紙の本
疾駆する小役人
2003/08/24 22:51
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投稿者:yurippe - この投稿者のレビュー一覧を見る
『連鎖』に続く、真保裕一の小役人シリーズ第二弾。
事件は現場で起きている、という青島刑事の名言を引き合いに出すまでもなく、現場の名もない役人こそが最も矛盾とひずみを体感している。末端の役人を主役に据えるこのシリーズは、政官財の癒着をリアルかつダイナミックに見せてくれる極上のサスペンス・スリラーだ。
本書の主人公は公正取引委員会の審査官、伊田。伊田は、フィリピンへのODA供与で黒い利権をむさぼるゼネコン・大手総合商社・政治家たちの談合体質にメスを入れるべくマニラへ飛ぶ。ところが談合の実態を捜査する任務の傍ら、内偵対象者であり高校時代の友人でもある遠山の娘の誘拐事件捜査も手伝うことになり、物語はこの2つの捜査を軸に展開してゆく。そして、談合疑惑と誘拐事件の2軸が1本の太い線となり、迎えられる驚天動地の結末とは——。
真保裕一の傑作は『ホワイトアウト』のみにあらず。
抜群の構成力と巧みなストーリーテリングが冴え渡る670頁の肉厚ハードボイルドミステリーだ。やや古い作品だが、時代ズレの心配はご無用。今なお色褪せない題材である。ヘビィなミステリーを愛する方をも、十分に唸(うな)らせることができるだろう。
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公正、公平、公明…死語にならないよう
2004/07/10 15:05
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投稿者:luke - この投稿者のレビュー一覧を見る
公正取引委員会に勤務する審査官の伊田は汚職の嫌疑をかけられるが、検察庁から出向している参事官橋上から汚職疑惑は政府開発援助ODAのマニラでの内定調査をする為の策略で、潜入調査を引き受けさせられる。マニラに渡り伊田が接触しなかればならない相手は大手建設会社の勤務するかっての高校の同級生だった。ところが内定調査に掛かる前に誘拐事件が起きてしまう。巨大プロジェクトに群がるハイエナ達のODA疑惑、誘拐事件の真相とは?
…と、言うわけで舞台はフィリピン、テーマはムネオハウスでお馴染みのODA、隠し味に正義と友情と来ればつまらないわけがない。公正取引委員会が表舞台に出てくるっていうのも何やら新鮮です。実際の審査官の仕事もこんな感じなのでしょうか? ムネオハウス事件などODAにまつわる疑惑の数々を目の当たりにすると警察官なみの資格や権限を与えてバシバシ取り締まってもらいたいものですが、何たって政治家から官僚、大会社から中小企業まで都市や地方を問わず汚職だらけの我が国です。汚職を頂点に税金の無駄遣いは留まる事を知らず、それを止める手立てもないのです。やり放題。「正しい」という言葉は死語になりつつあります。でも怒りの鉄拳も上げられず、嘆き諦めるしか術のないか弱き国民は指をくわえて見守るしか能がないとは。もっと怒らなければ! 声を大にして叫ばねば! 景気回復、構造改革、最良の手立てをしなくてはならないのは当たり前ですが、全ての分野で不正を無くし正義が貫ねかれれば税金だって余るかも知れないですぞ。正義なんて理想だって? おいおい、だからダメなんだよな〜。
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最近の私はすっかり真保氏の虜となっておりますです。1作読む毎に次が読みたくて読みたくてしょうがなくなるんです。一種の麻薬ですよ、ここまできたら。それほど私をのめり込ませています。どの作品もそうですが、言葉や名前は知っているけれど深くは知らない、という所を突っ込んで、それでいてミステリにしてしまう。そこが魅力でしょうか。本書にしても「公正取引委員会」「ODA」「談合」などなど、知っているようで本当は知っていないことを詳しく説明されています。そして真保氏のミステリのいい所はやっぱヒューマニティーがプンプンしている所でしょう。正義に向かって、例えそれが犯罪になってしまってでも貫き通す男らしさといいますか、なんかね〜痺れますよん、マジで(笑)。本書ではフィリピンという怪しいところで覆面捜査を主人公がするわけですが、読んでいて誰を信じていいのかわからないくらい見事に読者を騙しています。久々にハズレのない作家に出会えたと思います。
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真保裕一得意の小役人シリーズ。公正取引委員会の審査官が罠にはまって汚職の嫌疑をかけられてしまう。
ODA(政府開発援助)プロジェクトに関する談合事件をマニラで調査することになった主人公の身に様々な危険が迫る。
舞台となるフィリピンの描写もとても興味深く、実際に自分が現地にいるような気さえしてきます。
誰が信じられるのかわからないストーリー展開にハラハラさせられます。
物語の根底にあるあたりまえの正義感や愛、友情と格闘する主人公を応援したくなります。
正義を貫くために戦う男らしさ。単純な事なのですが大事なことを思い出させます。
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<きっかけ>「奪取」を読んで以来、真保氏の作品にはまった為買いました。
<コメント>小役人シリーズの2作目ですね。今度は公正取引員回の審査官です。公務員を舞台に描いている為、読み始めの頃この職業に対する硬さや仕事内容の不明さを感じますが、仕事内容のディテールの詳しさやテンポのよい展開があっという間に引き込んでくれます。オススメです。
第37回江戸川乱歩賞受賞作です。
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小役人シリーズ第2作。
小役人だけど、舞台はフィリピン!
