紙の本
時の流れがとまる場所
2001/02/13 22:13
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投稿者:haruca - この投稿者のレビュー一覧を見る
こどもを主人公としたタイムファンタジーが私たちをひきつける独特の雰囲気をもっているのは、「こども」それ自身が時間を感じさせる存在だからかもしれません。着々と成長をつづけるこどもの時間のそとで、急に時間がとまったり時計の針がとんだりしたとき、そこにあらわれる「ゆがんだ時間」はなんとも奇妙に(グロテスクで)魅力的です。少女ウィニーが、104才の「少年」ジェシィに出会ったとき、この美しく哀しい物語ははじまります。
紙の本
死ぬことは、生まれたとたんに約束された車輪の一部
2006/05/19 21:47
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:栗太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
不老不死の持つ、負の側面を描いた印象深い作品です。87年前、タック一家は不老不死をもたらす泉の水を口にしてしまい、時をさ迷う者になってしまいました。老いることなく永久に生き続けることは、彼らにとって呪いであり、苦悩なのです。少女ウィニーにタックは言います。「変化したい。そこが死の世界であっても、わしは変化してそこへ行きたい」
重く切ないテーマを、なおテンポ良く読みすすめ、読後に寂しさと共に清々しい印象が残るのは、主人公のウィニーに負うところが大きいでしょう。ウィニーは、決して可愛らしくみなに愛される性格ではありません。心の奥に救う恐れに苛立ち、孤独で、不安定な毎日を送っています。彼女が成長する姿と、変化を止めてしまったタック一家の対比が鮮やかです。
ある日、ウィニーは森の中で不思議な泉を見つけます。それこそが、不老不死の泉。秘密を知ってしまったウィニーはタック一家に誘拐されてしまいます。タックたちはウィニーに危害を加えるつもりはなく、ただ、泉の水の恐ろしさ、それをもとめて人びとが群がることの恐ろしさを告げ、誰にも言わない約束を欲するだけでした。ウィニーはタック一家に好意を持ち、とりわけ百四歳になる少年ジェシィには心引かれます。けれど、泉の秘密に気づき森を手に入れようとする男が現れ、タック一家のメイが、男を殺してしまい……
この男は、泉の水を商売にしようと思い立つのですが、自分でその恩恵に浴しようとしているかは微妙なところです。彼はタック一家を見世物に、不老不死の泉の水を宣伝し、富を得ようと計画するものの、そのあげく不死に苦しむ愚かな人間たちをあざ笑おうとしているように思えます。
ジェシィはウィニーの前から去る時、泉の水を彼女に渡します。17歳になったらそれを飲んで、自分たちの仲間になってくれと。ウィニーは、その水を、どうするでしょう。
この物語、タック一家は不死の呪いから解放されることはありません。エピローグでは、今もなお時をさ迷い続ける一家の姿が、メイのオルゴールの音と共に鮮やかに胸に浮かぶ、哀しくも美しいファンタジーです。
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中三の時に読んで以来、今まで読んだ本の中で一番好きな本。分類は児童文学だけど、命に限りがあるということの意味を、どんな世代の人も深く考えさせられる作品だと思う。
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これを読んで、私は「不老不死なんていいもんじゃないな」と
悟りました。忘れもしない小5の居間のピアノの上で読んだ時。
これは第36回青少年読書感想文全国コンクールの課題図書だったようです。
私はこれに出て来る「レモネード」という飲み物にスゴイ憧れました。母に作ってもらったし(笑)
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同じ時間軸で過ごせないことのやるせなさに、涙しました。
不老不死なんて、そんなにいいものじゃないのかもしれません。
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読書感想文書いてください。
永遠を生きるタック一家と常命の少女との儚い魂の交流。サスペンスありで最後はきっと泣けます。
