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紙の本
この世には誰にも気付かれない死が溢れてる
2002/03/27 01:29
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投稿者:椎名 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「戦場なんだよ、ここは」とさとるがいった。逃げ場のない戦場。遠くの誰かが同じ場所で感じてる。ひっそりとして静かな、誰にも気付かれぬまま迎える死が溢れてる戦場を。
フィッツジェラルドの『マイ・ロスト・シティー』を思い出した。享楽と退廃のアメリカで何もかも得て、そしてこれからの人生で何も得ることはできないだろうと、思った彼。不幸ではない。むしろ幸せだ。けれど幸せの中にあるこの影は抱えたまま消えることはない。欲しいものさえ分からないまま、何かに飢えてる。この世を知れば知るほど、何が本当で何が嘘か、何が幸せで、不幸せか、わからなくなっていく。
私はまだ「ヒカル」の存在を消せないままでいる。この本を読んで、そしてじっと見つめてください。あなたの中にも「ヒカル」の存在はきっとあるはず。
紙の本
誰もが持つ、虚実の世界。
2003/08/17 00:02
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投稿者:オレンジマリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書の読後、私は心臓を巨大なハンマーか何かで思い切りガツンと殴られたような感覚に陥った。文字通り頭の中は真っ白になったし、胸の底で疼痛が走った。
氏家透。彼は自分のために人間を作り上げた。他者には決して見えないヒカル。性格は結構違っていたが、私にはヒカルは透の一部のように思えた。ヒカルが発する言葉や起こす行動は、透の脳裏に秘められたものなのだと思う。うまく説明できないが、そこに光と陰があるとしたら、透は光を、ヒカルは陰を主体としている。ヒカルが坂道にあった乳母車をとん、と押すところでそんなふうに考えた。実際は透がそうしたかったのではないのかと。
こんな経験はないだろうか。自分が選ばなかった道を、自分が歩んでいる想像をする。そこには紛れもなく「ヒカル」が居るのだ。なぜか立体的で、人間ぽくて、実在しないと言われたら得心してしまうような不可思議な人物。
伝言ダイヤルで知り合った子を信じてみたり、根拠のないものを確かだと思いこんだり、そういう時期ってあると思う。可愛く言えばサンタクロースを信じる幼気な少女だし、辛口で言えば近視眼的。そこにぱっくりと口を開けている奈落への入り口も見えない。でも、信じてみないと裏切られた時の痛みを知ることはないし、奈落の底に落ちてみないと希望も見えない。そういう経験は糧となり得る。活用するしない、糧にするしない、教訓とするしないは本人の自由である。
最後に透は成長し、ヒカルがいなくても生きていけるようになった。優しかった殻とのお別れの時である。ヒカルは透の成長にあたって必要不可欠であり、また、たった一人の親友でもあった。理解してくれ、味方になってくれた。そんなヒカルが消えてしまうのだ。透が一人で歩めるようになった時に、袂を分かつ。
本当に深く深く、視界の悪い海を潜るように自分の事を考えた。
海底に辿り着いた時、かつて分かれた自分が笑っていて欲しいと思う。
紙の本
虚構の世界の中であえぐ主人公を見た
2002/07/27 18:51
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投稿者:らふ - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公の透と透にしか見えないヒカル
2人は切っても切れない縁でありいつもヒカルなくしては生きていけない
透であったが、ヒカルと一緒にいる時、透は同級生のいじめにあったり
自殺現場にいたり父親の自殺があったり伝言ダイヤルで知り合った女性から
は欺かれる。
いわばヒカルの存在は、最後まで透を不幸に導く存在であったに違いない。
透がラストでヒカルと決別することになるが、これは悪運を断つことになる
だろうと僕は思った。
「梅雨が終わって夏が来るのかもしれない。空は再び昇ってくる太陽を
待っていた」という表現に透が自らの過去と決別し大人として成長する決意
が感じられた。
この作品から思春期を生きる主人公の闇と光を感じることができた。
紙の本
影
2002/07/21 21:32
