紙の本
なんとも強烈なタイトルだが、歴としたノンフィクションです。
2005/07/16 15:42
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のらねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルのキャッチーさに初めてみたときはちょっとギョッとしましたが。基本的には「情報処理系として人間の脳」をみて、その特性とか特徴とかを簡明に解説したノンフィクションです。ブックレット、ということで、紙幅の関係上、簡単に説明しすぎているような印象を受ける部分も少なからずありますが、その分、不正確になりすぎないように注意しながら、よくコンパクトにまとめたなあ、とも思います。
本書は、「1.脳とはどんなコンピュータか」、「2.脳型コンピュータの開発に向けて」など、機能的な部分に関連の深い項目を解説する前半部と、「3.心から見た脳」、「4.愛は脳を活性化する」などと続く、情緒的、心理的なファクターまでも視野に入れた後半部とに大別されます。前半部のような解説は、他の書籍などでも似たような説明がなされているので、既に関連知識を持っている人にとっては、あまり魅力的な情報を含んでいるとはいえません。が、後半部の「関係欲求」などを絡めて紹介されるいくつかのエピソード群の紹介は、他の類書にはない特徴になっていると思います。
その中の一例として、「昔、ドイツのフレデリック二世が、赤ん坊の言語獲得の過程を観察するために行った実験」は、悲劇的な結果と相俟って、深く印象に残りました。「話しかける」などの外部からの刺激を極力遮断された赤ん坊は、みんな死んでしまった、と、記録されているそうです。
酩酊亭亭主
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【読む目的】
愛や意欲や欲求などを感じている時、脳はどんな働きをしているのか?
【読んだ感想】
人はそれぞれの経験の積み上げで脳内の情報処理システムを構築している。愛や意欲や欲求もこの情報処理システムのなせる技。人によって情報処理システムは全部違うので、ものの見方や感じ方が人によって全部違う。
私はよく名前を間違われます。「今村」や「今泉」とよく言われます。本当は「今永」です。このことを脳の情報処理システムの面から眺めると面白いですね。
ちょっと難しい本でした。
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パワーを出す答えが・・・。
人間だれにでもある、すごいもん。
さてさて、この「脳」いかに使うか。
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愛情と脳の働きの密接な関係が解き明かされる。非常に興味深い内容で、赤ちゃんは、常に、快の情動情報を得ているそうだ。これも、母親の愛情からなるものである。その他、愛情は、脳を活性化させ、生き生きさせる働きもある。
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脳型コンピュータの開発と光計測法の紹介が前半で、後半は脳科学から見た人生哲学と科学と宗教の関係など。
情動を司る脳の古い皮質による価値判断が新しい皮質の知性をも支配する、知性は情動の従僕である、という観点から多く語られている。
後半で語られている部分を一部紹介すると、
・関係欲求が充足されないと、たとえ生理欲求がよく充足されていても、脳活性は上がらない。
・愛をもつためには、自分自身が愛を受けた経験をもってそれを学習し、脳内にそうした回路を形成していかなくてはならない。
・困難や苦しみから逃げないで立ち向かう勇気は、愛によってのみ与えられる、愛は人が成長する源であり、心の活性化エネルギーである。脳にとっての最大の価値、そして活性化のもとは、関係欲求の充足であり、それは愛という概念で表現されるものなのである。
といった非常に共感できるものであった。
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再読了。
脳型コンピュータに興味がある人は1と2、愛と脳の関係に興味がある人は3と4、開放系としての新しい科学のあり方に興味がある人は5と6を読むべきかと。
1と2は医学・生物学系の用語が多いので読むのに疲れるが、良く読めばそれほど難しくない。フォン・ノイマン型ではない、フレーム問題を解決できるようなコンピュータを開発したい人は参考になるかも(まあこの話題に興味がある人は本書より元論文や同じ著者の「脳・心・コンピュータ」を読んだ方が早いかも)。
5と6は科学についてよく言われる一般的な話です。宗教というものの意味を改めて考えている点は面白いです。
3と4はタイトルのとおりです。この内容が単なる感情的な思い込みと一線を画すのは、やはり著者の医学者としての立場と経験によると思います。
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著者は,人工知能分野の著名な研究者の一人である.「愛」に対して,コンピュータ・サイエンスの立場から科学的に探究した本である.後半は,科学と宗教(キリスト教)の対話である.(2010:小林茂之先生推薦)
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重大な事故に遭遇すると、一瞬で今までの人生が走馬灯のように流れてくるという話があるが、それを脳の機能として理論的に説明していたり、脳が活性化する方法についても理論的に説明している。
