紙の本
すべての謎は解き明かされた?
2000/12/22 12:09
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投稿者:tosh - この投稿者のレビュー一覧を見る
数あるホームズ・パロディの中でも飛びぬけてすばらしい作品です。著者は、ワトソン博士の未発表手記の形をとりながら、「最後の事件」におけるホームズの死から「空家の冒険」における突然の復活の間にあるギャップを、奇想天外なエピソードを散りばめながら埋めていきます。
ホームズの死と復活の真相とは?モリアーティ教授とは本当は誰なのか?なぜワトソンはホームズが死んだというデマをでっち上げなければならなかったのか?著者はこれらの謎に説得力あるストーリーで答えていきます。
ストーリーは、悪化したホームズのコカイン中毒をなんとか治療しようとワトソン博士が試みるところから始まります。しかし、余りにもひどい症状にワトソン博士はウィーン在住の著名な精神科医、フロイト博士に助けをもとめるべくオーストリアに向かいます。果たしてホームズはコカイン中毒から立ち直れるのでしょうか?そして、ウィーンで起こった怪事件に、ホームズとフロイト、この2つの偉大な頭脳がどんな活躍を見せてくれるのか?著者は、偉大な頭脳とホームズの対決という格好をとりながら、読者を興ざめさせることなく、これをすばらしいドラマに仕立て上げています。
本当にこれがホームズの「死」の真相だったのか、と説得させられてしまうような作品です。
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ホームズ・パロディの傑作
2002/07/30 18:01
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投稿者:木野下 - この投稿者のレビュー一覧を見る
数あるシャーロック・ホームズ・パロディの中でも、人気、評価と共に高く、傑作とされている作品です。
ハードカバーとして出版され、文庫化され、そして絶版にいたる。これが、他の翻訳ミステリと同様に、多くのホームズ・パロディが辿る道筋なのですが、本作だけは別のようで、未だに文庫として版を重ねているのか、新品を扱う書店でその姿を見ることが出来ます。このエピソードからも、本作がいかに多くのファンを獲得しているのかがわかります。
重いコカイン中毒患者となってしまったホームズを救うべく、友人のワトスンが考えた手立てとは、宿敵モリアーティーを餌にホームズを誘いだし、ウィーンまでやってきたところをフロイト博士に任せてしまうという作戦だった。
長編パロディの嚆矢として評価の高いこの作品は、作者ニコラス・メイヤー自身の脚本によって映画化されています。またメイヤーは、共同脚本・監督として映画『スター・トレック』の2と6に参加しています。シャーロキアンとSFファン、とりわけトレッキー(スタートレックファンのこと)は重なる、と言われますが……。なにも今に始まったことではないようです。
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重度のコカイン中毒になってしまったホームズを治療するため、ワトソンは「宿敵」モリアーティ教授を劣りにつかっておびき出す。
目指すはジグムント・フロイト博士の元・・・。
決して、スーパーマンではないホームズの姿を描いていますが、ユーモラスで非常に楽しいホームズ・パスティーシュです。
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パスティーシュ。コカイン中毒の治療のためドイツに来たホームズとワトスンが、そこで遭遇した事件にフロイト博士と挑む! 興奮と感動。文句なしにおもしろいです。PART2もあり。
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コカイン中毒で自分の元家庭教師のモリアーティを悪の組織の首領と思い込んだシャーロック・ホームズ。ウィーンでコカイン中毒を治療する医師がいると聞いたワトスンとマイクロフトの囮作戦。ウィーンでホームズの治療にあたるフロイト博士。禁断症状を乗り越えたホームズにもたらされた事件。橋の上から川に飛び込んだ記憶を失った女性の事件。女性が監禁されていたと推理したホームズ。自分の名前をドイツ皇帝の従兄弟の妻となのる女性。父の後をついだランスドルフ伯爵の秘密。世界大戦を防ぐために伯爵を追跡するホームズ。
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ホームズがコカイン中毒になって、フロイト博士の治療を受け、回復する過程で事件も解決する、という、大胆なパスティーシュ。つじつまをきちんと合わせているうえ、ミステリ的にも面白い。
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重度のコカイン中毒により、人畜無害なモリアーティ教授を世紀の悪党と思い込むシャーロック・ホームズ。彼を心配した親友ワトスンは、シャーロックの兄マイクロフトと共にある作戦を打ち立てた…。
ホームズとワトスンの絆、ジクムント・フロイトとの共演、パスティーシュらしい推理、スピード感溢れる決闘、ホームズの知られざる過去…内容は盛りだくさんだが、すっきりとまとまっている。
前半はホームズの変わりようとワトスンの心中を案じて少し切なく。後半は「四人の署名」を思わせる手に汗握るチェイスで熱く。そしてラストはこれまたちょっと切なく。
全体的に愛の溢れた物語だった。ホームズとワトスンの友情物語と言っても間違いじゃない。なのでこのコンビが好きな人は是非読まれたし。ワトスンが健気に頑張ってくれるので、ワトスニアンにもオススメ。
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コカイン中毒に侵されてありえない幻覚を見始めたホームズを、ワトソンがなんとか救おうとするおはなし。
トビー(もしかしてトビー・ダイクってこの犬からきたのかな?)やあのフロイト先生も出てきて、登場人物たちはみな愛嬌があって面白いし、なによりメイヤーの書き手に驚かされた!ここまで再現できるなんて、うっかり勘違いしそうになるくらい、違和感なしに読めた。
他のも読んでみたい。ぜひ!
