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収録作品一覧
東瀛の客 | 7-116 | |
---|---|---|
麵妖 | 117-134 | |
猪脚精 | 135-152 |
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紙の本
目で楽しむ中華料理小説
2006/01/16 21:16
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:tujigiri - この投稿者のレビュー一覧を見る
講談を思わせる洒脱な書き味と、珍味麗食美酒秘瓶を紙上に再現した垂涎の記述ですっかり僕を虜にした南條竹則が、その「酒仙」 で得た賞金を大胆にも全額投じ、知人郎党引き連れて杭州に遊んだ顛末を描いた、本朝屈指のどたばたグルメ小説。
本書の題になった満漢全席を総勢40名が散々に堪能するのが「東瀛の客」で、亭主の南蝶(なんでふ)こと、でふ氏の飲み仲間が、卓狭しと並べられた山八珍海八鮮の美食に舌鼓を打ち、用意された宴席の出し物にやんやの喝采を浴びせるだけの小編なのだが、さすがに名にしおう食客揃いとあっては、ただのレポートにとどまらない。
漢籍の知識を紐解き、あるいは各自の肥えた舌が賞味してきた幾多の妙味と引き比べながら、わいわいガチャガチャと盛り上がる。
いずれも一方ならぬ健啖家ばかりが集った南洋大酒家、やれこちらの卓にはあの料理が来ておらぬだとか、やれあちらはメニューにない皿を取り寄せおった、とてんやわんやの大騒ぎ。
見たことも聞いたこともない、ましてや食したことなどあろうはずがない贅沢な品々が、綺麗な皿に盛られて次々に運び込まれ、でふ氏一党は満腔の幸福感に包まれる。
高級茶・龍井(ロンジン)茶の一杯を皮切りに、乾果水菓子燕の巣、蟹や海老のぎっしり詰まった点心数種、酒の肴にフカヒレなどの珍味を盛って、やがて酒席は佳境を迎え、かの有名な熊の手やら舌の根をとろかすような川魚料理やら、はたまた意趣をこらした鶏料理やら肉汁したたる獣肉皿やら、とにかく絶品の数々が引きもきらず運び込まれるのである。
嗚呼、読福、読福。
瓢げた座の雰囲気に呵呵大笑しながら、心行くまで贅を尽くした料理を目で楽しめる。
本書に収められたその他の短編も、美食家の筆が冴えに冴えた昭和ロマンあふれる下宿小説群。
オマケの収録とあなどるなかれ、頁数は少ないものの「東瀛の客」とは趣きを違えた佳作揃い。
ことに「麺妖」「猪脚精」「画中餅」などは、紅楼夢や金瓶梅などの中華四大奇書からそのまま抜け出てきたかのような、現代版中華ファンタジーの味わいがある。
これはなかなかお買い得な本である。
食い意地の張った者ならずとも存分に堪能できる短編集と言って、まず間違いはなかろう。
うーむ、ごちそうさま。