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紙の本
古典の意味とは
2016/01/11 17:26
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:三等陸佐 - この投稿者のレビュー一覧を見る
優れた古典の紹介は巷では溢れてはいるが、何も私たちが能動的に実践してみようと働きかける魅力を持つものは少ないと思う。イタロ・カルヴィーノの『なぜ古典を読むのか』ではタイトル通り、いささか説教臭く感じてしまうし、日本の研究者については諸賢であればお察しである。(まるで自己啓発書のようにテキストを強引に誘引するその様は、書を本当の意味で辱めている。)
さて、このモームの小著、なかなか興味深い切り口で私たちを古典の森へ誘いこんでいる。序論で「読書は楽しみのためでなければならぬ」と宣言し、欧米の文学の沃野を駆け巡るプロセスはノマド的であり、リゾーム的に破天荒だ。まさにこの点が私を魅了するのである。とやかく言われる”つながる読書”というのも良いのかもしれないが、読書とは本来、個で楽しむものである。個の充実を蔑にして、集団で読むようになれば読書というのはただのおしゃべりになり果ててしまう。
個を徹底としてその土台に設置し考えたこの読書論を、私たちは無視できない。
紙の本
批評家や職業作家としてではなく、人間というものにある程度の関心をもつ平凡な世間人のひとりとして書いたという指南書。20世紀文学の記述は少ないが、はっと目が覚める論点がいっぱい。
2002/02/23 21:46
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る
1969年に廃刊されてしまった米国の「サタデー・イブニング・ポスト」という週刊雑誌に3回連載された記事に、加筆訂正をして長持ちする形にまとめたものだということ。雑誌記事が元ということで、気軽に読める。読み通すのも1時間ちょっとあれば大丈夫…という感じだ。本を読む心がけとかコツなどが書いてあり、そんな短い時間のうちに、日頃の自分の盲目的な読書を目覚めさせてくれるようなアドバイスを多く授けてもらえた。私には「お得感」のある1冊だった。
どんな記述に目が覚めさせられるのか——そのひとつを挙げてみることにする。
世間には「自分には小説は読めない」という人がよくあるが、そういう人びとは、精神のすべてを重要な仕事にうばわれているため、想像上の出来事などに頭を用いる余裕はまったくないのだからと考えがちであろう…とモームは推察してみる。
だが、「それは思いちがいだ」と断定した上で、そういう人は自分のことだけに心をうばわれていて、自分以外の者の身におこることには、ぜんぜん興味がもてないか、想像力が不足していて、小説にあらわれた思想を理解することも、作中人物の喜びや悲しみに共感することもできないか、いずれかである…と指摘するのだ。
この記述はいささか乱暴なようにも思えるが、過去の自分のありようを振り返ると、深く納得できるものがあった。自分の身に振りかかった信じられない出来事に気をうばわれていた時期には、確かに小説どころではなかった。想像力以前に、集中力がおっつかないのである。想像力を惹き出せる余裕をもてることがいかに大切なことであるかがわかるし、逆に言えば、想像力を人からうばってしまうものの存在の邪悪さから身を守ることの必要も感じ取れる。
人間に関する事柄に興味をおぼえるだけの能力をもっている人なら楽しく読めるだろうから、ぜひとも読んでいただきたい。はっきり一流とは言えない著者は、ひとりでも取り上げる余裕はなかったとして、モームは「イギリス文学」「ヨーロッパ文学」「アメリカ文学」の3章立てで、作者と読むべき代表作、その特性などを紹介していくのである。
モームには『世界の十大小説』という労作もあるが、この本では、そこに選ばれたベスト10をも含め、多くの作家・小説が案内されている。モームの読書地図から、どのようにして10傑が選ばれたか、その価値基準がわかるようでもある。
ただ惜しむらくは、これが1940年に出されたものであるがゆえに、カフカとか米国のロスト・ジェネレーション、ラテン・アメリカやアジアなど20世紀文学の評価が欠けているという点である。そこには、新しい出版物に関して評価をするのは時期尚早、出版後2〜3年のものは読まないようにしているといったモームならではの頑固さがあるようである。