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投稿者:アセローラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
孤独だったトオルが創り出したトオルにしか見えないヒカル。ヒカルを創り出さなければいけなかったトオル。ヒカルはトオルの影だった。若いときは誰でも、ヒカルのような存在を心に持っていると思う。でも、いつかはその存在とも別れて生身の人間と付き合っていかなければならない。そうやって成長していくのだと思う。ピアニシモの世界は誰にとっても遠い世界の話ではないと感じました。
紙の本
透の独り立ち
2002/02/11 23:02
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投稿者:sorano - この投稿者のレビュー一覧を見る
裕福な家庭に育った透は度重なる転校を続けていた。転校生はとかくいじめられやすいのだった。透にはいつもそばにいてくれるヒカルという友人がいた。それは透にしか見えない幻だった。ヒカルはいつも透の背中をおしてくれる双子の兄弟のような存在だった。新しい学校では早速いじめのターゲットにされ、登校拒否を続けていた。中学生の透は反抗期でもあり、親ともうまくいっていなかった。そんなとき伝言ダイヤルで知り合ったサキという女の子が話相手になってくれた。
再び学校に行くと同級生からの暴行にあい、父親も自殺してしまい、サキと初めて会う約束をしても裏切られ、今まで見方をしてくれていたはずのヒカルのことを考えているうちに、自分はヒカルがいなくては何もできなかったことに気づき、自らヒカルの存在を断ち切ってしまう。
辻さんのデビュー作と言われるこの作品も辻さんらしい、少年独特の物憂い感じ、情景の細かさ、孤独感などがうまく表現されている。
紙の本
脆く優しく
2001/10/16 22:53
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投稿者:てのりいぬ - この投稿者のレビュー一覧を見る
目に浮かぶような描写で綴られる微妙な思春期。主人公の透が“ヒカル”と共に尖り尖った心を抱いて、少しずつ大人になって行く。はみだして、馬鹿をやって、裏切られて、傷ついて。削られるごとに、磨かれて…。透が振り切った手の彼の最後の顔はやさしく、大人になる痛みを教えてくれる。
紙の本
ブラック…でじっくりと。
2002/07/17 18:50
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投稿者:ゆうきっく - この投稿者のレビュー一覧を見る
中学生の頃、夏休み前に配られる本の通信販売が好きで、いちばん最初に買った小説が、この本でした。だから、理解できませんでした。
ただずっと、暗い雰囲気の話が続いて…。ちょっと、自分探し的なところもあるのかもしれませんが、中学生にはレベルが高かったのかなあと思います。文章自体も少し硬めで、読むのが大変だったし、硬い割には、あまり得られるものがなかったのもまた事実です。恋愛と情熱の間のように、軽く読んだだけでは伝わらないメッセージがあるのかもしれませんが…?
人々のブラックな面を表しているのかもしれません。じっくり読むのが正しい読み方なのでしょう。
紙の本
思春期から遠ざかってしまった私には、異界のような話。
2002/02/08 09:53
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投稿者:kaede - この投稿者のレビュー一覧を見る
転校の多い中学二年生の少年・透は、家では父親から逃げ、母親を泣かせ、学校では虐められる生活を送っていた。そんな透がとりあえず生きてこれたのは、透にしか見えない「ヒカル」という名の人格。自分に出来ない反応をあっけらかんと見せるヒカルがいることで、生きていくことに均衡を保っていた透。自分を傷つけ苛立たせる「外の世界」からの逃避は、伝言ダイヤルでサキという女と知り合うことで加速していく。
最後には一応、大きな壁を乗り越えてはいくが、その乗り越え方も、随分酷い乗り越え方に感じ、それこそが、今の時代の病んだ現状なのかと思うと、怖い、と感じてしまうほど。それでも逃げていた透が逃げることをやめ、優しい気持ちを思い出せただけ、救いがあるのだろうか。
先へ先へと引きつけられる文章のテンポもよく、おもしろく比喩した描写も楽しめる。中学二年生という透の多感さも、とてもリアルに表現され、読み物としておもしろく読めたが、思春期、という時代から遠ざかってしまった私には、異界の話のようにも感じた。