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商品説明
日本各地で次々に金山が発見されている。今や日本は空前のゴールドラッシュである。いったい金鉱脈はどのようにして出来るのだろうか。そしてどのようにして金は発見されたのだろうか。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
井沢 英二
- 略歴
- 〈井沢英二〉1938年熊本県生まれ。国際基督教大学教養学部自然科学科卒業。現在九州大学工学部自然工学科教授。専門は鉱床学。
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紙の本
新ジパング
2011/03/28 19:12
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:想井兼人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本は資源に乏しいという印象が強い。佐渡島の金や石見銀山の銀というイメージはあるが、日本列島全体としてみればいかがだろうか。本書はそんな疑問を払拭し、日本の金埋蔵量の豊富さを教えてくれる。
日本における産金は749年までさかのぼる。以降、金の産出量は徐々に増え、第二次世界大戦目前の1940年にピークを迎えるという。ピーク時の産金量は24.6トンを記録し、世界の産金量をはるかに凌駕するとのことだ。この背景には戦争準備のための経済性を無視した国家的奨励があるという。戦後、産金量は激減し、世界の産金量における比率も下がる。産金率の減少には、新たな産金技術の導入が図られたこともあるらしい。下降の一途を辿っていた日本の産金量は再び上昇のカーブを描く。この要因は鹿児島県の菱刈金山をはじめとした鉱山の新発見で、筆者は「新しい黄金の国ジパング」と表現した。
資源の埋蔵量は、国土の面積と関わる。単純に言うと、広ければ資源も多いということになる。世界における日本の金埋蔵率は0.8パーセント。国土面積がわずか0.25パーセントであることを考えると、日本の金埋蔵率は高いと評価できる。資源に乏しいどころか、まさに黄金の国という表現がふさわしいと言えるだろう。
そして、本書は菱刈金山の探査について詳述し、金そのものと金鉱床の形成に関する解説、資源としての金の将来像と論を展開していく。計算上、金は地球のコアに99パーセントが含有され、残りがマントルと地殻に存在するという。地表近くの鉱床形成は火山活動による。火山活動によりマグマが地表へと噴出する。火山活動の末期には溶岩ドームが形成され、マグマの噴出は不可能となる。周辺地域から地下へと浸透していった水は、地下のマグマ溜まりで熱せられる。水は様々な成分が溶け出した高温熱水として上昇するが、ここに金が溶け込んでいる。そして、地表近くまで上昇して金鉱床を形成する。つまり、地表近くに広がる金鉱床は火山活動と密接な関係にあり、それが火山列島である日本で金の産出率が高い要因となっているのだ。
日本に多くあるという稀有な資源、金。地球が誕生して46億年という長い期間が与えてくれた恩恵である資源を、利己的に扱うのではなく、国内外でうまく配分して活用していかなければならない。食料自給率が低く、化石燃料が乏しい日本は、身の振り方をきちんと考える必要がある。今後、水の資源価値が上昇していくと考えられている。目先の金銭で外資に山林を提供する行為は、後に痛いしっぺ返しとなるに違いない。水も地球の貴重な資源と捉え、その活用方法についての議論が要される。決して独占することも、個人の利益のために放出することもない、国益に適った活用方法を見つけ出さなければならない感じた。