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紙の本
ヴァーチャルな国家の君臨者
2001/05/24 13:51
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投稿者:mau - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本人は概して宗教にはアレルギー体質だが、遠ざけるばかりでは見落とす部分がどうしても出てくる。教義そのものの是非を抜きにしても、そこから発生した文化や信者の心理などは客観的に考察できるはずだ。その意味で、著者の最近の著作活動には注目させられる事が多い。冷静な視線に励まされる。
本書はカトリックの頂点に君臨するローマ法王の歴史と実態を詳細に述べている。これまで法王というと、私には『神の代理人』(塩野七生)に見られる強欲オヤジの印象が強かったが、法王を中心としたカトリックの国境を越えた強力なネットワークが、「ヨーロッパ」の誕生と成長に大きな役割を果たしたことに改めて気づかされた。
信者達のヴァーチャルな王国の象徴としてヴァチカンが存在する。そのちっぽけな領土に、しかし来訪する人々の熱い心情。確かにこの強い繋がりは、今のEUなんて目じゃないかもしれない。
現法王ヨハネ=パウロ2世とレーガン元大統領、ポーランド解放運動との関連性を述べた第4章では、当時の私のあやふやな記憶が確かな裏付けを元に再構成され、新しい物語として甦ったという感じ。非常に読み応えのある、緊迫感漂う内容だった。