紙の本
優しいだけでない童話
2023/04/16 10:14
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投稿者:りら - この投稿者のレビュー一覧を見る
一房の葡萄、子どもの頃に学校で読んだ気がするが、最後までの記憶がない。
今回改めて読み、こういう結末の話であったかとなんだかほっとした。
その他の話も、温かいとか優しいだけではなくて、こどもにはよくある、調子に乗りすぎて恐ろしい目に遭う話あり、不思議な夢やつらくかなしい別れの話であったりと、子ども向けにしてはっきりシニカル。
でも、そういうのが逆に身近に感じられていいようにも思う。
本の装丁や挿絵も作者が担当した思い入れのある本のようだ。
文庫でありながら、当時の雰囲気を感じさせる作りはさすが岩波。
昔の活版印刷の活字のインクの匂いさえも感じられるようであった。
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有島武郎が生前に残した創作集は『一房の葡萄』ただ一冊である。挿絵と装丁を自ら手がけ、早く母を失った3人の愛児への献辞とともに表題作ほか3篇の童話が収めてある。
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有島武郎の「童話」です。
この童話の制作を思い立ったのは、男手ひとつで子供を育て上げる苦労を味わいながら、すでに学齢期に達した3人の子供に、「精神の糧を与えてあげたい」という父親らしい動機から書かれたそうです。
まだこの時代は子供の世界が独立したひとつの世界として考えられていない時代で、子供は小さな大人というふうに捉えられていた。
だから、「子供をして子供求むるものを得せしめる、それはやがて大人の世界にある新しいものを寄与するだろう。」という意図で書かれたようです。
どの話も、テーマがしっかりしていて「うそ」「死」「夢」「詐欺」といったものをリアリティを持たせながら書かれている。
ふつう童話っていうのはリアリティを求めないことが多いのに対して、この童話はそういうものをむしろ突きつけている。
想像力をかきたてるような夢のような童話も必要なのかもしれないけど、人生の本当を知らせてあげることも必要なのかな。
表題作の「一房の葡萄」が一番すきかな。
先生の優しさに包まれて終わる感じがよかった。先生は第二の母だもんね。
一番初めのページに載せられている有島武郎と子供3人の写真がいいです。
すごく優しそうなお父さんです。
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「一房の葡萄」「溺れかけた兄妹」「碁石を呑んだ八っちゃん」「僕の帽子のお話」「火事とポチ」の5篇を収録した童話集です。
有島武郎が生前に残した創作集は『一房の葡萄』ただ一冊だそうです。こちらは前述の「火事とポチ」以外の4作品が収録されているそう。挿絵と装丁も本人が手がけたとか。
「一房の葡萄」・・・どっかで聞いたことがあるよーな、と思っていました。読んでみたら、「アッ、これ知ってる!」と気づきました。
が、どこで読んだのかさっぱり解らない。
アニメで見たような、道徳の教科書で読んだような・・・よくわからないですがストーリーはよく知っているものでした。
もし同世代で同じく知っている人が居たら教えて笑。
小さい頃の気持ちがすごく的確に表現されています。
見事な童話。
小さい頃、悪いこと(ここでは、人のものを盗むこと)をすると、相手が自分のことを見透かしているんじゃないだろうかと思ったり、心臓がドキドキしたり、体がぶるぶる震えたり。ちっとも良いことなんかありゃしない。
そんな気持ちがすごくわかります。私はものを盗んだことないけど人並みに悪いことぐらいはしているので、あ〜こういう気持ちになったなあ!って思いました。
「溺れかけた兄妹」「碁石を呑んだ八っちゃん」も小学生ぐらいのときにはよく経験する気持ちです。
自分のことばっかりしか考えてなかったり、人にやきもち妬いたり。
姉や兄の人はいっそう良くわかるんじゃないでしょうか。
「火事とポチ」は泣ける・・・。
今でも普通に道徳の教科書に載りそうな作品でした。
もしかして載ってる?
