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紙の本
本物の王とは
2002/10/08 12:01
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投稿者:Yan - この投稿者のレビュー一覧を見る
奴隷で、剣闘士のフィドルスは、
闘技場で友人を殺して自由の身になります。
行く先の目的がわからないで町で暴れている彼をとらえたものは
「ダルリアッド族の王の替え玉」になるということでした。
ローマがブリテンを支配していた絶頂期のころ、
北辺のスコットランドには
太陽の神を信仰するダルリアッド族と
大地の母を信仰するカレドニア族とがいて
互いに争い、交わりを持っていました。
ダルリアッドの王の位を簒奪したのがカレドニアの女王リアサンでした。
前の王の息子マイダーの「王のしるし」の額の刺青を傷つけ、
盲目にし、追放したのです。
七年ごとに王が交代するという大地の母の信仰を
押し付けられていたダルリアッド族は
マイダーに瓜二つのフィドルスを替え玉にして、
武装蜂起を企てたのでした。
この話の要点は、にせものの王であるフィドルスが
戦いを重ねていく間に、真の王に変わっていく心の葛藤だと思います。
マイダーのいとこのコノリーとの友情、
気のすすまなかったマーナ(リアサンの娘)との結婚、
そのあとに芽生えた愛、リアサンへの憎しみが
氏族の憎しみと同じだと感じたこと……
小さい黒人(エピダイ族)の族長が
黄金チドリの羽根をもう一度見ることがあれば
そのときは真の王になっているだろうという
魔法の言葉をフィドルスに言います。
フィドルスがローマ軍の人質にされ、
「人質のままか、王の解放で氏族の兵士を1000人よこすか」
という選択を迫られて、氏族のために自らの死を選んだ時
まさに黄金チドリの羽が見えたのです。
「太陽の光線が目を射た。その金色のめくるめく光は、
フィドルスの額に印された
馬族の王のしるしにあいさつを送っているように思われた」。
フィドルスが、ローマの砦の上から身を躍らせて死んだそのときに
ダルリアッド族は救われ、フィドルスは王になったのです。
母を追われ憎しみを抱いていたマーナがフィドルスを王と認め
心を許してゆく場面が私は好きです。
彼女もマイダーのいとこに当たるのですが
フィドルスをにせものとどこかで感じながら、
王として人として彼を受け入れていく
彼女の強さが好きです。
髪を漂白し、アクセサリーで飾り立てたいとこのコノリーの印象は
軟弱に思えましたが、彼がフィドルスと交わした誓いに感動しました。