紙の本
畜生になって堕ちるバラモンの話
2023/04/08 19:05
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投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
表題作ヮ、銀の匙が気に入った人が
著者の作品世界をもっと深く知ろうとするなら、
避けて通るべきでヮない一冊でしょう。
読後感の好悪ヮ保証しかねますけれど。
紙の本
『犬 他一篇』
2016/03/08 05:10
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投稿者:シエル - この投稿者のレビュー一覧を見る
中勘助と言えば『銀の匙』でそちらは数年前に読んだ。
短編が多いようだが明治の末の作品にしてはあまり時代を感じさせない。
「犬」の方は少々、理解し難いが人間の根底に潜む欲求みたいなものを書いているんだろうと思う。
設定の場所も時間もここではあまり重要ではなく、犬になってしまった人の本性を描いているんだと思う。
お坊さんと少女が姦淫して犬になって、夫婦として暮らすんだがカフカまがい?
根源的なことを描こうとして犬になったのかなと思うが100頁足らずでかなり無理があって小説を読みつけないから奇異に感じた。
「島守」の方は作者自身の経験から書いたものだろう。
短く纏まっているが小説と言うより、回想記みたいな感じがする。
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妖しさ大爆発。おっさんなに考えてんねん。このどうにもならない後味の悪さが…たまらん。薄い安い本だが、あなどれないぜ。オトナ向きの寓話だね。
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表題「犬」は、インドの聖者が登場したりしたので、てっきり仏教説話かなにかと思ったら。伝説っぽい空気(話し筋が乱暴だけれど、別世界に置き換えてみてしまうので可、な。)(あと、第三者目線から語られるところとか)を持っているくせに、昼ドラ並みにどろっどろ描写は避けない作品に、終始キャーキャー喜んでいました。当時の掲載誌を知って冷汗かいたけど。
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犬に化身させるからといって、ただむぅっとするようなずっこんばっこん交尾物語かと思いきや、描かれていたのはべったりと湿度を伴った「人間」の情愛であった。歯を剥き出して威嚇し、涎を垂らしながら唸る僧犬や女の姿を見れば見るほど、化身の向こうにある形がはっきりしてきて色濃く「人間」を意識させられる。それは利己的な醜さから来るのだけど、ひん曲がっている醜さではなくて、ささくれがいっぱい出てる太く真っ直ぐな醜さなのだと思った。深い愛ってのも紙一重であり、境遇を思わざるを得なかった。
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「島守」所収
世間の煩わしさを嫌ってやってきた島なのに、遠くの妹のことを心配したり、お世話してくれる本陣と酔って船を出し鮒をとりに行ったり、農作業をする人たちにあたたかい目をむけたり。晩飯の支度をひとりしながら唐突に「ここを離れるのがいやだ と思う。」に切実さが滲む。
なぜ「犬」と同じ所収となったのか。この両極を見よ!…いや実は出発点は同じだったりするのかな…
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犬、というのは暗喩だけれども、あらすじを読んだとき「つまり肉体は堕されても、魂の純潔は保つ話かなあ…」なんて勝手に想像してたけどなかなか。犬にされて、それでも異人の子を産んで、僧犬に害されまいと産んだ子を喰らう娘犬というのも凄まじい描写。
一方で、島守は今の自分の心境にほど近くてびっくりした。湖畔の庵でひとり煮炊きしながら、拾ってきた椎の実を机に並べてみるとか、ほんとそういう時間を過ごしたい。
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読後、パタンと本を閉じ
ぶるぶるっと頭を2,3度振った。
私は今何を見ていたのだ?
この鼻腔の奥に残る、生臭い血の匂いは何なのだ。
あの僧は。
神の為にと、己の全てを捧げる覚悟で、苦行の日々に明け暮れていたのでは無かったのか?
何故、たった一人の女が現れただけで、
いともたやすく神を捨てる気になれたのか?