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有島武郎の童話集。
『一房の葡萄』
『おぼれかけた兄弟』
『碁石を飲んだ八っちゃん』
『火事とポチ』
小学2年か3年のときに、吸い込まれるように読んだ。
完成度が高くオススメです。
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●一房の葡萄
先生とは、ひとりの幼い人間にとってどのような存在に映るものなのだろうか。学校とは、家庭を離れたひとつの社会で、生徒が人の愛を感じる場所のことを指すのだろう。
いつも完璧な先生もいいけど、一人ひとりの人生のターニングポイントを大切に見守って、愛を差し出せる先生って素敵だ。私もそんな人になりたい。
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小説というより童話です。
中学のころに初めて読み、今回でもう何度目かになります。
この本は、子供の他愛のない事件を描き、その後悔や悲しみや喜びの移り変わりを
丁寧に伝えています。
もともと著者の3人の子供に向けて書かれたものらしいのですが、
大人が読んでも楽しめる1冊です。
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こういうのは雰囲気を作って読んだらますますいいだろうと思ってわざわざ箱根に出かけた。小高い山の上の温泉につかって風に吹かれながら座敷に寝ころびいい調子で読んだ。80年以上前の逸品。著者唯一の単行本。童話。子どもたちの為に残した遺言書なのか。ジムと僕と先生と西洋絵具。そして一房の葡萄。『・・・そういって先生は僕のカバンの中にそっと葡萄の房を入れて下さいました。僕はいつものように海岸通りを、海を眺めたり船を眺めたりしながら、つまらなく家に帰りました。・・そして葡萄をおいしく喰べてしまいました。』今年、夏の思い出の一冊。
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一見すると、とても平凡な才能に感じる。しかし、肝心なのは、文章表面に付着する物語のテクストではないと思う。それは、その文体の内面を流れる虚しさにある。彼にとって、何か大きなものに虚しさを抱え葛藤していたように見える。その深淵は、実はとても深いものがあるものだと感じた。しかしその哀愁は表面上の幸福によって隠されている。しかし、無意識の中に、自然とその彼の哀愁が伝わってくるからこそ、人々に乾いた安らぎをもたらすのだと思う。その安らぎとは、大きなものに絶望した、その中での、小さなものに対する愛情であると思う。
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有島さんの唯一の生前作品。
幼少時代にこういうことあったなぁ~と、懐かしく温かい気持ちにさせてくれました。
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渋くて苦くて、そのくせ飛び切り甘い。瑞瑞しい葡萄の香り。罪を犯しても差し伸べられる温かい手。物を盗んだことを悔い、思い悩むことは同じでも、ヘルマンヘッセの「少年の日の思い出」は内発的、有島武朗の「一房の葡萄」は外発的なもの。そんな違いを比べながら読むと、また楽しいかと思う。
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短編集だから、一つ一つが短すぎてそんなに内容が深くなかった。
もちろん文章はとても上手だけど、習作って感じでそんなに面白くない。
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たしか「一房の葡萄」は道徳の教科書かなにかで読んだ記憶が。
もう少し前にこの本に出会っていたら良かったのに。
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小学校の、暑くて、風がときおり入ってくる教室にいるような気分になります。有島武郎らしい、あたたかい作品です。
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「-」
久しぶりに児童文学を読みました。
『溺れかけた兄弟』で兄が妹を見捨てるような、児童が読むには強い印象を与える場面もあるとおもいましたが、それこそ現実であるという作者の思いが伝わってきました。『一房の葡萄』では、反省している人に対しては、他罰する必要がない、ということが伝わってきました。これは子どもだけではなく、すべての人が普遍的に心得ることだと思います。
『火事とポチ』も面白く、想像上では犬をいつくしむ気持ちと、しかし、実際に汚れた愛犬を見ると気味悪く思う気持ちとの対比が、まさに子ども心を表していると感じました。