つまり、脳は忘れていないが、思い出す事が時間とともに難しくなる、しかし生命にかかわる事態に遭遇したり、ある言葉に反応することで、脳の活性化することがその理由らしい。
脳はできると確信すると、その確信の理論的な後ろ盾を与えるべく認知情報処理系がフル活動する。そのため「できる」と確認したことは必ずできるようになる。逆に、できないと確信すると、脳は「できない」ことの理論的理由を明らかにするように働きできる可能性をどんどん縮小する方向に働く。
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いきなり言われるとやや戸惑ってしまうタイトルですが、人間を人間たらしめている器官である脳の、最も稼働しやすい状態について分かりやすく科学的にアプローチする良書。傾聴は話者のためのみならず、という点に気づいたのは刺激的でした。
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十年以上前に出版された本です。今、読んでも素晴らしいと思える内容です。前半は脳型コンピュータの開発と光計測法の紹介で、かなり専門的な内容です。後半になると、脳科学から見た人生哲学と科学と宗教の関係などです。個人的に後半がすごく面白いと思いました。「困難や苦しみから逃げないで立ち向かう勇気は、愛によってのみ与えられる、愛は人が成長する源であり、心の活性化エネルギーである。」と語られています。愛や感謝がどのように人間の心(脳)に影響を与えられるか、大変興味深く共感できる事柄が多数書かれています。
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”「好き」こそものの上手なれ”とは本当なのだなと思いました。何事もたのしく「好き好き」やった方がいいですね。
P144:『人間の脳の目的は「学習すること」(中略)人間の脳はアルゴリズムの獲得自体が目的なのです。(中略)脳型コンピューターの研究で有名だった、故松本元さんによれば、コンピューターと脳の大きなちがいは、「愛」にあるそうです。(中略)他の人間との関係において「愛」を感じれば、脳は活性化され、それに応じて神経回路がつくられる(中略)脳の活性に最も支配的な情報は、「情」に関するもので(中略)人は情が受け入れられ、それによって意欲が上がると脳の活性も高まり、知が働くようになる。』『情動情報が脳活性を制御し、脳が自ら価値を認めた情報を処理する神経回路が脳内に表現される。これが「愛は脳を活性化する」という意味である。』
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とても好きな本。特に松本元さんがヤリイカと一緒に研究室に泊って,なんとか生きてほしいと願うところは研究者魂がヤリイカに通じたようでジーンとした。
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脳科学の見地から愛や学習能力について書かれている部分はとても参考になります。鳥の存在が飛行機の発明に貢献している、ゆえに脳があるから脳コンピュータも発明可能という部分は印象に残りました。
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「心は知・情・意からなる。
情を受け入れ(価値を認めて)、意が向上し(脳の活性が上がって)、知が働く(脳が働く)。
情ごマスターで知がスレーブ。脳は意欲で働くのである。
われわれは、人から受け入れられ、人からわかってもらうことで意欲が上がり、知が働くように出来ている。
人は夢を実現するために生きるように作られている。そしてその機能を果たすのが、脳なのである。」
至言だ!
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1・2章において脳の物理的構造の説明が一通り済むと、3〜6章では、一般にいうところの心(情)に焦点が移る。脳科学を突き詰めると、心科学となるのだろうか?
以下は抜き書き。
「感動を多く得るような人生を送ることによって、人生を豊かに生きることが可能になるわけである(中略)いかに感動する日々を過ごして人生を送るかが、人生を豊かに生きたかどうかを決めるのである」
「脳は、強い刺激と、それにより時間的に以前に入力された事柄とを関係づけるが、それ以降の事柄とは関係づけることをしない」
「脳が損傷を受けていても『快』の情動を受け入れることは可能であるから、それによって脳の活性が向上し、脳内に入力される情報を処理する回路が作られるのである。その結果、情動情報が脳活性を制御し、脳が自ら価値を認めた情報を処理する神経回路が脳内に表現される」
「情を受け入れ(価値を認めて)、意が向上し(脳の活性が上がって)、知が働く(脳が動く)生物であることがわかる。すなわち、情がマスター(主人)で、知はスレーブ(従僕)である。」
「困難や苦しみに出会ったとき、人は自分でそれに立ち向かい、その解決の道を自分で探り出す努力の中で、そのための脳の回路を形成する。そしてそれを乗り越えるステップを発見して、われわれは成長していく。こういうとき、困難や苦しみから逃げないで立ち向かう勇気は、愛によってのみ与えられるだろう。」
「人は、その脳の特性から、欲求を充足する方向に行動する。そして人には、1つの欲求が充足されると次の段階へさらに欲求を進めようとする傾向がある」
「脳は『できる』と確信する(仮説を立てる)と、その『確信』の論理的な後ろ盾を与えるべく認知情報処理系がフル活動する。そのため『できる』と確信したことは必ずできるようになる。逆に『できない』と確信してしまうと、脳は『できない」ことの論理的理由を明きらかにするように働き、できる可能性をどんどん縮小する方向に働く」