信仰とは、理性とは、平静とは、誇りとは。
『欲』の前ではとるに足らない…
結局単なる見栄、装飾にしかならないのか。
かの哲学者ヘラクレスは
『万物の根拠にあるのは闘争心である』と説いた。
実際、
正しいと信じて疑いもせぬ、良心や道徳に背く時、
ほんの少しの…快感を感じる事は…無いだろうか。
ある。実はある。
だが、いや、しかし。
私はすがりたい。
著者が此の世界には描かなかった救いの糸に。
その糸を調達しなけらばならないのは読者であり、
その糸を伝わって、別世界を創造するのも読者の役目だ。
太古より議論されてきた
欲と理性…
人はどちらで創造されているのだろう…
わかるわけない。
ただ、ゆっくり丈夫な糸を編み込んでいたいだけだ。
愛、なぞ込めつつ。
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大正時代に発表された小説で、昔のインドの話。
シヴァ神に使える醜い苦行僧が、若い娘に恋をする。
だが、その娘は敵国の若い武人の子を宿し、別れてなお、その武人を恋い慕っているという・・・
嫉妬に狂う苦行僧は、得意の呪術で娘もろとも犬の身体に変身して・・・
ってな内容なんですが、甘っちょろさナシの見事な内容。文もうまいし、ムダがなくてグングン読み進みます。
舞台は昔のインドですけど、今も変わらぬ人の悩みを描いてますねぇ。
個人的な“脳内挿絵”は手塚治虫でピッタリ。ブッダとか、桐人賛歌とかあるしね。
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『犬』のほうは内容的にものすごい作品なのですが、一緒におさめられている『島守』が読みたくて、購入。
『島守』で一番感じたのは、擬態語のとても巧みな使い方。一つの段落だけでいくつもの擬態語が使われ、それがとても心地よくイメージと結びつく。或る意味ストイックといえる、自然のなかの、簡素な生活の淡々とした描写の裏に、その生活を愛し、慈しむような感情を感じました。
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『犬』
言葉づかいとその文章が、とてもねちっこく感じて、作者の中勘助さんは、ねちっこい性格の人なのかなぁと思った。
話としては憐れむような、でも結局のところどうしようもない。
本当に、どうしようもない…。
中勘助の独自の恋愛論というものがあとがきに書かれていたが、『犬』読了後、「恋ってなんだろうな…」なんて、ぐるぐると考えてみたりもしたが、そんな問いに答えなど出ないものか、でも何度もぼんやり考えた。
『島守』
綺麗で、優しい言葉だなぁと思いました。
読書中、なんとなく、自分の故郷での幼い時分のこと、懐かしさとかセンチメンタルなどの言葉で言うこともできるのかもしれない昔の感覚を、久しぶりに、たくさん思い出しました。
私は普段、小説には物語を求めるところが大きい気がするのですが、このお話は、読んでいて、物語としてしっかり頭の中に残っているようなものではなく、一語一語のみこむのと同時に物語としてはいつの間にか頭の中からは消えてゆき、後には恥ずかしながらノスタルジイとでも言うのでしょうか?、なんとも忘れ難い"なにか"が、心の中に残っているような…そんな小説でした。
また、一般的に質素というのかもしれない食事が、その描写で、本当においしそうに思えました。
最後に、読み終わった後、日付を見直しましたら、これはたった一カ月にも満たない日記なのか…と、その短さを初めて知り、思いました。
ただゆっくりと浸っていられる、心地よい、幸せな読書時間でした。
…
個人的な話になるのですが、今ちょうど学校の課題で中々帰宅できない日々が続いていまして、なので、毎日の短い電車の待ち時間などで少しずつ読み進めた『犬』『島守』は、読み終わるのが心惜しいような、寂しい心持ちになりました。
特に『島守』には、本当に癒されていました。
また、故郷が長野なのですが、元のイメージとしては野尻湖ということで、より懐かしい気持ちになったのだと思います…。
「解説」
解説を読むと、どうしても中勘助その人自身に、ぼんやりとですが思いを馳せます…。
人間の性について…快楽としての性、生殖としての性、私は中勘助ではないので彼の思想を明確に理解することまでは出来なかったですが、改めて色々なこと、今まで考えたことのないようなことも、考えることが出来ました。そして中々の衝撃はありました。
元々中勘助に興味が沸いたのは、彼の著名な作品『銀の匙』の、そのタイトルの綺麗さに惹かれたのですが、実は『銀の匙』は未読でして、なのでまた今度、ゆっくり読みたいと思います。
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肉欲と嫉妬に狂った醜僧のダークファンタジー。獣のほうが性に淡白から余計に人間の精神にある性が執拗にして醜悪に感じられます。
衝撃的な結末も含めて古びない傑作。
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バラモンの醜い老僧侶の嫉妬と性欲。それは、侵略してくる回教徒の若くたくましい男に陵辱され子を孕みつつも恋いこがれる若い女へとその情欲は向かう。自分と女を犬に変身させることで成し遂げようとする。全ては鮮やかに対比され、対比されるところに嫉妬と情欲が生まれるのが人間の本質であり性であるということか。
小品ながら緊密な文体と観念的物語設定には重厚感がある。
実は、著者の代表作「銀の匙」を未だ未読だったりする。
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57歳での結婚式の朝に、廃人となっていたお兄さんに
自殺されたそうで、その経緯が書かれた、菊野美恵子の「中勘助と兄金一--『銀の匙』作者の婚礼の日、兄が縊死した……衝撃の新事実」を探してますが、なかなか。
http://ci.nii.ac.jp/naid/40001924183
昔の「新潮」を古本屋で探すしかないのか…皆さんが仰っていますが、「銀の匙」とは違います、と私も言っておこっと。穏やかな気候のこの季節に敢えてこういうものを読まなくても…とは我ながら思いましたです。
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新聞の読書欄に書評があって興味を持ち図書館で借りて読んだ。想像以上に凄い内容。この時代、川端康成、谷崎潤一郎、江戸川乱歩などもかなりエロティックな小説をかいているが、この小説は、それ以上に人間の奥底にある性的な感情を鷲掴みされるような思いがした。気が弱い人は避けた方が良さそう。