紙の本
問題児のありがたみ
2002/12/17 12:10
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投稿者:PATA - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は臨床心理学の大家である河合隼雄氏による教育観や学校観を数多くの事例を中心に紹介した書物です。
本書の内容は非常に平易に書かれている一方で、我々教育者が陥ってしまいがちな誤解(曲解?)を解こうとしてくれているような気がします。特に評者が納得させられたのは、問題児に対する筆者の考え方です。少々長くなりますが、本文から引用しますと、「考えてみると、『問題』というものは、解決を求めて提示されるものであり、それを解くことによって得るところも大きいのである。…(中略)…問題児というのは、われわれに『問題』を提出してくれているのだ、と私はかつて言ったことがある(7頁)」。
学校で授業中に騒ぐ子どもは授業に問題があると、不登校の学生は学校(あるいは社会)に問題があると、成績の悪い子どもは偏差値一辺倒の現代教育に問題があると、我々に問題を提供してくれているのかもしれません。そして、それを1つ1つ解いていくことにこそ、我々教育者の存在意義があるのかもしれません。
本書には、筆者が直面した様々な事例が筆者の解釈とともに記されており、時には筆者の独断が強く、評者として納得いかないものもありましたが、それでもこれまでの「教える-教わる」という教育の前提を覆すのに十分示唆的なことが多く書かれていると思います。その意味で、教育に長く携わっている方や、これから教育者になられる方にお薦めの1冊です。
紙の本
優れた教師はやたらに動かず見守れる人
2021/05/31 17:07
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投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
巻頭で紹介されている、
父性原理と母性原理という区分は、
今でも欧米と日本との考え方の
相違に適応され得るのでしょうか。
紙の本
育つのを待つ立場
2002/07/25 08:29
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投稿者:HRKN - この投稿者のレビュー一覧を見る
人を教え育てる立場に居ると、自分が知らないうちに様々な呪縛にとりつかれていることが多い。教師とはこうあるべき、生徒とはこうあるべき、これはいいこと・これは悪いこと、私は理解のある教師だ、いいアドバイスが出来た、色々だ。でも、本当に正しいことなどに出会うことは少ないし、一人一人にとって真理は別物なのだから、教師もフレキシブルに考えを出したり入れたりできる柔らかさを身に付けるべきなのだと思う。
本書は、自分が知らないうちにかけてしまった色眼鏡を、いつのまにか外してくれた。読んでいるうちに、柔軟なものの見方とは何か、朧気ながら理解できるようになっている。それに、教師とは本当にデリケートなことを担っているのだという責任感も連れてくる。慎重に慎重に育つのを待つことも必要だということ、理解しているつもりでいても姿勢として身に付けることは難しい。だがそれも、何度も本書を読み返すことで段々と変わることができると思う。
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高校1年のとき、小論文の題材にした本。
今でも大切に持ってます。教師になるつもりのない人でもオススメ。読みやすい。
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教えることと育つことの両面・違いを強調されている本。かなりハイレベルな実践例なども紹介されており、感銘を受けることは請合いです。また体育の笛という少し視点の違う面からのアプローチもあり、おもしろい本です。
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優れた母親というものは、優れた精神分析医と同様の観察力と判断力を、自然と発揮するものだということがよくわかる。
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平易な文体で分かりやすい。臨床心理学の視点から今日の教育を論じている。「父性」と「母性」という2つの視点、どちらがいい悪いでなく要はバランスなんだと思う。
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父性原理、母性原理から見た考え方や、西洋化したようでしていない日本など、興味深い内容がたくさんありました。
平易な文体で読みやすく、わかりやすいです。
現在(といっても1992年の、ですが)の教育の問題点や、それをどう受け止め、捉えるべきかという著者の価値観に触れることができました。
教職課程を学ぶ上で手に取りましたが、子育てをされている方など、教育に関わる幅広い人に手にとって欲しい一冊だと思います。
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[ 内容 ]
子どもたちの生きる社会環境が激変する今日、「教育」のあり方が、いつにも増して問われている。
臨床心理学者として、子どもの心の世界に長年接してきた著者が、帰国子女や不登校児の言葉に耳をかたむけ、日本型教育への疑問、心や性の教育の必要性を盛り込みながら、子どもと学校の新しい関係を創造する道を語る。
[ 目次 ]
1 教育の価値を見直す
2 大人が子どもにかかわること
3 教える側、教わる側
4 こころが育つ環境
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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広域にわたって子ども論を述べている。入門としてとても読みやすく臨床心理学の大家としての知識や経験値がちりばめられている。
大学院時代の恩師の田中孝彦氏の引用があったり、現在の「臨床教育学」につながるものだった。
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「教える」ことを焦るよりも、根本的には「育つ」のを待つ。教育される側に潜在している自ら「育つ」力。
教育という言葉を見直すきっかけを与えられた。河合さんの本は、いつも読みやすく、わかりやすく、おもしろい。
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学校教育とはなにかについて、広く述べられている。時代を感じさせない普遍的な内容である。これから教育に関わる人にとっての入門書として適している。
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有名な心理学者・河合隼雄先生の本。
そういえば、自分の子どもの頃の学校生活は本当に窮屈で意味不明で、よく我慢できたなぁと思う。それも、さも”楽しそうに”通っていたのを思い出す。
河合先生の理想とする教育や学校のあり方に賛成するばかりだが、実際の現場ではうまくいかなくて苦悩する親や教師が山のようにいそうだ。そのギャップはどうやったら埋まるのだろうか?
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〈 本文から抜粋 〉
親が自分の子どもの幸福について考えるとき、どうしても、自分の子どもが社会的に優位な地位につくことがそれに直結するという考えに傾くので、子どもに知識のつめ込みを強いることになる。うっかりすると相当に早くから、このような知識のつめ込みにさらされてゆく。…略…このような状態は端的に言えば子どもを育てるうえでの「自然破壊」なのである。子どもが「自然に育つ」過程に対する干渉が、あまりにも多すぎるのである。
…略…これらのことによって、「自然」の成長を歪まされてる子どもたちに対して、もう一度根本にかえって、自ら「育つ」ことのよさを体験してもらうことが、現代の教育において必要となってきているのである。
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子どもの成長において、ひとつの事象の意味を多面的に見て、いかに「見守る」かが大切。その中で子どもは、揺るがない安心感の下、自由に考え遊び、行動し、創造性を培っていく。また、多面的に見ることで、様々な問題解決にもつながる。