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紙の本
手元にあるのは改訂三版です
2006/05/15 19:14
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:松井高志 - この投稿者のレビュー一覧を見る
よいストーリーマンガは、無作為にある一コマを取り出して、ぽんと置いて眺めると、たちまちその前後が読みたくなる。一コマの中に、絵柄にせよセリフにせよ背景にせよ、前後の文脈が雰囲気として漂っていて、たちまちストーリーへと見た者を「惹く」力がある、それを良いマンガだと思うのだが、伝統芸能の紹介本にも多少そういう傾向があって、ある演目について書かれた1センテンスなり1枚の写真なりに、「ああ、この舞台をどうしても観てみたい」という「惹き」を読者に感じさせなければいけない。
歌舞伎の演目解説本はたくさんあるのだが、往々にしていい写真のあるものは文章が変であるか、筆者の独断で覆われて偏っており、解説本文のソツがないものは、写真に艶がない。歌舞伎の舞台写真に艶がないんではどうにもならないんである。別に著名写真家による芸術性豊かなお作品を依頼しろ、というのではない。作品解説を生かす写真であればいいし、また解説文本文でありながら文中写真のキャプション機能をも果たしていればいいのである。従って歌舞伎の本は、小型の本では本当に辛気くさい「参考書」になって、ただでさえややこしい筋や設定が更に「お勉強」の対象に近くなる。
この「名作事典」は、カバーデザインのセンスこそ今ひとつだが、内容はそういう意味で充実しており、舞台写真の点数も豊富(出来る限り新しい写真を使っているのが親切である)で、単純に眺めていても飽きない。本文は五十音順の演目紹介で、署名で書かれているものも匿名のものもある(筆者名は一括して冒頭に表示)。「あらすじ」と「見どころ」から成るが、事典なのに担当筆者の歌舞伎観が結構ストレートに出ており、単なる「ご説明」に終わっていない。初めて観る演目はこれでチェックしてから劇場に出かけることにしている。307演目を収録。1ページ1演目という、ともすればありがちな定型に落ちてないところも良い(演目によって本文量の長短がある)と思う。