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紙の本
異国を感じるとき
2004/04/07 15:42
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投稿者:ガブリ - この投稿者のレビュー一覧を見る
人はどんなものに異国情緒を感じるだろうか?
私が訪れたことのある数少ない国々、英国、アメリカ、タイ。この中で最も異国を感じたのは同じアジアの国であるタイだった。
文化や建物ではなく樹や草花に強くそれを感じた。日本で高級花とされるランはさておき、名も知らぬ色鮮やかな花々や樹々が堂々と存在を主張し、見知らぬ異国にきたおぼつかなさを感じさせてくれたのだ。
日本で目に入る草花や樹の知識にはいささか自信があったし、英米の旅行の際にも名前はわからなくとも日本に似た植生だったので頭の中がクエスチョンマーク一杯になるようなことはなかった。
しかし、タイではすべての植物が緑濃く色鮮やかに迫ってくるような衝撃を受けた。その昔、欧米のプラントハンターたちが熱狂したのも無理はないと思った。
帰ってからあの雰囲気を再現してくれるものはないかと植物事典なども眺めたがどうも物足りない。そのときに見つけたのがこの本だった。
装丁からすでに雰囲気がある。更紗文様に金、赤、黒を配し、日本風のようでいて異国を感じさせるカヴァーは日本の伝統文様の多くがアジア渡来のものだと思い起こさせる。
著者のレヌカー・ムシカシントーン(旧姓 秋山良子)さんは1940年生まれ、デリー大学留学中に知り合ったタイ人と結婚しバンコクに住んでいる(この本は1988年の出版なので現在はわかりませんが)。
タイの動植物のタイトルをつけた60編近くのエッセイがこの本には納められている。バンコクの日本人向け新聞「バンコク週報」に載ったものだそうだ。
樹や花や動物から思い起こされるエピソードが幼少期の思い出、留学中や旅先で出会った人の思い出、身近なことなど縦横に語られる。敗戦後の貴重なバナナの話はタイのバナナの話と絡まり異国の不思議な余韻を残しておわる。著者の中にタイの風土がしっかりと根付いているのが感じられるのだ。
著者にとっては日常から思い出されるエピソードなのかもしれないが、私にとっては慌しい日本の日常から遥か遠くの異国に抜け出たいときに手に取る一冊となっている。