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紙の本
がっかり
2006/12/20 16:27
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
小田部雄次さんの著作「家宝の行方」「華族」がいずれも面白かったので、本書も読んでみたが、無味乾燥な記述が延々と続きがっかりさせられた。徳川義親は第19代尾張徳川家の当主であり、他の華族が没落していく中で、理財の才に長け、財産を失うどころか、むしろ増やした稀有の人である。ただ、その使い道が宜しくなくて、要するに軍部と結託して日本の政治体制を転覆しようとした右翼勢力と密接に結びつき、彼らに数十億円もの資金提供したスポンサーだったのである。日本が辛うじて維持してきた民主主義体制、立憲君主体制を崩壊させたのは右翼のテロであり、暗殺政治であった。その背後で彼らテロリストに資金を提供し、面倒を見ていたのが徳川義親だったのである。義親から資金提供を受けた清水某が設立した右翼結社「大行社」は今も健在で都内で街宣車を走り回らせては大企業や政治家からお金を脅し取ろうとしている。日本の政治体制をずたずたにしたけしからん軍人の総元締めの一人に桜会の親玉・橋本欣五郎がいるが、彼に資金を提供したのも徳川義親である。著者の小田部教授はサヨクであり、その歴史観は「十五年戦争」という呼称にも端的に表れている。その割には右翼の総元締めだった徳川義親の思想や動機にちっとも迫れていない。別に義親がかかわったわけでもない「南京事件」に延々と触れているところも解せない。徳川義親が南京大虐殺にノータッチだったにもかかわらず、ここまで南京事件について記述する必要があったのか、正直理解できない。収穫は徳川が建てたチューダー様式の豪邸が西武の堤義明に売却され、それが野辺山に移築されて「八ヶ岳高原ロッジ」の目玉として今も現役で残っていることくらいか。米国で公開された「徳川義親日記」を頼りに本書を執筆したのは良いことなのだが、テーマがテーマだけにもっと深く掘り下げれば非常に面白い本に仕上がったはずである。真に残念だし惜しいことである。(追記)石原産業も創業者の石原広一郎は胡散臭い日本軍の出入り業者みたいな奴だったんですね。