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紙の本
サトクリフの化身、ドレムが主人公
2002/10/10 21:42
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Yan - この投稿者のレビュー一覧を見る
小学校五年生の時、担任の先生が読み聞かせてくれて感動した本です
イングランドの南部サセックス州の白亜層の土地に住む部族の
片腕の不自由な少年の成長と挫折を描いた物語
時代背景は、彼ら(ケルト人)がまだ青銅の槍を使っていたことから
「ケルトの白馬」より前の時代のようです。
部族の少年達は12歳になると大人の戦士になるための訓練を
「わかものの家」で3年間受けるしきたりでしたが、
その卒業試験としてオオカミ殺しに成功しなければなりませんでした。
ドレムは片腕が不自由なため、祖父や母からもその試験に失敗して
死を選ぶか、部族から離れて
羊飼いになるかも知れないことを危惧されていました。
仲間だと思っていた同年代の少年から浴びせられた差別の言葉に
自分の住む世界が違うことを悟るドレムですが
唯一理解を示してくれた族長の息子ボトリックスとの友情を
はぐくみながら、戦士への道を歩みます。
でも、ドレムは最後のオオカミ殺しに失敗し、死ぬこともできず
羊飼いの中に入ります。
羊飼いはドレムの属する民族が支配した先住民で
奴隷に近い存在なので、
そこで生きることは死よりつらいことなのでした。
在る冬の日、ドレムは宿敵のオオカミに出会い、
瀕死の重傷を負いながらも
そのオオカミを倒して一年遅れで戦士の証しをもらいます。
他の人とは違っている、劣っていると周りが思い、さげすむ中で
挫折し、うちひしがれながらも勇敢に戦い、自分の座を獲得していく
少年の姿が感動的です。
作者自身、体が不自由であったこと、自分の姿を重ね合わせていたこと
を知ればもっと深い読みができると思います。
この本が再版されて読んだとき(1994年)に
気がつかなかったことがありました
・主人公のドレムが赤毛なこと(ケルト人の特徴です)。
・小さい黒人がターヌの子孫と呼ばれるイングランドの先住民で、
ケルト人との混血によって「ケルトの白馬」のルブリンのような人物が
現れたこと。
・ケルトの古い誓いがこの本に2度も出ていること。
・「第九軍団のワシ」に出てくる、けものの頭をかぶった司祭たちが
ここにも出てくること
ドレムがルブリンに、ルブリンが「王のしるし」のマイダーに生まれ変わって
登場しているとしか思えません。
紙の本
骨太で読み応えのある作品
2002/03/30 19:49
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かけだし読書レビュアー - この投稿者のレビュー一覧を見る
頁数だけみればこれよりも長い物語は幾らでもあるが、とにかく密度が濃い。児童文学にも最近は、分かりやすくディフォルメされた記号のようなキャラクターが増えてきたが、この作品に登場する主人公の少年は作りものの匂いが全くしない。
怒り、哀しみ、喜び、そういった感情の揺れが非常にリアルに描かれている。子供は大人が思うほど単純じゃない。そういった過ぎ去った子供時代をふと思い起こさせてくれる。片腕に障害を持つことが負い目となっている少年の、自分の居場所を確保しようとする切実な戦い。特に序盤では自分一人の力で獲物を仕留め、猟犬を手に入れた場面で誇らしく叫ぶ少年の姿が印象的だった。
終盤の思いがけない生活を強いられた際の、何処か自暴自棄になってしまう部分なども綺麗事では片づけられないリアルさがある。他者から認められた時に心の余裕が生まれ、少年はひとりの少女の存在に気づく。長く険しい人生の道程に添えられたささやかな喜び。派手さはないもの、骨太で読み応えのある作品だ。