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私はこの本を読んで「人生の終わり」があることの素晴らしさを
改めて感じました。
死はマイナスなことではなく、
新たな出発点でもあります。
死がないことは生に意味がなくなります。
タック家の苦しみが爽やかに描かれていました。
何度も読むべき本です。
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○あらすじ
トゥリーギャップ村に古くから住む地主のフォスター家。
その娘のウィにフレッドは、両親や祖母からの監視にうんざりし、ある日家出を計画します。家出の日の朝、村の人もめったに訪れないフォスター家所有の森に足を踏み入れた彼女は、そこで不思議な泉の水を飲む少年、ジェシーと出会い、彼の家族であるタック一家が泉の水を口にしたせいで永遠の命を手に入れたことを知ります。
(あらすじは参考程度でお願いします。)
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永遠の「生」か限りある「生」か…。もし、選択できたら、自分はどちらを選ぶだろう。平易な文章で描かれていて、読みやすく、ちょっとミステリアスな感じがして、情景描写も素敵な作品ですが、すごく奥が深い。何度も読み返したくなる一冊です。
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ある人の本棚で見つけて。
古い本だけど今でも十分読める内容だと思う。
私はウィニィーとは反対の選択をするかもしれない………。
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(2014再記)
昨晩有川さんのレインツリーの国を読んで、この本を思い出しました。
私にとってのフェアリーゲームは時をさまようタックだろうなと。
中学生のとき、朝読書の時間に読んで、学校なのに、思わず泣いてしまったのをよく覚えています。
物語に入り込み過ぎてしまうこと。
そして涙腺が弱いこと。
今も昔も変わりません(つまり昨日の今日で私は今大変目が腫れぼったいのです)。
昔は今よりもよっぽど本を読む機会があって、レインツリーの彼らが言う(あまり書くとそちらのネタバレになってしまいそう、気をつけなくては)、ある種の作者に裏切られたような気持ちを味わったのは、多分この本よりももっと前だったんじゃないかなぁ。
でも、ぱっと浮かんで、苦しいぐらい思い出したのはこの本でした。
学級文庫と称した、ロッカーの上に置かれた十数冊の本の中にあったうちの一冊であったことは確かだけれど、何故この本を読もうと思ったのかは正直さっぱり記憶にありません。
このブクログの写真の黄色みを8割減したぐらいに日に焼けていたし(そんなことは覚えている私…記憶というのは奇妙です…)、表紙やタイトルに惹かれ…たかなぁ?当時の私。
それよりはたまたま手に取った、の方がしっくりきます。
とにかくこれほどまでに心にくる作品だとは考えもせずに読み始めたことは確かです。
学生には読書感想文なんていう宿題がありますが、私はそれをこの本で書いたことがあります。
(中学生(…もしかしたら高校生だったかもしれない)が児童書で感想文を書くのかよそれはどうなんだい云々…というのはひとまずおいておきまして。)
それも大分ウィニーに対してもどかしさをこの野郎とぶつけるような形で書いた気がします。
水は飲まれずに、使われた。
強烈ですとても。
経年かその時の気分か、あるいは両方でしょうか、読む時によってやはり感じ方は違いますが、少なくとも感想文を書いた時は悲しいという気持ちが強かったのでしょう。
ウィニーがどうということじゃないのですが、彼女への、なんでもっと考えないのだという恨み言を綴った覚えがあります。
どんな感想文だ!でも寂しくてたまらなかったの!というのが何とも貧しい言い訳。
この本のことが忘れられないのは、恐らく、「ままならなさ」を抱くもとがゆらいだからだと思います。
命が、時が、なくなるのがかなしい。
ではなく、あることがかなしい。
これがはじめてだったんじゃないかなと思います。
水もそう、今までの記憶にあるお話だったら、こういうのは一度きりだった。
小瓶にほんの少し、たった一度きりの選択で、でもうっかりその大切な魔法の水をなくしてしまって…という王道パターンのストーリーしか知らなかった。
ところがこの本では、水は泉。
手の届くところにずっとありつづける(と書くと語弊があるでしょうが、何せ学生の頃から児童書で感想文書くような私なので上手い表現ができないのです、お許しを)。