20世紀の手引きとしては、篠田一士による『ニ十世紀の十大小説』という素晴らしい指南書が私たちには用意されている(これは今のところ私にはツンドク本になっているのだけれど)。
紙の本
楽しみの、さらに上をゆくモーム
2004/06/05 11:12
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:北祭 - この投稿者のレビュー一覧を見る
イギリスの作家モームが、世界の偉大な文学者が残してきた遺産の中から「楽しく読める書物のリスト」を提供する。なにを上げたのか、ほんの一例をご紹介する。
バルザック『ゴリオ爺さん』
フィールディング『トム・ジョーンズ』
ディケンズ『デイヴィッド・コパフィールド』
トルストイ『戦争と平和』
メイヴィル『モービー・ディック(白鯨)』
エミリー・ブロンテ『嵐が丘』
スタンダール『赤と黒』
ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』
フローベール『ボヴァリー夫人』
オースティン『マンスフィールド・パーク』
ずらりと並んだベストセラー。モームは「読書は楽しくあれ」という主義の持ち主である。よって本書には、モーム自身が「面白い」と感じた書物のみ堂々と取り上げられている。
しかし、モームがただ単に「楽しいだけの読書」を肯定していると早合点してはいけないようである。それは本書の中ほどにある「ベストセラー論」に見るモームの書物に対するある毅然とした態度から察せられる。以下に引いてみる。
「わたくしは、話を、当然古典と見なして差し支えないと思える書物だけに限るつもりである。最近の書物には一切ふれない。それは、ひとつにはわたくしが十分な知識をもっていないためであり、またひとつには、過去五十年間に出版された莫大な数にのぼる作品のうち、そのどれが永久に特異な価値をもちつづけるか、いまのところ時期尚早で、なんともいえないからである。
一部の人びとが考えているのとはちがって、ある書物がひじょうに多くのひとに喜ばれ、その結果、ベストセラーになったことは、その書物がぜんぜん無価値であるという証拠には少しもならない。…『戦争と平和』にせよ、いずれも昔からベストセラーであったではないか。だが、だからといって、ベストセラーであることは、その書物が傑作であるという証拠になるわけのものでもない。…
わたくし自身のやり方を申せば、わたくしは、出版後二、三年間は、ひとがなんといおうと、それらにつられてベストセラーをよむことがないように心がけている。世間でひじょうな歓迎をうけている書物で、出版後二、三年もたってみると、よまないでおいても、わたくしとして一向につうようを感じない書物になってしまっているのがいかに数多くあるか、まことにおどろくほどである。」
読書は楽しみのためにある。ただし、モームは「永久に特異な価値をもちつづける」ような傑作を選定する眼や、乱読を制する心構え(出版後二、三年間は読まないほどの心構え!)をもつことの大切さを、あえて強制はしないけれども、自ら示しているのである。
まこと、モームが偉大な小説家になったのも頷けるというものである。
紙の本
世界の文学に出逢える本
2003/04/02 22:46
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yurippe - この投稿者のレビュー一覧を見る
筆者は言うまでもなく、『月と六ペンス』などの作品で知れられるイギリス文学の巨匠です。
そして、大変な読書家でもあったモームは、後世の本好きのために素晴らしいガイドブックを遺してくれました。
本書は「イギリス文学」「ヨーロッパ文学」「アメリカ文学」の3章からなり、それぞれの名作の魅力を余すところなく伝えてくれます。
スウィフト、ディケンズ、エミリー・ブロンテ、セルバンテス、ゲーテ、トルストイ、モンテーニュ、スタンダール、プルースト、ホーソーン、メルヴィル、ポー……etc.
何だか見ているだけでもワクワクするラインナップです!
「以下にかかげる書物は、あなたが学位をとる助けにもならなければ、生計を立てる役にも立たないであろう。そのかわりに、あなたがより充実した生活を送ることには役立つであろう。」(本文より)
このポリシーのもと、モームが編んだ本書は世界の文学の入門書として、比類なき秀作です。
「難しそうだから…」と敬遠しがちな文豪たちの著書も、するりと手に取れるよう、心のバリアを溶かしてくれるステキな読書案内です。