個人的に面白かった場面は、汽車の中でのホームズとワトソンの会話。この車中に乗っているかもしれない天才たちがなだれに遭ったら人類にとって計り知れない損失になるといって嘆くホームズに、ワトソンは「また別の新しい天才が生まれるさ」と答えている。
面白すぎるよワトソン・・・
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本当のホームズ作品にも劣らない、夢中になって読めるし、ホームズ好きに一読をお勧めする(できる)本。
最初は何も知らずに、新しいホームズの作品が出たのかと思ってしまった。
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1975年イギリス推理作家協会賞受賞
原題は『THE SEVEN PERCENT SOLUTION』(7%の溶液)
『四つの署名』でシャーロック・ホームズが使用したコカインの濃度の意。
私(ワトソン博士)が結婚し診療所を開業してから、シャーロック・ホームズとは疎遠になっていた。
ある夜、ホームズはいつになく動揺した様子で現れ、「ロンドンで発生している迷宮入りの事件の多くはモリアーティ教授が首謀者であり、教授の手下に命を狙われている」と告げると眠ってしまった。
目を覚ましたホームズはモリアーティ教授の話を覚えておらず、コカイン中毒による幻想だろうと思った。
ところが翌日、60代の数学教師モリアーティが訪ねてきて、ホームズに付け回されていると訴えた。
彼は昔、ホームズ家で数学の家庭教師をしていた。
私はホームズに治療を受けさせるため一計を案じて、モリアーティをウイーンに行かせる。
計画どおりホームズは追跡を開始し、医師ジクムント・フロイトの家にたどりついた。
ホームズはフロイトの人間像を部屋の状態から言い当てるが、なぜおびき出されたのかについては見当つかないと答える。
「自分の非を認めるより、自分を救おうとした人達を裏切ることを選ぼうとしているホームズに失望した」とフロイトは言う。
「自分の意思の力で駆逐できなかったのに、あなたに何ができるか。最初の1歩を誤って踏みだしてしまった者は永久に破滅の道からそれることはできない」と言うホームズに対して、
フロイトは「破滅の道からきっと抜け出すことができる。多少の助けが必要だが、一歩踏み出したら最後というわけではない」と諭す。
そして、催眠術と鎮静剤を用いた禁断症状を抑える治療が行われる。
ホームズが回復に向かっているなか、事件が起こる。
それは、自殺未遂で収容されたヒステリーの女性を診てほしいというフロイトへの依頼から始まった。
女性の名前はナンシー・スレーター、アメリカのロードアイランド州出身で、オーストリア皇帝の親戚にあたるフォン・ラインスドルフの未亡人だと名乗った。
ホームズはナンシーが手足を縛られて屋根裏部屋に監禁されていたことを見破る。
その夜、オペラ・ハウスには故フォン・ラインスドルフの息子(バロン)と未亡人ナンシー・スレーターの姿があった。
バロンは以前、フロストがユダヤ人と揶揄されたことから、テニスの試合を行い、負かした相手だった。
<解決篇>
ラインスドルフの未亡人は「彼女は小間使で、フォン・ラインスドルフが死んだ後、行方不明だった」と言った。
「教会の活動を手伝ったことがあるか」というホームズの問いに、「教区の福祉活動に熱心だった」と未亡人は答えた。
スレーター家はクエーカーという宗教に属しており、教会にはいかず、福祉活動を教区の活動とは呼ばないとホームズは説き、
息子のバロンが父親を殺し、義母のナンシーを監禁し、偽物を未亡人に仕立てたと推理する。
その夜、病院からナンシーが誘拐される。
「彼女は殺されてしまう」と失望するホームズに、フロイトは「義母に対する憎しみが強いからすぐ殺したりはしない」と言い、
「憎しみの要因は、実の母親に対する強烈な忠誠心と献身」と説明する。
バロンを追い駅に着いたときには、3時間前に特別列車を仕立てて出発した後だった。