無限なんて、だって、どこまでもファンタジー。
だから���るということは、救いのはずだったのに。
それなのに、ある、というかなしさ、寂しさをこれでもかとつきつけられて、すごくショックだったのでしょう。
中学生の時に出会って、年齢は大人になってうん年経つわけですが、私は未だにこのショックに、どう整理をつけたらいいのか分かりません。
整理がついていないので、きっとまた何かのきっかけで思い出した時には苦しくなる本でありつづけると思います。
ちょっとしんどいけど、しょうがない。
結局は好きな本ですから。
散らばった言葉をなんとか無理くりくっつけ合わせたような気持ち悪いレビューになってしまいましたが、とにかく今、残しておきたいと思ったので記します。
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児童書の中で、一番泣いてしまった本だと思います。
欧米では、非常にメジャーな児童書で、
”エバーラスティング”というタイトルで映画かもされています。
(日本ではDVDも出ています)
子ども向けながら、非常に考えさせられる物語です。
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環からはずれし者たち
【内容】
とある一家の世界を終わらせるほどの秘密を知ったとある箱入りお嬢様は混乱のうちに誘拐されてしまうが、彼らの善良さに魅了もされる。
【感想】
こういう結末も余韻があっていいし、予測もしていたけど、ああいう結末でもよかったなあとも思う。
(2012年11月30日読了)
簡単なリスト
【アンガス・タック】タックはねむっているときだけわらう。(p.16)
【ウィニー】主人公。ウィニフレッド。フォスター家のひとり娘。友だちはヒキガエル。家出を計画中。《でも、わたしはあの人たちがとにかく好きなの。》(p.147)
【ウィニーと世界】たがいによそよそしかった。
【ウィニーとタック家】これまで無縁だった。しかし新たな糸で結びついてしまった。それは彼女を根っこから変えてしまった。
【オルゴール】メイの持ち物。
【関心】自分のものでないときにかぎって、人は関心をもつらしいから。(p.14)
【黄色い服の男】ある日、ふと現れた男。とある家族を探しているらしい。
【ジェシィ・タック】美しい少年。とりあえず17歳。《すてきな時間を心ゆくまでたのしむのさ。》(p.91)
【食事】《知らない人のなかでたべるのはつらいわ。いまウィニーにはそれがよくわかった。ものをたべるとき、人と人のちがいがいちばんはっきりした。》(p.73)
【タック家】変化しない一家。《タックの一家は塩みたいにありきたりの、ふつうの家族なのに》(p.69)
【フォスター家】ウィニーの家。森の持ち主。えらそうにしている。
【マイルズ・タック】ジェシィの兄。やはり美青年。とりあえず22歳。「いつか大事なことをするために、つかいたいと思っている。」(p.108)
【メイ・タック】タックの妻。善良でやさしそうな農婦。
【森】侵しがたい雰囲気。牛も避けて通る。中央にトネリコと泉があるらしい。
【妖精のメロディ】ときおり森から聞こえてくるというウワサ。
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2012.12.14読了。映画とかありそうだな、と思ったらとっくに映画化された作品でした。エバーラスティング 時をさまようタック。内容も終わり方も好きだし、映像も美しいんだと思うけれど久々の翻訳本で、文章に違和感を感じてしまったのでマイナスイチ。仕方のないことだけど、児童書の為平仮名多めで読みづらかったーw
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なぜ不老不死の泉ができたのか、ジェシィとウィニーの細かい描写、ジェシィと別れてからのウィニーの心の揺れなどを書き込めば壮大なファンタジーになっただろうし、映画のようにウィニーをもう少し年上にすれば、恋愛物語にもなっただろう。
萩尾望都の「ポーの一族」みたいな。
でも、そうはせず、シンプルにまとめて、それが結構良い。長すぎず、小学生から読め、読み手によって想像する余地がある。
ラストも、様々な物語に慣れた大人にはあっさりしすぎに感じられるかもしれないが、子どもにはやっぱり衝撃だと思う。自然描写、人物描写は丁寧で印象的。
いい児童文学です。