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紙の本
現代本格ミステリの傑作
2004/04/13 07:13
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:明けの明星 - この投稿者のレビュー一覧を見る
僕はスラデックの作品ははじめて読みました。本職はSFだそうですが、これはミステリー史に残る傑作だと思います。
まず第一に、この作品で評価したいのは、直球勝負を試みていることです。最近の推理小説は、マンネリズムを防ぐために様々な趣向を凝らしてあります。たとえば社会派推理小説や、犯罪小説や、ハードボイルドなどは、探偵小説の一定の枠組みから逸脱することで、新鮮な魅力を具えようとしました。最近の新本格派も、その点では、様々な工夫を凝らしているようです。
一方、この作品は、推理小説の伝統的な枠組みに、敢えて忠実であろうとしています。たとえば、密室殺人、不可能犯罪、不思議な暗号、推理小説好きならわくわくせざるを得ないようなテーマを、現代風に取り扱っています。しかも、最後は登場人物全員を集めて、名探偵による解決披露がなされます。こういう定石にあくまで則っていることが、第一に僕が高く評価したい点です。
第二に、動機の伏線の張り方が絶妙だということです。これは詳しく述べません。ホワイダニットとしてもとても優秀です。
第三に、これはこの作品を有名にした点でもありますが、トリックの斬新さです。また従来のトリックを巧妙に組み合わせて、不可能犯罪を作り上げるということもやっています。
解説で鮎川哲也先生が誉めておられますが、それだけの価値はある一品です。最近の作家で僕を熱狂させたのは、初期のコリン・デクスターくらいですが、これはとてもいいと思います。
紙の本
よくできたミステリ
2002/01/05 12:57
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ピエロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦争がもとで長い間中断していた探偵小説愛好家の集まりを何年ぶりかで開催しようとしたところ、メンバーが不可思議な状態で死んでいるのが見つかる。これを発端に、他のメンバーのもとにも一見イタズラのようにみえる事件が次々と起きる。いったい誰が何のためにこんなイタズラをしているのだろう?
メンバーは全部で七人、それが次々と殺されて容疑者は減っていくのに、最後の最後まで犯人はわからない。作者のジョン・スラデックは主にSFを書いているそうですが、本書はホントによくできたミステリです。小道具も効果的に使われていて、何件か起こる事件のトリックもなかなかのでき。特にトイレでの密室殺人のトリックは、よくこんなこと考えついたもんだと感心させられます。このトリックを知るためだけでも一読の価値はありますよ。
紙の本
某助教授のモデル?教授探偵サッカレイ・フィン登場
2002/03/01 00:14
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投稿者:キイスミアキ - この投稿者のレビュー一覧を見る
有栖川有栖氏がけっこう好き、と発言されていたのを講演会で聞いてから、読みたいと思っていたサッカレイ・フィン教授を主人公としたミステリー。
作者の書いたたった二作のミステリー作品のうちの一つ。もう一作は「黒い霊気」。スラデックという作家は、たった二作の長編を残したのみで、あとには高い評価だけを残しつつ、ミステリ界からあっさりと消失してしまったらしい。
年齢も職業もバラバラな、七人のミステリファンが集まっていた《素人探偵七人会》。その例会が行われているシーンから物語は始まり、メンバーの一人である女性が、数十年ぶりにその集まりを復活させる計画を立てたことがきっかけとなったのか、連続殺人が起こる。
メンバーの一人であったストークス少佐は、素人探偵七人会に所属していたころから、偏執的なまでの危機感を抱き行動していた反共産主義者の人間だったが、ひさびさにサークルの会合を計画したフェアロウ夫人から届けられた誘いの手紙に対しても、理解に苦しむ妙な対応を示す。ストークス少佐のことを案じつつ、彼から届けられるという謎についての手紙に興味を持ったフェアロウ夫人は、古い郵便チェス仲間であるフィンに捜査を依頼する。
そうして事件に関係したフィンが、連続殺人事件に発展した事件を解決するという、素人探偵が主人公の本格ミステリ。特に素人探偵というところにこだわりがあるらしく、フィン教授は依頼に関しても報酬を受け取ることはなく、実費を払って貰えればという台詞を口にする。
そのような立場をとっていながらも、警察の捜査に協力した過去の実績を持っているらしく、首席警部ともつながりを持ち、捜査に協力させている。このあたりでフィンの設定が、火村の職業をはじめとする設定のモデルであることが確認できる。
タイトルはこの事件における殺人者のこと。見えないグリーン氏はいったい誰なのか? という謎が解けた時、ああなるほど、有栖川氏が「ちょっと好き」と言っていただけのことはあるなと思った。
ただ、あとがきで鮎川哲也氏が書いているようには思えなかった。犯人は、僕の推理した通りにあの人だったから。久々に犯人を真面目に捜してしまい、本格作品の良さを再確認することができた。自らが探偵の気分になり、楽しむことができる、現実ではないけど、本を読み終わるまではリアルな世界が、本格ミステリなのだろう。