機関車で後を追うが、途中で石炭を使い果たし、次々と客車を解体して燃料とした。
とうとう可燃物が尽き、あきらめかけたとき、特別列車の切り離された客車にホームズは飛び乗った。
列車の上でバロンとの決闘が始まった。
ホームズは劣勢で腕を負傷したが、バロンは自ら足をすべらせ、ホームズの剣に刺さり転落した。
トランクに押し込められていたナンシーを救い出すと、ホームズは私の腕の中に昏倒した。
ウイーンを去る前にお礼をしたいというホームズに、フロイトは催眠術をかけさせてくれと言う。
「人類を研究する最良の方法は個々の人間を研究することだから」と。
催眠状態のホームズは「なぜ探偵になったのか」という問いに、「不義を罰し、正義を行われるのを見るため」と答える。
彼の知る不義は「母が父を裏切り、愛人を作った」、そして正義は「父が母とその愛人を殺した」と語る。
その事実をホームズに教えたのが家庭教師のモリアーティだった。
「彼はこの事実を認めることができないから、われわれには何もできない」とフロイトは告げる。
フロイト一家に別れを告げたホームズは「自分をとり戻す時間がほしい」と、ひとりミラノ行きの急行列車に乗り去って行った。
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大好きです。
仕掛けられた推理をするホームズと、ハラハラと見守るワトソンのコミカルな心情、フロイト博士との駆け引き、薬と格闘するホームズとワトソンくんの対話は切ない気分にさせられて、イキイキとしたいつものホームズの冒険譚へなだれ込んで行く。最後はちょっと淋しいけれど、とても締まりのある終わり方だったと思う。
この一連の流れを全部一冊の本で描かれてしまうのはもう感服です。
楽しかった。ウエストエンドの恐怖も読んでみたい。
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シャーロッキアンなら、たまらない一冊。あの敵役モリアーティ教授とライヘンバッハの滝で行方不明となり、「空き家の怪事件」で生還するまでホームズは何をしていたのか、その真相を公開したワトスン博士の未発表の手記である。
まあ、本当はニコラス・メイヤー氏のパスティーシュなのだが、ファンにとっては極めて嬉しい一冊。ジークムント・フロイトがサブ・キャラで登場するのも楽しい。
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最後の事件やモリアーティについての事実はこうだった、というタイプのパスティーシュ。
ホームズのコカイン中毒がひどくなり、フロイトに診てもらうことに。
事件もあり、最後の方はハリウッド映画のような場面もありで面白かった。
ホームズとワトソンの関係性もぐっとくるものがあって良い。
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2019年4月に読了。登録し忘れてた。
ホームズのコカイン中毒を心配したワトスンが、うまく理由をつけてドイツへ連れていき、フロイトに治療してもらうという、秀逸なパロディ。(あー、でも細かいところ忘れてる。最後、列車の追っかけっこみたいな展開になるのはなぜだっけ?(^_^;))
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1976年に映画にもなったホームズ贋作の傑作長編。コカイン中毒のホームズを医者にみせるためにモリアーティ教授をおとりにウイーンに誘き寄せる。ウイーンでホームズを迎えたのはジグムントフロイト博士。2人は奇妙な事件に巻き込まれる!どうもホームズがライヘンバッハの滝に落ちた後の大空白時代に起きたことらしい。70年代はホームズ物のパロディが多く書かれた時代だが、ホームズの描写も正確なうえにワクワクさせるエンタメ感が素晴らしく冒険小説としてのホームズ贋作長編はこの本が一番面白かったと思う。