それにしても真保さんの書く主人公(小役人)は
女っ気(というより女運?)なさすぎて
かわいそうになっちゃう〜。
どうしてなの〜?
ダメンズ好きな女もけっこういると思うけどな!(笑)
身近で信頼している人物のどんでん返しは、
小役人シリーズのお決まりのパターンかな?
先に「密告」を読んでいたので(同じ展開で)
最終章で犯人が分かっちゃったのが残念。
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面白かったです。ハラハラドキドキで堪能できました。話の展開が強引過ぎる感もないではないけど、エンターテイメントとしてみれば十分楽しめます。
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起承転結と言う言葉がありますが、この小説は起転転転って感じ。
もうこれは、ちょっとでも話の内容の感想を書いてしまうと
これから読む人に台無しになってしまうので書けませんけども。
兎に角すごく話がテンポよくサクサク転がっていく。
最初からすごいのに、どんどん凄くなっていく。
それなのにリアリティを感じてしまうのは、やはり緻密な書き草のせいか。
最後の結末は、あっさりと終わってしまい、ちょっと残念。
でもきっと、なんとかみんなハッピーになっていくんだろうなという
期待が持てる。
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フィリピンでのODAを巡る建設業界・政界・官僚の癒着と談合を内偵することになった公正取引委員の伊田。誘拐や人身売買など開発途上国の裏の世界を見る。
真保裕一の初期の作品だけあって、深みが少なかったし、いろいろ詰め込み過ぎたきらいがある。でもODAっていったい意味があるんだろうかと考えされられた。一部の人が潤うだけで、根本的な解決にはならないんだよね。
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小役人シリーズの中でも公取委はまだ多少世間に知られている気がする。所謂「中の人」が読んでどう思うのか聞いてみたい。
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そうだ、飛行機の中で読み終わったのだ。舞台はマニラではあるが僕はベトナムに向かう飛行機なのであった。
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中々に読ませる小説だ。
自体が二転三転し、展開が読みにくいのもよいと思う。
ラストの方で若干息切れした感じがあるのと、ページ数の多さのためのマイナスはあるものの、面白い作品だと思う。
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真保さんの初期作。
小役人シリーズ、実は他の代表作よりも好きかも。
彼らしい、二転三転するストーリーには、久しぶりに引き込まれた。
結末………あの人が死んでしまってはいけないよ!あまりにも救いの無い結末が残念。
★4つの8ポイント。
結末にもう少し救いが与えられていたならば、9ポイントだったかな。
………エピローグが、せめてもの救い。それがなければ、★も3つに落ちていたし………
2012.05.24.了。
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公正取引委員会出身の主人公が様々な事件に巻き込まれる話。ただ、公正取引委員会という主人公の特殊な出身があまり生かされていないように感じる。
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結局、小役人シリーズ3編を読み切る。
やはり、「連鎖」が、一番よかったのかもしれない。
ちょっと、あれこれと考えすぎであるが。
汚染食品の輸入。
海底火山の噴火による島の形成と国家利益。
ODAと談合。
いずれも、現代という時代背景のもとで、起こっている問題である。
厚生省の食品監視員
気象庁の地震観測員
公正取締委員会の職員
国家機構の中で、少なくとも、その問題を目の当たりにして、
いる人が主人公である。
気象庁では、辞職して、追求する。
公取は、辞職させられて、追求する。
その点では、官僚機構をはみ出さない限り、
その実体を追求することはできない。
システムができていることは、人間らしさを失うことでもある。
人間を回復する時、あるのは自分だけかもしれない。