともに、このような形でレーンと別れを告げなければならないことに哀惜を覚える。
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サム警部のもとに現われた七色のひげの男が預けていった手紙の謎は? シェークスピアの古文書をめぐる学者たちの争いは、やがて発展して、美人のペーシェンスを窮地におとし入れ、聾者の名探偵レーンをまきこむ。謎また謎の不思議な事件続き。失踪した警官の運命は? ロス名義の名作四編の最後をかざるドルリー・レーン最後の名推理。
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サム警部のもとに現れた七色のひげをした依頼人。託された封筒の中の暗号。
盗まれたシェークスピアの1599年版『情熱の巡礼』、代わりに置かれた更に貴重な1606年版の謎。
荒らされた容疑者の家、目覚まし時計に隠された謎。
2002年2月21日再読
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今作は、事件につぐ事件で物語的には引き込まれるものがありました。
サム警部、ペーシェンス、レーンといった主役キャラは個性的で物語の魅力そのものといってもいいかと思います。
ただ、事件の謎の部分についてはいまいち納得がいかない感じだったのが残念です。
特にラストは衝撃的でしたがそれゆえにもっと別の対処があったのではないかと考えてしまいました。
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高校生の時、エラリー・クイーンにハマり、基本は高校の図書室で読み漁っていたんですが、X・Y・Zの悲劇は非常に有名で、図書室にももちろんあったんですが、なぜかこの本はない!
仕方がないから、探して購入。
ラストは今もしっかりと覚えています。
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これはまず衝撃しか残らないことでしょう。
ただこれは賛否両論になることが
まず間違いない作品。
たぶん「X」「Y」「Z」を読んだ人には
この結末は絶対にきつく感じるはず。
読んだときに唖然としてしまいましたし。
もはや何も言うことはないです。
これは読んだ人にしかわからない
「衝撃」なのですから。
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ドルリー・レーン四部作のラスト。『最後』まで読んでこその四部作だと噂には聞いていたが……。
全くもってその通りでした。
相変わらず、サム警部は良いキャラクタで親近感がわくのですが、その娘のペーシェンスはいけすかないまま。この時代の(知的な)女性がどういう風なのか全く知らないし、想像も出来ないからだろうけれど、ゴードンに対しての彼女の態度が一切理解できませんでした。
つまりはあれ? こっちは恋多き女で場数も踏んでるはずなのに、本を相手にしてる学者の言葉に赤面したりドキドキしたりしてる自分が情けなくって、口惜しいってこと?
ってまあ、そんなことはどうでもよくて。
XYZの三悲劇とはしょっぱなから雰囲気が違い、ああラストに向かってるなぁと痛感。レーン氏のどうでもいい秘密主義は相変わらず顕在してましたが。かわいそうに、暗号が解けてたならパットやサム警部に教えてやりゃよかったのに。(って、教えてたら多分この物語、成り立たないよな。)
以下ネタバレ、反転処理。
後半に差し掛かった辺りで、この斧持った男がレーン氏だったら面白いよなぁ、と空想。シェークスピアに傾倒してるし、文化的価値のあるものを保護する為ならこれくらいやりそうだし。ただ、今にも死にそうな(失礼)じーさんに斧を振り回せるのか、と。
結果、やっちゃったみたいですけどね。あれ、つまりはレーン氏が殺したんだよね、ハムネットを。
この作品はもともと四部作にするつもりで書いてたらしいが、色盲と耳が聞こえない人と、異なった障害をもつ人間二人が関係してくる事件がラストにきても違和感がないのは、レーン氏は耳が聞こえない探偵っていう設定を前三作で読者に慣れさせていたからだろうな、と。
ラスト、あれはレーン氏、毒飲んで自殺してるんでしょうか。
確かに「最後の事件」ではあったな。
04.09.09
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『Xの悲劇』『Yの悲劇』『Zの悲劇』に続く探偵ドルリイ・レーン最後の事件。
四部作順番に読んでこそ、作品の味わいが増す。
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残念ながら本書(というか、本シリーズ)のトリックは、承知の上で読んだので、あのオチに、どう着地するのか、という関心で読み進めるたわけです。
その観点からすると、やっぱりうまいですね。伏線の張り方とか、ひっくり返すタイミングとか。比べると、最近のミステリーって、むやみに何回もひっくり返し過ぎ。
ただ、承知してると思っていた、レーン像と、実際が少し違っていたので、ちょっとびっくりしました。
レーンは、もうちょっとピカレスクな感じのイメージだったので、なんだ、最後まで誠実でいい人だったじゃん!って。
ネタバレが先行して、変なイメージが広まってしまっているんでしょうか。私の周りにもネタは知ってるけど読んだこと無いって言ってる人っ結構多い。
是非一度原典に。
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サム警部のもとに現れた、奇妙な色のひげの男。
その男が預けていった手紙の謎。
シェークスピアの古文書をめぐる怪奇な事件は、
サム警部の要請によって事件に関わった
名探偵ドルリー・レーンを巻き込んでより複雑さを増す。
不可思議な事件の最後に待ち受ける衝撃の結末――。
クイーンが別名義で発表した、
ドルリー・レーン四部作のラストを飾る作品。
原題「Drury Lane's Last Case」。
X、Y、Zの各「悲劇」で名推理を見せてくれた
名探偵ドルリー・レーンだが、この作品をもって
文字通り「最後」の活躍となる。
事件は、今までのように殺人事件がメインではなく、
シェークスピアをめぐる古書の盗難事件や
警備員の失踪事件などに端を発する一連の怪事件が主軸である。
それらの事件の謎に挑むのは、レーンはもちろんのこと、
サムの娘・ペーシェンスや、若き学者ゴードン・ロー。
そういった面々の中で、レーンがやや精彩を欠いていて
どうにも覇気がない様子なのだが、ラストまで読めば
その違和感にも完全に納得がいく。
「X」や「Y」はもちろん、「Z」も
「意外な犯人」という点に重きを置いていたわけだが、
この作品も、シリーズの最後を飾るにふさわしく、
「意外な犯人」の究極を行くパターンを見せてくれる。
もちろん、今となっては使い古された手かもしれないが、
クイーンの時代にはかなり衝撃的な結末だったであろう。
また、それ以外にも、ミステリーではおなじみである
「双子」といったガジェットも登場していて、
本格ミステリーの原型を見たという感じ。
話がやや錯綜していて混乱しやすいかもしれないが、
本格らしい本格といった作品で面白かった。
なお、今回から、評価は星5つをフルに活用して
つけるという方針に改めたので、
星4つという評価になっているが、
これは平均以上に面白かったという意味である。
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レーン最後の事件読了。レーン老らしいドラマティックなシリーズ幕引きでした……ミステリとしてはちょっとそれ推理しようがないだろとか十戒まんまの違反とかいろいろなのですが、これはミステリというよりレーンの劇的なラストのための一冊なんでしょう。ドラマとしては満点だと思います
今思うと、XYZの悲劇そして最後の事件、このシリーズほど順番に読まなきゃ絶対だめ!っていう作品もなかなかない。なんで私Yから読んだんだろうなあ。いやYから読んでも度肝抜かれるほどおもしろかったんですけど、ほんとXから読めばよかったね……
このレーン最後の事件なんて、あまりにシリーズのための作品すぎて、これ単体で読んでも全然おもしろくないんじゃないかって疑惑が若干ある 全然ってことはないだろうけど、レーンとペーシェンスに思い入れがないとまったくおもしろくない気が だがそれだからこそこんなにドラマティックなんだね……